さまざまな商品の価格高騰が止まらない。帝国データバンクによると2024年7月以降、主要な食品メーカー195社の飲食料品の値上げ品目は、11月までの予定で1万86品目にもなるという。
“ミートショック”
一般家庭の家計を直撃している物価高だが、飲食業界にも大きな影を落としている。リーズナブルな価格で焼き肉を提供してくれる店にとって、2021年から始まった輸入食肉の価格高騰、いわゆる“ミートショック”はとどまることを知らず、財務省の貿易統計によると、輸入肉類の価格は、2020年に比べて2023年は38%も上昇している。
原油価格高騰による輸送コストの上昇に円安も加わり、まだまだ価格は上昇するとの見込み。これまで、輸入肉に頼ってきた焼き肉チェーン店などでは、食べ放題で集客していたところもあるが、現状はどうなのだろうか? 『焼肉きんぐ』をはじめとし、店舗を全国展開している物語コーポレーションに話を聞いた。まずは客足についてだが、
「国内全ブランドの2024年6月度の既存店売上高は、直営店とフランチャイズを含めまして前年比111・0%、客数は110・1%で増加しております」(物語コーポレーション広報、以下同)
物価が上がる中、財布のひもを締めがちな消費者だが、やはり食べ放題など“お得”な外食にはまだ足を運んでいるようだ。しかし物価が上がり続ける中、食べ放題のメニューや単品肉の価格などの値上がりはないのだろうか?
「値上げについては、原材料を含むその他のコストを見極めながら、都度慎重に検討をすすめてまいります」
輸入肉に頼らず、国産のものに切り替えるという方法もあるが、家畜のエサ代も上がっていて、ロシアのウクライナ侵攻などの影響で10年前のおよそ1・5倍に。もともと“高級”の部類に入っていた国産肉も、より価格が高くなっているのだ。こうした中、企業としての取り組みは、
「社内に購買専門の部署を設置し、購買管理や商品調達先の管理を行っております。全店に過不足なく、商品を供給できるよう努めております」
とのこと。
増加する倒産件数
資金力のある大手なら、企業努力でなんとかミートショックを乗り切れるかもしれないが、気になるデータがある。
帝国データバンクの調べによると、今年の6月時点で全国の焼き肉店の倒産件数は20件(負債1000万円以上、法的整理)。過去最高だった2019年は1年で26件だったというので、今年は記録を更新する可能性が大きい。
全国で倒産数が20件とは少なく見えるが、チェーン店やフランチャイズの店が価格高騰についていけなくなるとどうなるのか─。
「値上げされた肉を、今までの食べ放題と同じように食べられるくらいに私たちの収入が上がれば問題ありませんが、今の状況だとインバウンドの消費力に頼らざるを得ないのでは」(全国紙記者)
これまではリーズナブルに楽しめた焼き肉が、高嶺の花になる日も遠くないのかもしれない。