2021年に延期された東京五輪は新型コロナウイルスの感染症防止のため「無観客」となり、せっかくの自国開催にも関わらず、盛り上がりに欠けてしまった。
また、フランスも無事に五輪が開催できたとは思えない状況だろう。5月1日のメーデーにはパリ市内で大規模な「五輪開催反対」デモが行われ、警察隊と衝突している。
波乱の中開催されたパリ五輪だが、本筋である競技に注目してみると、今大会から新たに「ブレイキン」が追加競技に採用された。
新競技「ブレイキン」が加わりメダルに期待も……
パリ五輪の日本語ホームページによると、
《ブレイキンは、都会的なスタイルのダンスとして、1970年代にアメリカ合衆国で流行。ヒップホップカルチャーをルーツに、ニューヨーク市ブロンクスのブロックパーティ(通りなどで行われる野外パーティ)で誕生した。アクロバティックな動きと独特のフットワークが特徴的で、場を演出するDJとMCの役割も大きい》
という。
この説明だと、イマイチどういう内容なのかが、よくわからないが、ブレイキンは日本では「ブレイクダンス」という名称で知られており、音楽に乗せて身体のあらゆる部分を使って、跳ねたり、回ったりとアクロバティックな動きを取り入れたダンスを意味する。
「同競技の日本代表には、楽天カードのCMでもおなじみのShigekixこと半井重幸選手が内定しており、彼は2018年ブエノスアイレスユース五輪にて銅メダルを獲得しています。前回大会から導入された新競技『スケートボード』の堀米雄斗のように、『新競技で初の金メダル』の期待がかかっています」(スポーツ紙記者)
このようにパリ五輪ではブレイキン、東京五輪でのサーフィン、スポーツクライミング、スケートボードが新競技が追加された。
ただ、新たな競技が加わるということは、その分、なくなってしまう競技もある。東京五輪で復活した野球・ソフトボールと空手はパリ五輪では外れてしまった。
この事実だけ見ると、日本で人気の野球と空手は「東京五輪で日本代表がメダルを取りやすくなるために追加された」という穿った見方もできなくない。
「野球・ソフトボールに関しては2028年ロサンゼルス五輪で、フラッグフットボール、クリケット、ラクロス、スカッシュと共に追加されることが決まっています。野球大国アメリカと、もっぱら強い日本で行われる大会でのみ、野球・ソフトボールが追加されるとなると、“なにかしらのロビイングがあった”と疑われても仕方がないですよね」(同)
『SASUKE』が新競技に仲間入り!?
ちなみに、追加競技ではないが、2028年ロサンゼルス五輪の近代五種(水泳、フェンシング、馬術、レーザーランの5種目で争う競技)では、馬術が省かれ、なんとTBSの人気特番『SASUKE』を基に考案された「障害物レース」が新たな種目として決まった。
「近代五種は『近代五輪の父』クーベルタン男爵が考案した伝統のある競技ですが、現在、近代五種の競技人口は世界で約1万4000人しかおらず、日本で5種目すべて行う大会に出場できる選手はおよそ50人。
そして、馬術の馬は大会主催者が用意するため、レンタル料や輸送費など多額の費用がかかり、国によっては競技環境整備の問題や安全面が課題となっています。さらに、東京五輪では女子のドイツ代表コーチが馬を殴ったことで、世界中から非難の声が殺到しました。その批判を回避するために、ロサンゼルス五輪からは馬術が『SASUKE』に代わるのです。
ただ、これは保守的な物言いですが、“伝統的な競技を失くしてヒップホップダンスやテレビ番組の企画を新競技にするのはいかがなものか?”と、どうしても思ってしまいます。
こうなると、いずれ『eスポーツ』が競技に加わる日も近いでしょう」(スポーツ雑誌編集者)
とはいえ、五輪はもともとアマチュアだけに開かれた大会だった。その観点からすると、『SASUKE』はミスターサスケはいるものの、プロの選手は事実上いない。実はこの近代五種の種目の入れ替えで、五輪のアマチュアリズム精神は戻ってくるのではないだろうか。
取材・文/千駄木雄大