開会式の多様性をアピールする演出が大きな話題を呼んだ今年のパリ五輪。競技に関しても、新たな時代の到来を思わせる事例が相次いでいる。
ビーチバレーで対照的なウェアが話題に
8月1日におこなわれたビーチバレー女子・スペイン対エジプトの試合では、“対照的”な姿が話題になった。ビーチバレーのイメージ通り、スペインチームは上下が分かれた赤いウェアを着用。一方で、エジプトの選手は黒のロングウエアで、手足と顔の露出にとどまっている。
「この両者の試合には、《選択肢が広がって素晴らしいことだと思う》《露出の多さが理由で試合に出れない選手がいないのは良いこと》《ビーチバレーの女子選手、いつも水着の面積小さすぎると思っていた》といった声が相次ぎました。実は、エジプトチームは2016年のリオ五輪の際にも肌を覆ったウェアを着て話題になっています」(スポーツライター)
1996年のアトランタ五輪から公式競技に採用されたビーチバレー。その後1999年にはユニフォームの規格化がおこなわれ、すべての国際大会が水着でプレーされることになっていた。しかし国際バレーボール連盟は、2012年のロンドン五輪の大陸予選からこの規制を解除。ショートパンツや袖ありのシャツ、またボディスーツの着用も認められるようになった。
物議を醸したボクシング女子66キロ級
女性種目の衣装は、前回の東京五輪でも変化を見せている。脚の付け根から先が露出するようないわゆる“レオタード”で競技するのが一般的だった体操種目では、ドイツ代表が足首まで覆われた“ユニタード”で出場。この時にも、選択肢の拡大を歓迎する声が多く上がっていた。
「一方で、今回のパリ五輪で大きな議論の的になっているのが、ボクシング女子66キロ級のアルジェリア代表イマネ・ケリフ選手です。実は彼女は、昨年の世界選手権では男性の特徴であるXY染色体を持っているとして出場権が剥奪されていました。しかし、今回のパリ五輪には出場。あまりの強打に、2回戦では相手のイタリア代表選手が開始46秒で棄権するという出来事も起こりました」(前出・スポーツライター)
ケリフの出場には賛否の声が絶えないが、国際オリンピック委員会は《全ての人には差別なくスポーツをおこなう権利がある》《選手の性別と年齢はパスポートに基づいて決定される》とコメント。しかし、イタリアの首相・ジョルジャ・メローニが《男性の遺伝的特徴を持つ選手は、女子競技に参加すべきではない》と語るなど、大きな議論に発展している。
パリ五輪には、ケリフ同様に昨年の世界選手権で性別適格性検査に不合格となった台湾のリン・ユーティンも出場。“スポーツをする権利”の拡大は、まだまだ物議を醸しそうだ。