ミャクミャクダンス

「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、2025年4月13日から10月13日まで開催される『2025年日本国際博覧会』(略称「大阪・関西万博」)。公式サイトによると「『万博(正式名称・国際博覧会)』は世界中からたくさんの人やモノが集まるイベントで、地球規模のさまざまな課題に取り組むために、世界各地から英知が集まる場」とのこと。

 会場内には参加国の“パビリオン”が建てられ、それぞれの国の文化や最新技術が展示される予定だ。

大阪・関西万博、これがあったら見に行きたい!

 日本で万博が開催されるのは'05年の愛・地球博(名古屋)以来、20年ぶり。大阪での開催は、特定のテーマに絞った特別博も含めると、'90年に大阪鶴見緑地で開催された国際花と緑の博覧会以来35年ぶり3回目である。

 まさに国を挙げたお祭りになるはずだが、今回の万博には大幅な工期の遅れや、予算をオーバーした会場建設費の問題が噴出。開催地の「夢洲(ゆめしま)」が埋め立て地であるため、地盤の弱さや地下に埋められた有害物質への懸念も指摘される。また、直近ではイベントアンバサダーを務めるダウンタウンの松本人志に性加害スキャンダルが報じられ、本人は活動休止中だ。

 大阪・関西万博に次々と不安要素が出てくるため、開幕前から“負の遺産”と認定されつつある。経営コンサルタントの小野裕介さんは、来年の万博に批判が集まる理由について、こう分析する。

「日本の経済状況が不安定ななか、万博関連では“税金の無駄遣い”とも受け取れるネガティブな報道が続いています。このままでは万博に興味を持っていた人も『行きたくない』と感じてしまう要因になるでしょう。

 加えて、イベントの概要がわかりにくく、プロモーション活動が成功しているとは言い難い状況です。参加国を含めた関係各所が連携できているのかも怪しい。プロジェクト全体に漂う“一貫性のなさ”が、万博に対する不信感につながっているのかもしれません」

 そうはいっても、今から中止にできるはずもない……。そこで週刊女性はアンケートを実施し「こんな催しがあるなら行ってみたい!」と感じる集客のアイデアを募集した。

マツケンサンバに大谷翔平、K-POP

 来年の万博チケットは種類が豊富で料金体系もさまざま。夜間入場のチケットは最安値の3700円で、最高額は会期中いつでも入場できる「一日券」の7500円となる。正直、高いのか安いのかよくわからないからか、アンケートでは入場料に関する提案が多く集まった。

「無料になるなら多くの人が来場するはず」(神奈川県・57歳・男性)、「遠方からでも遊びに行きやすくなる旅行プランが欲しい」(北海道・44歳・男性)、「無料で入れるパビリオンが一部でもあれば行きたい」(宮城県・56歳・女性)など、無料、あるいは格安プランを推す声が多数。

 また「日本人割引をしてほしいけど不公平感があるので、浴衣や着物を着て来場した人は半額になるなど、特典があるとうれしい。日本の雰囲気が味わえるので、海外の人も喜ぶのでは」(大阪府・35歳・女性)という特別割引の案も寄せられた。

 また、イベントの“顔”でもある公式キャラクターの『ミャクミャク』には「ミャクミャクの知名度は関西圏以外ではゼロだと思う。

 地方のゆるキャラ諸先輩方と一緒にローカルニュースで取り上げられれば、一気に認知度が上がると思うので、ゆるキャラと一緒にPR活動してほしい」(北海道・53歳・男性)や「ふなっしーを呼んでバンドを組んでほしい」(京都府・55歳・女性)などの声が集まった。ミャクミャク単体での知名度の低さに不安がある様子。

 風変わりなイベントを愛好する漫画家でコラムニストの辛酸なめ子さんは、世界中の国が集結する万博ならではのアイデアを提案してくれた。

「ミャクミャクは、デザインの選考中から不気味なデザインが話題になっていますよね。万博で世界各国にいる“ホラーゆるキャラ”が一堂に会するパレードがあるなら見てみたいです」

 おどろおどろしいゆるキャラの大行進……ぜひ実現してほしい!

 そして、ゆるキャラ以外にも有名人の力を借りる案も挙がった。

「大谷翔平が来てくれれば万事解決すると思う。その分、高額なギャラと交通費がかかりますが……」(佐賀県・61歳・男性)、「大谷翔平の野球教室」(鹿児島県・55歳・男性)など、世界のオオタニを召喚するアイデアが寄せられている。

大谷翔平

 そのほか「マツケンサンバの盆踊りがあれば行きたい。盆踊りを一周回ったら、参加賞のマツケンうちわを配ってくれるなら本人不在でも行きたい!」(大阪府・35歳・女性)など、若い世代に人気を集める“マツケン”の投入を切望する声も。

松平健のマツケンサンバを熱望する人たちも多数

「日本の著名人だけでなく、韓国のパビリオンで超人気K-POPアイドルのライブを行えば、集客につながる可能性は高いです。ただ、ライブの日にのみ人が集まることになるので、長期間開催される万博には向いていないかもしれませんね」(小野さん)

ニンジャ、ヤクザ、粉もんで攻める!?

 アンケートには過去の万博開催経験を生かした次のようなアイデアも。

「'70年の大阪万博には行ったが、パビリオンが多すぎて見たかったパビリオンをすべて回れなかったのが心残り。VR(バーチャルリアリティー)で当時のパビリオンも体験したい」(東京都・67歳・女性)や「過去の万博から現在までの街並みの変化をVRで楽しめれば、歴史も感じられて勉強にもなると思う」(鹿児島県・41歳・女性)という、ノスタルジーと最新技術をかけ合わせた提案も多数集まった。

「私は、日本の文化ともいえる“任侠の世界”をVRで垣間見たいですね。兄弟の契りを交わす盃事体験や組同士の抗争など、彼らの文化を体験したい。『国がヤクザの存在を認めるのか!』なんて批判が集まると思いますが、映像の最後に暴対法の歴史も描いて暴力団対策に力を入れていると伝えれば、学びにもなりそう」(辛酸さん)

 海外の人々は日本の文化のなかでも、ニンジャとヤクザが大好きとのウワサも。インバウンド向けの展示として大ウケするかも?

 また、開催地がグルメの街・大阪ということもあり“食”をテーマにした、次のようなアイデアも寄せられた。

「大阪のグルメを安く味わいたい」(岐阜県・69歳・男性)、「コテコテの大阪グルメ選手権を開催する。たこ焼きやお好み焼きなど、粉もんをはじめとするおすすめの大阪グルメを大阪府民に挙げてもらい、人気投票をする」(三重県・56歳・男性)などの意見もあり、辛酸さんも「粉もん決定戦や『551蓬莱』の出店に行きたい!」と大賛成。

たこ焼き、大阪名物「粉もん」の博覧会にも期待の声が

 念のため、万博のホームページに掲載されている「関西パビリオン」の構想図を拝見したところ、食文化に触れる展示はなさそう……。今からでも追加してほしい。

利便性やSDGsを意識した施策を

 パビリオンや催し物のアイデア以外では「自宅周辺から会場まで空飛ぶクルマで無償送迎してくれたら最高」(大阪府・69歳・男性)、「待ち時間を少なくしたり、移動が楽になったりする施策が必要。混雑状況のリアルタイム発信もしてほしい」(東京都・60歳・男性)など“利便性”に着目したものも多い。

「万博の開催国は持続可能な開発目標(SDGs)を意識しなければなりません。例えば、超高齢社会の日本で開催するなら、バリアフリーな会場づくりが求められます。若い人が多く訪れた'70年大阪万博の感覚を引きずったまま会場づくりをしてしまうと、世界各国から批判を浴びるリスクもありますね」(小野さん)

 また、会場については辛酸さんからも「象徴的なモニュメントがあると盛り上がるのでは」との案が挙がった。

「'70年の万博は、岡本太郎さんの『太陽の塔』が名実共にシンボルになっていますよね。当時の開催期間中、太陽の塔の目玉部分に男が籠城し、万博中止を訴えるアイジャック事件も発生したそうです。太陽の塔のように、事件が起きてしまうほどパワーのあるモニュメントがあれば『あれを生で見たい』と考える人も増えるのではないでしょうか」

大いに盛り上がった'70年の大阪万博を象徴する太陽の塔 

 “見どころのなさ”も、来年の万博がイマイチ盛り上がらない要因なのかもしれない。

「いろいろと言いましたが、私自身は来年の万博に行くと思います。万博に行かず、そのまま閉幕したときに『大阪の万博に行かなかったな……』と、後悔しそうな予感がします(笑)。なにより、世界中のパビリオンを見れば、各国の経済状況や日本の国力もひと目でわかりそう。日本のパビリオンには侘寂感があるかもしれませんが、それも思い出になるので、やっぱり行きたいですね」(辛酸さん)

 どんな結果になろうとも、後悔したくない人は足を運ぶのが吉?

 ここまでさまざまな集客アイデアを紹介してきたが、小野さんは「“万博の成功の定義”は、集客だけではない」と語る。

「今回の万博の想定入場者数は約2800万人です。たしかに、日本のメディア報道を見ていると批判が多く、集客に苦労しそうな印象があります。とはいえ、大阪・関西という国内外の観光客が数多く訪れるエリアでの開催なので、その流れで目標人数は達成する可能性は高いでしょう。しかし、後世に残る万博にするには、目先の利益だけでなく“中長期的な成功”が欠かせません。

 例えば、万博をきっかけに国内外の企業が出会い、大きなビジネスをスタートさせたり、開催に関わっている名門大学の研究や技術を世界に向けて発信したりできれば、国の未来につながります。将来への“種まき”として機能するか否かが、万博成功のカギですね」

 開催期間だけが万博ではない。長い目で温かく見守るのも、私たちの役目なのかもしれない。

※インターネットアンケートサイト「Freeasy」にて6月下旬、全国の18歳以上70歳以下の男女500人を対象に実施

小野裕介●ロンドン大学卒業後、野村総合研究所を経て三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)に入社。主に東証上場企業向けにアジア・アメリカ市場参入コンサルティングに従事。現在は株式会社iaで代表を務める
辛酸なめ子●1974年東京生まれ。漫画家、イラストレーター、コラムニストとして活躍。興味対象はセレブ、芸能人、精神世界、開運、風変わりなイベントなど。鋭い観察眼と妄想力で女の煩悩を全方位に網羅する画文で人気を博す。『新・人間関係のルール』など著書多数

取材・文/とみたまゆり