『ペット共生型マンション物語 ハイツ祐天寺へようこそ』第5巻(漫画柏屋コッコ/原作小林のえ)

 犬や猫の保護団体によると、近年とある依頼が急激に増えているという。

「老いた親が施設に入るので、親が飼っていたペットを引き取ってほしい」「親が亡くなって、残されたペットの面倒を見る人がいないのでどうにかしてほしい」といった内容の依頼で、中には飼い主本人からの「年をとって世話ができなくなったからペットを引き取ってほしい」といったものまであるそうだ。

 犬や猫の寿命が年々伸びている中、老後のパートナーとして飼い始めたものの人間のほうが先に老いて、最後までペットの面倒を見られないというケースが多発しているのだ。

 ペットを愛する者にとっては気になる問題であるが、現在『週刊女性』にて連載中の漫画『ハイツ祐天寺へようこそ』(漫画 柏屋コッコ/原作 小林のえ)に興味深い話が収録されている。5巻に収録の「シロの最愛の人」がそれだ。

 主人公は、宮崎県の農村に住んでいる宮下和江80歳。一人暮らしの和江は、ある日迷子になった野犬の子犬と出会い、「シロ」と名づけて飼い始める。和江は賢いシロを可愛がり、シロもまた優しい和江を慕ってお互いに幸せな日々を送るが、和江に認知症の症状が出始めてしまう。

『ペット共生型マンション物語 ハイツ祐天寺へようこそ』第5巻(漫画柏屋コッコ/原作小林のえ)

 そんな和江のことを心配した一人娘の恵子は、和江とシロを東京の「ハイツ祐天寺」に呼び寄せることを決断。大企業の管理職として業務に追われる中、恵子はなんとかして仕事と介護を両立させようと試みるが、和江の認知症は急速に進行。シロも必死に和江をフォローするも状況は悪化していき……。

『ペット共生型マンション物語 ハイツ祐天寺へようこそ』第5巻(漫画柏屋コッコ/原作小林のえ)
『ペット共生型マンション物語 ハイツ祐天寺へようこそ』第5巻(漫画柏屋コッコ/原作小林のえ)

 娘のことを思うがゆえに負担になりたくない和江。まじめな性格ゆえ、老いた母とシロの世話を引き受けた恵子。そしてその2人を懸命に助けようとする健気なシロ。

 3者の思いが非常に切ない話だが、人は必ず老いるという現実と、親がそうなったときに子はどうすればいいのか、そしてそのとき誰がペットの世話をするのか、といった深い問題にも触れていて、最後に恵子が出した結論は涙を誘う。

 それと当時に、では自分が恵子の立場、和江の立場となったときはどうすればいいのかとも考えてしまう。

 この5巻には他にも、狂暴な野良猫を保護することになってしまった男の子の話「ぼっちの僕と黒猫シャー」、強烈な毒母の支配から逃れようとウサギを飼い始める女性の話「ウサミーミのキック」なども収録。

『ペット共生型マンション物語 ハイツ祐天寺へようこそ』第5巻(漫画柏屋コッコ/原作小林のえ)
『ペット共生型マンション物語 ハイツ祐天寺へようこそ』第5巻(漫画柏屋コッコ/原作小林のえ)

 どの話も胸に響く感動作であると同時に、あらためてペットとのあり方を考えるきっかけともなってくれる1冊だ。

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