事件現場となったアパートの一室

「報道自体が間違っている。これは殺人未遂事件なんかじゃなくて、単なる病死だからね」

 容疑者と被害者の双方を知る親族はそう言い放ったーー。

 埼玉県警川越署は7月27日、同県川越市に住む無職のA容疑者(20)を殺人未遂の疑いで逮捕した。容疑者は26日午前5時ごろ、自宅内で実母のBさん(53)に対し、顔面を手拳で数発殴打した上、殺意を持って両手で首を絞めて殺害しようとしたというもの。

 午前7時50分ごろ、起きた父親がそれを発見し、

「妻が倒れている」

 と119番通報するも、Bさんは搬送先の病院で死亡が確認された。

亡くなった母親は発作で暴れることも

「警察の取り調べに対して、A容疑者は“間違いありません”と容疑を認めていることもあって、警察は容疑を殺人に切り替えて捜査するとも」(全国紙社会部記者)

 一見すると、凶暴な息子が、母親を惨殺したかのような事件だが、冒頭の親族はそうではないと説明する。

「一家は両親と息子、姉2人の5人暮らしでね。父親は脳梗塞のため右半身麻痺の身体障害者。あとの4人はみな知的障害者なんです。A自身は知的障害の2級で、障害者の作業所では働いているけど、それは無職扱いになるらしい」

 亡くなった母親のBさんは知的障害に加えて、重度の内臓疾患もあったという。

「肝臓か腎臓が悪かったんだろう。このところゲッソリ痩せ細っていたからね。それで、数か月前から夜中にしょっちゅう発作を起こして、暴れることがあった」(親族、以下同)

 Bの発作に気づいたAが、それを止めようとしたのではないかというのだ。

逮捕に誤りがあったのか?

「そりゃあ、顔を叩いたり、首を押さえ込んだりしたかもしれない。でも、それはあくまで止めるためのものであって、殺意まではなかったと思うけど……」

 だが、それはあくまで想像の範囲内でしかない。決定的な証拠はあるのだろうか?

「司法解剖をしたあと、死亡診断書を書いた医師が“病死”だと言っていたと聞いた」

 逮捕が間違いであるならば、Aを一刻も早く釈放してほしいと親族は話す。

 この司法解剖の結果については、いまのところ埼玉県警は発表していない。逮捕の誤りについては

「結局、容疑は殺人未遂のままで、殺人には切り替えおらず、“未遂”で送検しています。したがって、逮捕に誤りがあったということにはならない。司法解剖の中間報告によると“病死の可能性があるが、それは最終的なものではない”となっています」(捜査関係者)

 警察側の言い分を親族に伝えると、“Aの疑いを晴らすことも大事だが……”と口ごもった。

「Aはどのみち一生、外で働くわけでもないから。ただただ、早く自由の身にしてほしいだけ」

 近所の住民もこう話す。

「Aは無口でおとなしい子で、母親と一緒に出かけるなど、仲がよかったから殺害したとは思えない」

 息子は母親に手をかける凶行に走ったのか。今後の警察の慎重な捜査を待つほかにないだろう。