国際オリンピック委員会公式Xより

 メダルラッシュに沸いたパリ五輪も日本時間8月12日に閉幕。日本選手団の大活躍に日本中が盛り上がったが、“炎上”する騒動もたびたび起こっていた。

 そこで日本全国の男女1000人に「納得できなかった」「問題だと思った」シーンについてアンケートを実施。いちばんモヤっとしたのはどの場面だったのか。

納得できないオリンピックの問題点

 第5位にランクインしたのは、選手村にエアコンが設置されなかったこと。“脱炭素”を掲げて環境に配慮したということだが、日本やアメリカ、ドイツなどは自費でエアコンを設置するという結果に。

※写真はイメージです

「近代五輪とは思えない」(群馬県・52歳・男性)

「選手を死なせたら地球を救えても意味がない」(宮城県・23歳・男性)

 といった選手の体調やコンディションを心配する意見が上がった。

 ソウル五輪女子10000メートル日本代表の松野明美さんは、エアコンなしの選手村についてこう話す。

36年前のソウル五輪でもエアコンはあって、暑いとかはなかったです。当時でも環境は整っていて、選手村は充実していて快適に過ごせました。それがこの時代に環境のことで、こんなに悩まされることがあるなんて驚きました」

 第4位は柔道混合団体の決勝、日本対フランスで起こった“疑惑のルーレット”。

 3勝3敗で並んだため、電子ルーレットによる抽選で代表戦の階級を決めることに。モニターに表示されたルーレットが回り、選ばれたのは絶対王者のテディ・リネールの男子90kg超級だった。日本チームから選ばれた斉藤立も奮闘したが、敗れて銀メダルとなった。

「どう見てもフランスが勝ちそうな階級をコンピューターが選ぶような設定だったのではないかと思えて仕方がない。もっとスッキリするような決め方はないのかなと思う」(神奈川県・82歳・女性)

「ルーレットを操ろうと思えばできると思ったので、もっと不正ができないようなやり方で選んでほしいと強く思った」(大阪府・40歳・女性)

 開催国・フランスにとって有利な階級が電子ルーレットで選ばれただけに、不正を疑われてしまった。

「あのルーレットには私もビックリしました。開催国が有利になるという不正はないとは思いますが、このやり方は考え直してほしいです。スポーツの世界、特にオリンピックでは、あいまいな決定方法はあってはならないです」(松野さん)

 第3位に選ばれたのは、女子ボクシングの“性別問題”。66kg級に出場したアルジェリアのイマネ・ケリフ、57kg級に出場した台湾の林郁テイは共に国際ボクシング協会が主催の世界選手権にて、多くの男性が持つ染色体を持っているとして失格。だが、パリ五輪では2人とも金メダルを獲得した。

性別問題に揺れた女子ボクシングのケリフ(ケリフのインスタグラムより)

「他の国際大会とオリンピックの基準は統一するべき」(北海道・52歳・女性)

「性別を分けて競っているので、きちんと検査してほしい」(千葉県・64歳・女性)

 昨今、スポーツと性別の問題が取り沙汰されることが多いが、オリンピックという舞台でこのような騒動が起こり、世界的にも注目を集めた。

「多様性は非常に大事ですし、オリンピックで多様性を掲げることも、大会の役割だと思います。ただ、ボクシングのような力を争う競技においては難しい問題です。それでも、これから先の世界のことを考えると、2人の選手を責めないほうがいいと、個人的には思います」(松野さん)

 第2位はセーヌ川の水質問題。101年間も水質汚染を理由に遊泳が禁止されていたが、パリ五輪でトライアスロンなどの会場となった。大腸菌の濃度は大阪・道頓堀の4倍。因果関係は明らかになっていないが、セーヌ川での競技出場後に嘔吐するなど、体調不良を訴える選手も出てきた。

トライアスロンでセーヌ川に飛び込む選手たち。水質が悪く、劣悪な環境での競技だった 写真/共同通信社

「アスリートの資本でもある身体に影響がある事態は避けるべき」(神奈川県・39歳・男性)

「選手のことが置き去りだなと思った」(埼玉県・40歳・男性)

 五輪を目標にしてきたはずだが、劣悪ともいえる環境で戦うことを強いられてしまった。松野さんも怒りをあらわにする。

「自分の力を発揮する場であるはずなのに、泳ぐ場所が不衛生とか、あってはいけないことです。それにより、いつもの力が発揮できないとなれば、私は頭にきますね。嘔吐した選手もいたようですし、次からのオリンピックでは、しっかり考えてほしいです」

 175票を集めて栄えある(!?)1位となったのは柔道60kg級準々決勝で起こった不可解判定。

「待て」の後も絞められ続けて、一本負けの永山。不可解な判定に抗議も覆らなかった 写真/共同通信社

「日本人がしっかりとルールを守っているのがばかばかしいと思った」(千葉県・25歳・男性)

「なんのための審判?と思った」(鹿児島県・59歳・女性)

 永山竜樹が昨年の世界王者でスペイン代表のガリゴスに敗れたのだが、この判定が物議を醸した。

 絞め技をかけられた永山だったが、審判から「待て」がかかった。これで永山は力を抜いたが、ガリゴスはそのまま絞め続け、永山は失神とみなされて一本負け。永山は約3分間、畳から降りずに抗議の意思を示したが、判定が覆ることはなかった。

 これに対して、絞め技を続けたガリゴスではなく、止めなかった審判への批判が相次いだ。ほかにも不可解な判定がいくつもあったことから“誤審ピック”と言われる代表的なシーンだった。

「“待て”と言われたら待たないといけないですし、そこで問題があったらやり直すほうが、選手にとっても後悔がない戦いになると思います。“待て”の声が永山選手には聞こえて、ガリゴス選手には聞こえなかったなんて状況がオリンピックという舞台で、あってはならない。しっかり反省して、立ち止まってルール作りをしないといけないと思います」(松野さん)

 多くの感動があった一方で“炎上五輪”と言われるほど問題点もあったパリ五輪。松野さんはこう振り返る。

誹謗中傷の問題もありましたし、選手にはつらいオリンピックだったと思います。私だったらクタクタになって帰ってきたでしょう。オリンピックというのは、単純にメダルの色や数ではなく、オリンピックを通して世界がどう変わっていくのかが大事です。どんな状況の選手でも、活躍する夢を持てる世界にしていくのがオリンピックの役割。このパリ五輪を通して、原点に戻って大事なことを考え直す機会だと思います」

 次の舞台はアメリカ・ロサンゼルス。今回の反省を生かした“平和の祭典”になることを願うばかり。

パリ五輪「納得できない!」トップ10

1位 柔道男子60kg級
→永山が「待て」の後も絞められ続けて敗北 175票

2位 トライアスロンなど
→セーヌ川の水質が最悪で体調不良の選手が出た 130票

3位 女子ボクシング
→男性染色体を持つとされる選手が金メダルに 109票

4位 柔道混合団体
→疑惑のルーレットで対戦階級の決定方法に物議 83票

5位 選手村
→フランスは酷暑にもかかわらずエアコン設置なし 68票

6位 金メダル
→わずか1週間で変色・劣化が目立つ“質” 67票

7位 選手村の食事
→動物性タンパク質不足で選手が苦言 54票

8位 バスケ男子
→河村が疑惑のファウルを取られて敗北 47票

9位 国際情勢
→ロシアとベラルーシは不参加もイスラエルは出場 46票

10位 開会式
→韓国を“北朝鮮”と間違えて紹介 34票

日本全国20歳以上の男女を対象に、2024年8月15日にインターネットによるアンケートを実施。パリオリンピックで「納得できなかった」「問題だと思った」シーンを編集部でリストアップ。選択肢から1つ選んでもらい、その理由を聞いた。