父・小泉純一郎氏から「50歳までは(総裁選に)出馬すべきでない」と言われたことは否定し、「進むも引くも自分で決める」と発言した小泉進次郎氏

「自民党が変わることを示す、最もわかりやすい最初の一歩は、私が身を引くことだ」

 8月14日、岸田文雄首相は9月に行われる予定の自民党総裁選挙に、自身が出馬しないことを明らかにした。

総裁選は混戦模様

 内閣支持率が20%あたりで低迷を続け、出処進退が注視されていた中での不出馬表明だった。そこで活発になってきたのが総裁選への立候補が噂される面々の動き。

「推薦が20人いれば、ぜひとも出馬したい」

 と語った石破茂氏や、かねて出馬の意欲をにじませる茂木敏充氏など“次期首相”の座を狙う人たちの言動や行動に注目が集まる中、浮かび上がってきた小泉進次郎氏(43)の名前。言わずと知れた小泉純一郎元首相の息子で、環境大臣を務めた経歴もある。しかし、

「故・田中角栄さんが総理になる条件として、大臣を2つ以上、党三役を2つ以上、できれば経済か外交系の大臣で幹事長ならなおいい、とご高説を述べたことがあります」

 と語るのは、政治評論家の有馬晴海さん。この条件によると進次郎氏は、外れているように見えるが、

安倍晋三さんは、大臣を経験しないで総理大臣になりました。もう角栄さんが話していた条件は変わりました。選挙が小選挙区制になって、第一は“選挙の顔”になる人が求められているんです。

 安倍さんは首相在任中、衆議院、参議院でそれぞれ3回の選挙をすべて勝ち、長期政権を築きました。総理まで約30年かかるといわれる中、議員歴15年目は実績不足にも思えますが、『政治とカネ』が批判にさらされる政治状況を考えれば、手垢にまみれていない進次郎氏は新たな自民党の顔として期待が集まります」(有馬さん、以下同)

 しかし進次郎氏は環境大臣時代には、その語り口などから「言語明瞭、意味不明」「進次郎構文」「ポエム」などと揶揄されたことがあり、議員歴、実務経験ともに浅い。国民にとって大切なのは、首相に国を引っ張っていく力があるか、ということ。

立ちはだかる“先祖返り”のハードル

「当然、政治は国民のためにあります。政治家は個々の能力も大切ですが、総理大臣には“指揮官”としての判断や統率力が必要で、周りにどれだけ有能なブレーンをつけられるかが勝負です。進次郎氏は1回生のときから同僚議員の選挙応援に行っては、幹部レベルの役割を担ってきました。彼に世話になっている議員はたくさんいますし、父親の純一郎元総理に義理がある議員も多い。

 何より人並み外れた発信力やメッセージ力があり、国民に訴えるリーダーとしては党内で誰もが認めています。また礼儀正しく、彼の人間性を悪く言う議員はいません。環境大臣時代の評価は反省と捉え、むしろ勉強するいい機会になっているようです」

退陣を表明した岸田首相

 だが、若さゆえの問題もあるという。

「進次郎氏より年配の議員にしてみれば“あいつがやったらもう俺には回ってこない”という嫉妬があります。自分より若い議員が総理をやると、“先祖返り”はハードルが上がりますので、そこが問題かもしれません」

 はたして進次郎氏の出馬、そして首相就任という“サプライズ”はあるのか?

「今度こそオール自民党でドリームチームを」

 と会見で語った岸田首相。その“ドリーム”が悪夢にならないことを望む──。