相次ぐ食品の値上げに頭を抱え続けている人も多いことだろう。なかでも今年、類を見ないほど価格が高騰しているのが、オリーブオイルと米だ。
2年続いた干ばつなどによりスペインやイタリアでオリーブの実が不作となり、オリーブオイルの価格は5月から最大8割増しに。
1.5倍の値上げも!その原因は複合的……
国産米は昨年から品薄となっているところに、インバウンドによる需要が増えたこともあり、7月ごろから店頭価格が2割ほど上がっている。
「輸入食品ではコーヒー豆やトマト缶なども、天候不順による不作が原因で値上がりしました。ただ、この物価の上昇は、『世界的な需要の増加』と『円安』の影響が大きいですね」
そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。
ほかの食品価格の上昇も止まらない。8月にはパスタやチョコレートをはじめとした642品が、9月以降もハムやソーセージ、食用油や冷凍食品まで幅広い品目で値上げ予定と各企業から発表された。
企業データ収集最大手の帝国データバンクによると、3年連続で年間1万品以上の食品が値上がっている。
「コロナが落ち着いた2022年以降は経済活動が活発になり、あらゆる物への需要が世界規模で増加しました。物の値段は需要と供給のバランスで決まるので、世界的に物価が上がっているんです」(荻原さん、以下同)
そこに日本特有の問題が追い打ちをかける。為替相場が一時は1ドル=160円を超える「円安」となり、記録的な物価高を加速させた。
「食料自給率が38%と低い日本は、海外からの輸入に頼らざるを得ません。また、畜産業では鶏も牛も飼料は外国産でほとんど賄われているため、その分、肉類の価格に上乗せされています」
ほかにも食品を包装するプラスチックやビニールなど素材の値上がり、輸送代や人件費の高騰など、価格アップの原因が山積みに。
「企業努力だけでは収拾不可能で値上げするしかない。そんな苦渋の決断が続いているんです」
現在は円高傾向になったり、日銀の利上げが行われ、物価低下が期待できる要素も見え隠れする。もう少しの辛抱と思って乗り越えられそうだが……。
「物価はすぐには落ちないと腹をくくったほうがいいでしょう。円高で1ドル=140円台になっても、船便で輸送される商品が店頭に並ぶまでにはタイムラグがあるもの。
円高や利上げの影響で多少値段が下がることがあっても、その価格でお店に並ぶのは数か月先。しかも、高騰する食品価格はいくつもの要因が複雑に絡んだ結果なので、価格低下へとすぐに流れが変わるとは考えにくいですね」
物価に振り回されない食費カットの知恵
そこで、今すぐに役立つ「食費節約の心得」を荻原さんと、子育て中の節約主婦ユーチューバー・Ricoさんに教えてもらった。
「野菜に関しては直売所で買ったほうが、規格外のものもあってスーパーよりお手頃。台風や気候変動で不作になる野菜と、たくさん採れる野菜があるので、豊作で安くなるものはチェックしておきましょう。
よく使う野菜や肉類は安いときにちょっと多めに買って、冷凍しておくのもおすすめです」(荻原さん)
ブロッコリーなどは大量に使わない限り、冷凍野菜などを活用したほうが安価で価格も安定している。ちなみに、きのこ類などが作られる工場野菜は原油価格低下で維持費が下がり、今後、安くなる可能性も大きいとのこと。
Ricoさんは業務スーパーやドラッグストアで、お得に食材をゲット。食料品も販売しているドラッグストア・ウエルシアで行われる毎月20日の『お客様感謝デー』ではWAONポイント1000円分で1500円分の買い物ができるため、必ずといっていいほど利用しているそう。
「油やお米、小麦粉など暮らしに欠かせないものは、20日にまとめ買いすると実質33%オフに。店舗によっては野菜や肉、魚などの生鮮食品も扱っているので、今のところ値上げも気にならずに過ごせています」(Ricoさん)
ふるさと納税の返礼品で、日々の生活で欠かせない食材をゲットするのも、食費カットには効果てきめんだ。
「高級食材ではなく、お米、豚肉、野菜などを選んで毎日の食費を抑えています。野菜は詰め合わせよりも、トマト2kg、さつまいも5kgなど種類ごとに出しているものをチョイスするとコスパがいいですよ」(Ricoさん)
食費節約のために徹底させていきたいのが、食品ロスをなくすこと。
「冷蔵庫がスカスカになってから買い物に行くと、食品ロスはなくなります。また、買い物をする前に冷蔵庫内の写真を撮っておき、ダブり買いの防止を」(荻原さん)
写真を撮ってみて在庫が把握しにくいなら、今ある食材だけで食事が作れるので、買い出しには行かないそう。
「買い物は計画的に行くことも大切。余計なものを買わないよう、予算とメニューはしっかり決めておくこと。私の場合、必要ではない値引き品はうまく使い切れず、逆にもったいないことになるので、足りないものだけを買うようにしています」(荻原さん)
一方、Ricoさんは、簡単に味つけができる麻婆豆腐の素など「○○の素」やドレッシングは買わずに手作りすることを徹底している。
「買わないとできない、と思ってしまいがちですが、ネットで調べてみるとすでに家にある調味料を組み合わせれば案外作れてしまうもの。中途半端に残ったドレッシングを捨てることもなくなりました」(Ricoさん)
さらに余計な出費を抑えるため、Ricoさんは買い出しには1人で行く。
「夫や子どもにねだられて予定外のものを買ってしまうこともないですし、1人だと持ち運べる量にも限度があるので、気持ち的にも無駄なものは買いたくない。結果的に節約にもつながっています」(Ricoさん)
また、食費管理を徹底するには、Ricoさんのように現金払いにするのも手だ。
「実感がないまま使いすぎてしまうキャッシュレス払いは、
無駄遣いにつながりやすい一面も。お金の流れを知ることも大事。一度お金を『見える化』すると購入への意識が変わります。やりくりが苦手という人にこそ挑戦してみてほしい」(Ricoさん)
荻原さん、Ricoさんの食費節約術で共通しているのは、必要なもの以外は買わず、無駄を省くことだ。
「今しばらくは、食費をちょっと高めに設定せざるを得ません。しっかり節約の工夫をしつつ、『安く買えたらラッキー』ぐらいの気持ちで暮らしたほうがいいと思います」(荻原さん)
節約主婦Ricoさんの物価高対策
「無理せず続けられることが大切」
ノンフライヤーで油の高騰も怖くない!
油を多量に使う揚げ物には、油を使わない「ノンフライヤー」家電の活用を。
「使い始めてから油の使用量は、約2割減った印象が。子どもがフライドポテト好きですが、ノンフライヤーなら毎日食べさせてもヘルシーで安心」(Ricoさん、以下同)
多めに作って冷凍保存し料理のハードルを下げる!
多めに作って冷凍保存しておけば、作る時間や体力がないときでも自炊を続けられ、外食費を抑えられる。
「揚げ物などのおかずも小分けに冷凍しておくと便利。お手製冷凍食品で自炊のハードルを下げて」
教えてくれたのは……
荻原博子さん●経済ジャーナリスト。経済事務所勤務後、フリーランスに。マネー分野の記事も多く手がけている。『年金だけで十分暮らせます』(PHP研究所)などシニアの暮らしに関する著書も多数。
節約主婦Ricoさん●20代夫婦と子どもの3人暮らしのユーチューバー。貯金ほぼ0&赤字家計から資産2000万円以上を達成。YouTubeチャンネルでは赤貧時代の経験や節約・ポイ活術を発信中。
取材・文/オフィス三銃士