8月14日、岸田文雄内閣総理大臣(67)が、自民党総裁選の不出馬を表明。ポスト岸田を狙う候補者が続々と名乗りを上げ、急きょ総裁選レースが幕を開けた。そこで、30代~60代の女性500人に、「次の首相になってほしい&なってほしくない総裁選候補」をアンケート(8月21日実施)。立候補を宣言、検討している10人以上の中から国民が選んだ次期総理にふさわしい議員は─。
「政治を変えたいという思いがこのランキングに集約されている気がします」と言うのは、政治評論家の有馬晴海さん。アンケート結果から「これまでの自民党に長くあった負の部分、例えば宗教団体との関わりや裏金といった問題を払拭してくれる人、してくれそうな人材が選ばれている」と指摘する。
まずは「首相になってほしい」議員から、有馬さんと共にランキングを見てみよう。
4位は高市早苗(63)。
「はっきりしていて、有言実行の印象がある」(東京都・52歳)、「女性首相の政治を見てみたい」(北海道・63歳)、「一番まともだと思う。経済観念のしっかりした主婦のような感覚で日本をよくしてほしい」(神奈川県・51歳)と、32票を集めランクイン。
「男性に劣らない決断力がある」
同数4位は上川陽子(71)。
「学歴、閣僚経験、留学経験、語学力など、海外の一流議員にも負けないものを持っている」(神奈川県・60歳)、「オウム真理教の死刑執行を決断した覚悟のほどは計り知れない。男性に劣らない決断力がある」(神奈川県・63歳)とのコメントが集まった。
「一般的に女性は忠誠心が強く、正義感があるといわれますが、この2人も宗教団体とのなれ合いやお金の問題には関係がなさそうなイメージがありますよね。ただ今回は女性初の総理誕生というテーマの空気ではない。そこで4位にとどまったのでは」(有馬さん)
3位は小林鷹之(49)。
「古くさい日本の政治を刷新してくれそう」(千葉県・44歳)、「あまりよく知らない人だけど、だからこそ思い切った政治をするのではないかという期待感がある」(滋賀県・59歳)、「頭がキレる。派閥の影響を受けにくい。自民党や国会、日本を国際感覚ある方に改革してもらいたい」(大阪府・49歳)とのコメントが集まり、42票獲得。8月19日に先陣を切って出馬を表明し、一気に知名度を上げた。
「これまで彼のことはほとんど知られていなかったと思います。小林さんが上位にきたのは40代という若さ。女性の首相よりも、今は世代交代が望まれているということでしょう。ただ出馬会見での印象から能力は高そうですが、華がないという意見が。政治家に華はいらないという声もあるでしょうけど……」(有馬さん)
「派閥や風習をクリーンにできる」
2位は石破茂(67)。
「既存の自民党とは違う考え方を持っていて、今の自民党の派閥や風習をクリーンにできる議員だと思う」(大阪府・43歳)、「長年、首相を目指していて志が高いと思う」(福岡県・66歳)、「庶民感覚を持っていて、やるべきことはきちんとこなしそう」(千葉県・63歳)、「しっかりと言葉を選んで発言していて、とても慎重で、信用できる人だと思う」(長野県・58歳)とのコメントが集まり、95票を獲得。
「政治は変わってほしいけど、若けりゃいいというもんじゃない、経験も必要だという人が石破さんを選んだのだと思います。実際38年とキャリアは長く、手堅く政治をおさめていけそうな期待感がある。人望がないと言われていますが、人望が伝わるほど他人と群れないから。他議員と一緒にごはんを食べたりしないので、飯も食ってないのに投票できるか、という政治家もいる。
忖度がなく、安倍元総理の夫人の行動が問題になったときも政治に与える影響などを率直に語ってくれます。あいつは情がないと自民党議員から言われても、国民から見ると正直な人。国民人気はその点にあると思います」(有馬さん)
「若い世代に挑戦してもらいたい」
1位は小泉進次郎(43)。
「行動力と理念がしっかりして、実行力もありそう」(奈良県・44歳)、「若くして政治経験から培ったものと経済を踏まえ、時代に合った正しい政治を行い、憲法を変えてくれそう」(長野県・43歳)、「後期高齢者に国の裁量を任せる時代は終わりにし、若い世代に挑戦してもらいたい」(埼玉県・38歳)、「若い総理大臣というところで何か新しいことをしてくれそう」(大阪府・40歳)、「派閥や宗教との変なしがらみがなさそう」(大阪府・40歳)、「若いし元総理の息子でイメージもクリーンで人柄もよさそう」(茨城県・58歳)と、総裁選初挑戦ながら164票を獲得した。
「3位の小林さんもそうですが、40代の若い政治家なら変えてくれるのではないかという思いでしょう。ネットで経験不足を指摘されたりするけれど、彼自身あまり小さいことを気にしないタイプ。文句を言われるということは、それだけ注目してくれているからと、ある意味プラス思考なんですよね。自身が一回生のころから先輩方の選挙応援に奔走し、父親が総理時代に世話になった議員が今重鎮になっている。人脈もあり周囲の協力で指揮官を務められる。何より進次郎さんが当選するとちょっと楽しくて社会が明るくなるかもしれない、と思う人は多いのではないでしょうか」(有馬さん)
お次は「首相になってほしくない」議員のランキング。トップ5の顔ぶれは─。
5位は野田聖子(64)。
「政治力がまだ足りない気がする」(千葉県・56歳)、「配偶者に問題がある」(東京都・59歳)、「夫の存在。日本がどんな世の中になるのかわからない。好きならそれで構わないけど、首相になるのはまずい」(茨城県・42歳)、「夫が元指定暴力団員という事実だけでも次の首相にはふさわしくない」(東京都・55歳)と41票獲得。本人の資質はさておき、配偶者問題が多く挙がった。
「政治家としてのきっぷの良さもあって、しかも能力は高い。ただそれ以上に配偶者の存在が大きく、元反社と認識され、何かにつけ付き合いにくいことが生じます。総理になりたいという思いが人一倍強い人だけど、結果的に信頼できる仲間が増えません。派閥にも属してないし、推薦人集めに苦労し、なかなか総裁選に出る条件に達しない」(有馬さん)
「何を考えているかわからない」
4位は石破茂。
「ハッキリ物事を言わず、何を言いたいのか、何を考えているかわからない」(千葉県・46歳)、「外交があまりうまくない感じ」(千葉県・48歳)、「強権派の筆頭みたいな人が今の時期の首相になるのは危険」(埼玉県・56歳)、「話し方が回りくどくて行動力がなさそう」(宮城県・56歳)と、51票。首相になってほしい&ほしくない議員、双方での上位ランク入りとなった。
「昔から好きな政治家と嫌いな政治家は、たいてい同じ人物になりがち。38年と長いキャリアはあるけれど、そのぶん67歳という年齢がネックに」(有馬さん)
3位は高市早苗。
「性別上は女性でも中身は昭和ひと桁生まれの男のような人」(東京都・56歳)、「選挙のことばかり考えている発言で、国民のことを考えていると思えない」(滋賀県・50歳)、「違う党から議員になったのに、議員になったとたん自民党に鞍替えした人を信用できない」(奈良県・47歳)、「憲法9条を変えてほしくない」(福岡県・66歳)、「保守的なところが好きではない」(大分県・52歳)、「自民党の悪いところがそのままになりそう」(神奈川県・38歳)と、53票を獲得。
「3年前に初めて総裁選に出て、そのときは女性だから政治を変えてくれるのではないかと注目されました。でもアンケートのコメントにもあるように、女性を引き上げる社会づくりを訴えていないことが、この3年間でいろいろ見えてきてしまったのでは」(有馬さん)
「意見が通らないと逆ギレする」
同数1位の1人は河野太郎(61)。
「会見や受け答えの態度が尊大で、見ていて腹が立つし何様なのかと思ってしまう」(岡山県・47歳)、「コロナ、マイナンバーカードの対応の悪さで信頼が置けない」(東京都・67歳)、「マイナンバーカードで発揮した、聞く耳を持たない力が最悪。自分の意見ばかりゴリ押しして意見が通らないと逆ギレする」(茨城県・58歳)、「利権の権化のような人だから。記者会見の受け答えを見ても人間性を疑う」(大阪府・45歳)と92票獲得。
「もともと政界では異端児というところが人気でしたけど、デジタル担当大臣時にマイナンバカードでのトラブルで持論を押しつけたり、聞く耳を持たないという印象を植えつけてしまいました。上から目線で『おまえたちにはわかんねえだろう』という意識はよくありません。勉強家で知識も豊富な議員ですが、それが若手のころの意見ならよかったのでしょうが、お上の決定となると国民が不都合に感じてしまうこともあります。国民目線の優しさがあるといいですね」(有馬さん)
「トップになったら国は終わり」
同数1位は小泉進次郎。
「まだまだ信用できない感じがするし、いつも話の中身がない」(沖縄県・53歳)、「人の家庭を壊す人には任せられない」(愛知県・53歳)、「知名度や人気だけという感じ」(東京都・51歳)、「人望や経験的に未熟で無理がある」(神奈川県・51歳)、「セクシー発言が嫌」(愛知県・43歳)、「中身のない発言、のらりくらりと責任を負わない姿勢ばかりでこんな人がトップになったら国は終わり」(東京都・35歳)。
「若くて華もあるけれど、やっぱり経験不足ではないかと疑いの目が向けられます。石破さん同様、よくも悪くも上位ランク入りするのは高名で注目されているということ。それだけ両極端な支持があります」(有馬さん)
首相になってほしい&なってほしくない議員たち、そのランキングからは政治の改革を望む声が明らかに。
「若い進次郎さんか、経験がある石破さんか。当初の世論調査では石破さんが1位でしたが、途中で進次郎さんが逆転したりも。それにこれからみなさん、テレビに出たりいろいろ活動するでしょう。そこでまた何か動きがあるかもしれません」(有馬さん)
国民の思いは届くのか─。9月27日、新総裁が誕生する。
取材・文/小野寺悦子