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 株主優待という言葉を聞いたことはあるだろうか。企業が自社の株を購入してくれた株主に向け、自社商品やサービスなどの“優待品”を贈る制度のこと。株主優待は任意の制度だが、多くの企業で実施している。

 最近では、お米や金券、優待券のほかに、カタログギフトのように選べる優待など、バリエーションが豊富。

企業にとっては、株をすぐに売却してしまう株主より、長く保有してくれる株主のほうがありがたい存在。そのため、長期保有するほど優待品の割り増しや特典をプラスしてくれるところも

 そう話すのはファイナンシャルプランナーの安部智香さん。今は業績好調でも株価が割安な会社もあるので、お得な株主優待を狙えるチャンスだそう。

長期優待継続の業績好調な株を狙え

 では、どんな銘柄に目を向けるべきなのか。安部さんのイチ押しは食料品がもらえる優待銘柄だ。

「食料品を提供する優待株は人気が高く、その数も多いです。食品会社に限らず、建設会社がお米を提供するなどのケースもあるんです。生活に直結し、節約につながるのが最大の利点。特に物価高の今は家計の助けになり、主婦の方にとってはかなりうれしいと思います」(安部さん、以下同)

 今回は、安部さん推薦の食料品優待10銘柄を紹介。購入資金50万円台以下で、直近の業績が好調、かつ長期的に優待制度を続けている企業を前提としている。

 加えて、単に食料品をもらえて節約になるというだけではない。次の3つの要素も踏まえている。

キッコーマンでは、3年以上継続して株式を保有すると2000円相当のグループ商品がもらえる(画像はキッコーマンHPより)

(1)賞味期限が長い

優待の食料品はいつ届くかわかりません。企業によっては発送日をお知らせしてくれるところもありますが、突然届くことが多い。旅行に出ているときなどに届いてしまうと、生ものは腐らせてしまう可能性があります。ですから、缶ビールやお菓子など長持ちする品物を選びました」

(2)重くて運ぶのが大変な食料品

「ペットボトルや油など重量のある食料品は買い物に苦労しますよね。車を出したり、持ち運んだりする手間がかかるもの。優待の場合、そういった大変な思いをしなくてすみ、自宅に該当の品物が届きます

(3)たくさんあっても消費する

「優待の食料品がすべて暮らしに役立つわけではありません。中には利用価値の低いものも並び、もらってもムダになりかねないのです。そういった品物は避け、調味料など使い勝手がよくて必ず消費するものを選びました」

 つまり、お得と便利・重宝を兼ね備えているわけだ。

利回り3%以上の高配当株で一石二鳥

 優待の内容だけで選ぶのではなく、業績が好調な株を購入することで、品物以外の株主還元も期待できる。

利益を上げている会社なら配当も望めます。例えばキリンホールディングスは1株当たり71円、100株保有の場合で年7100円の配当金が入ってくる。配当利回り3.42%と魅力です。優待と配当、共に充実した銘柄がベストですね

 企業の株主になって優待の恩恵を受けるには、証券会社に口座を開き、目当ての優待株を購入する必要がある。

「新NISAの活用をおすすめします。株の配当や売却益にかかる税金がゼロになるからです。必要不可欠な事前の業績チェックは、証券会社のサービスを利用すれば手軽にできます。そして、あくまでも余裕資金を使って投資に臨むようにしましょう」

 食料品の優待をゲットし、暮らしにゆとりとラクを取り入れよう!

安部さんオススメ!“食料品優待”銘柄 10選

〈証券コード2811〉カゴメ 
 優待対象最低投資額 31万5900円 
〈権利確定日〉6月末日

《優待内容》
トマトジュースやケチャップなどでおなじみの食品・飲料・調味料の大手総合メーカー。100株以上の保有で2000円相当の自社商品詰め合わせがもらえる。10年以上継続保有で自社オリジナル記念品を提供(1回限り)。

〈証券コード2503〉キリンホールディングス
 優待対象最低投資額 20万7900円
〈権利確定日〉12月末日

《優待内容》 
酒類、飲料、医薬品などの事業を手がけるキリングループの持ち株会社。100株以上を1年継続保有で500円相当の優待品、3年継続保有で2000円相当の優待品+割引サービスなどのプレミアム優待(抽選)がもらえる。

〈証券コード2801〉キッコーマン
 優待対象最低投資額 17万4200円
〈権利確定日〉3月末日

《優待内容》
しょうゆを主とする調味料、加工食品の大手メーカー。100株以上を1年以上継続保有でしょうゆやケチャップなど、1000円相当の自社グループ商品がもらえる。

〈証券コード2208〉ブルボン
 優待対象最低投資額 24万400円
〈権利確定日〉9月末日

《優待内容》
ビスケットやチョコレートなどでおなじみの大手菓子メーカー。健康食品などの製造販売も行う。100株以上を半年以上継続保有で1000円相当の自社商品・飲料等詰め合わせがもらえる。

〈証券コード2201〉森永製菓
 優待対象最低投資額 27万2400円 
〈権利確定日〉9月末日

《優待内容》
チョコボールやハイチュウなどの人気商品で知られる大手菓子メーカー。100株以上を半年以上継続保有で1500円相当の自社商品詰め合わせをもらうか、1500円の寄付を行うかのどちらかを選択できる。

〈証券コード2809〉キユーピー
 優待対象最低投資額 36万2500円
〈権利確定日〉11月末日

《優待内容》
マヨネーズなどの調味料を主力とする大手食品メーカー。100株以上を半年以上継続保有で1000円相当の自社グループ商品詰め合わせがもらえる。

〈証券コード2897〉日清食品ホールディングス
 優待対象最低投資額 38万1800円 
〈権利確定日〉3月末日/9月末日

《優待内容》
即席麺を生産する日清食品を中心とする食品グループの持ち株会社。100株以上保有で自社グループ商品1000円以内を同社グループオンラインサイトにて自由選択または1000円の寄付(3月末日の権利確定日の株主)。

〈証券コード2602〉日清オイリオグループ
 優待対象最低投資額 50万6000円
〈権利確定日〉3月末日

 日清、リノール、ニッコーの製油会社が経営統合した食用油のリーディングカンパニー。100株で1500円相当の自社商品詰め合わせ、200株以上で3000円相当の自社商品詰め合わせがもらえる。

〈証券コード2593〉伊藤園
 優待対象最低投資額 34万6200円
〈権利確定日〉4月末日

 茶製品および清涼飲料の大手メーカー。100株以上の保有で1500円相当の自社商品がもらえる。また、保有株数に応じて掲載商品を優待割引価格にて購入できるパンフレットを送付。

〈証券コード4014〉カラダノート
 優待対象最低投資額 5万2500円
〈権利確定日〉7月末日

 妊娠子育て、健康管理など家族支援の各種事業を展開する会社。100株以上の保有で「カラダノートウォーター」のミネラルウォーター1セット(2ボトル/3974円相当分)がもらえる。

プロが推す株主優待10銘柄

“株主優待”を受け取るまでの流れ

(1)証券会社の口座を開設

 株の購入は証券会社を通じて行う。口座開設が第一歩となり、SBI証券や楽天証券などのネット証券ならオンラインで手続きできる。株の購入には新NISAの「成長投資枠」を活用すると、配当や売却益にかかる税金は非課税となるのでおすすめ。

(2)優待銘柄を購入

 各銘柄の「権利確定日」に株主であることが絶対条件。購入に必要な資金(株価×購入単位100株)を投じ、その権利確定日に間に合うよう株を購入する。購入前に証券会社の無料サービスを使い、売上高や営業利益などの業績推移を要チェック!

口座を開くと証券会社の各サイトで実績を簡単にチェックできる ※写真はイメージです

(3)優待品が届く

 権利確定日後、2~3か月程度経過してから自宅に優待の品が届く。すぐにもらえるわけではないので、焦らず待とう。企業によってはホームページなどで優待の発送日をお知らせしているところも。

大手チェーンの食事券も狙い目!

すかいらーくホールディングス〈3197〉21万円→12月末日/6月末日

「食料品のほか、外食企業の食事券(割引券)の優待品もおすすめですよ」と安部さん。

 例えば、すかいらーくホールディングスの場合、100株保有で年4000円分の食事券がもらえる。年数回のランチなどに使えるわけだ。

※銘柄情報は2024年8月18日時点。
※紹介した銘柄は情報として参考にしていただき、最終的な投資決定はご自身でお願いします。

安部智香さん●証券会社に勤務後、結婚を機に退職し、ファイナンシャルプランナーや資産アドバイザー(IFA)の資格を取得。自身でも株式投資で資産運用を行う。

安部智香さん●証券会社に勤務後、結婚を機に退職し、ファイナンシャルプランナーや資産アドバイザー(IFA)の資格を取得。自身でも株式投資で資産運用を行う。


取材・文/百瀬康司