もともとは栄養面を意識して食品を選んでいたはず。なのに、この物価高、そして猛暑で、スーパーでは「安いもの」「手軽に食べられるもの」「のどごしのいいもの」についつい手が伸びてしまう……。
健康コスパのいい食品で夏も元気に
「短期間であれば仕方のないことですが、それが習慣になってしまったら、いずれ健康を損ないかねません。食品選びに改めて“健康コスパ”という基準を加えてみませんか?」
と提案するのは、浅野まみこさん。健康コスパという考え方を提唱している管理栄養士だ。健康コスパとは?
「食品に含まれる栄養素をもとに、健康にどのくらいメリットがあるかを考える指標です。日々の買い物では、安さや手軽さを軸に食品を選びがちですが、そこにもう一つ、この基準を加えてみては。食生活がよりよいものになりますよ」(浅野さん、以下同)
浅野さんによると、夏は食欲が落ちてタンパク質不足になりがちで、冷房と外気温の差による腸内環境の悪化も気になるそうだ。
そこで今回は、比較的安価な食品の中で、これらを解消する健康コスパのよいものは何か、対決方式で浅野さんに教えていただいた。夏でもおいしく食べられる小ワザもご紹介!
木綿vs絹ごし
食感の違いが勝負を分ける!?
木綿豆腐は製造時に水分を抜きながら固めるため、水分が少ない分、大豆の栄養素であるタンパク質やカルシウムを絹ごし豆腐より多く含む。ただ、口当たりがボソボソしていて、木綿より絹ごしを好む人も多い。
「木綿は、ゴーヤーチャンプルーなど炒め物に投入するなど、加熱調理をおすすめします。1センチ厚さに切り、ステーキにして薬味としょうゆをかけて食べてもおいしいですよ」
ビフィズス菌入りvs乳酸菌入りヨーグルト
選べる種類が多いからこそ注目!
ヨーグルトに入っている乳酸菌は、腸内で乳酸を作り出す。一方、ビフィズス菌は大腸で働いて、乳酸だけでなく、短鎖脂肪酸の一種、酢酸も作り出す。この酢酸が大腸の働きを整えてくれるのだ。
「酢酸は口から摂取しても大腸まで届きません。だから、大腸で酢酸を作ってくれるビフィズス菌が重要です。フルーツを入れて食べれば、その食物繊維をエサにビフィズス菌がしっかり働いてくれます」
もずくvsめかぶ
どっちでもいいなら?
食物繊維の量を見ると、めかぶは100g中3.4g、もずくは1.4g。倍以上の差をつけてめかぶが勝利!カルシウムや葉酸も、もずくよりめかぶが多い。
「めかぶはそのままいただいてもいいのですが、夏におすすめなのは、牛丼、豚しゃぶなどにのせること。めかぶの歯ごたえとネバネバがうまく作用して、食欲がなくてもするする食べられます。お肉でタンパク質も補えますよ」
ツナ缶vsサバ缶
魚の栄養は効率的にとりたい!
サバは、血液サラサラ作用や認知症の予防効果が期待されるオメガ3脂肪酸を、ツナより多く含んでいる。カルシウムやビタミンD、E、鉄、亜鉛も豊富で、栄養面ではサバが圧勝!問題は夏に食べるにはサバは脂っこく胃に重いこと。
「冷や汁に入れて食すのもおすすめです。みそ、白だし、すりゴマを冷水で溶き、ご飯を入れて、サバと香味野菜をのせるだけ。食欲がなくても、さっぱりといただけます」
ミンチ肉vsブロック肉
形状が違うだけじゃない
肉を細かくひいたのがミンチなのだから、ブロック肉と栄養価は変わらない……と思ってしまうが。
「同じ部位をひいたミンチならそのとおり。ただ、お店で売っているミンチの多くは、いろいろな部位の肉を使っていて、脂肪の割合が高く、赤身が少なくなりがちです」
例えば豚肉なら、赤身部分にタンパク質やビタミンB1、鉄などが含まれている。ひき肉はそうした栄養分が少なめになってしまうのだ。
鶏卵vsうずらの卵
健康食材の王様を凌駕する!?
「うずらの卵は優秀です。水煮にしたうずらの卵と鶏卵、100gあたりの含有量で比べると、タンパク質は同じくらいですが、鉄や亜鉛は1.5倍、ビタミンB12は3.6倍。葉酸は2倍入っており、健康コスパが高いのです」
小さなうずらの卵をゆでて殻をむくのが大変なのであれば、水煮缶などを使えば時短になる。サラダなどにちょいちょいのせたり、つまみにしたりして、気軽に食べたい!
そうめんvsそば
のどごしもよく栄養もあるのは?
食欲がないときにもつるっと食べられるそうめんやそば。そうめんの原料はほぼ小麦粉だけど、そばには小麦粉とそば粉が使われている。
「そば粉には血管を強くする作用のあるルチンや腸の働きを整える食物繊維が入っていて、健康コスパが高い」
よって、そばの勝利!そばを選ぶときは、そば粉が多めの八割そばや十割そばを選ぶこと!
似た野菜でも違う!健康コスパ
ネギvs大葉
薬味に欠かせない
大葉はポリフェノール類が、ネギには辛味成分のアリシンが多く含まれていて、どちらも健康によさそうだけど……。
「夏の薬味という意味では、アリシンを含むネギに軍配が上がります。夏は麺をたくさん食べるため、糖質摂取が多くなりがち。この糖質を代謝させるときに、ビタミンB1をすごく消費してしまうんです。
アリシンにはこのビタミンB1を体内に長く維持させる働きがあるので、アリシンを摂取しておくと、夏場の疲労感が軽減されやすくなりますよ」
レタスvsサニーレタス
同じ“レタス”と思ったら驚くほど違う!
「名前は似ていますが、栄養価がまったく違います。レタスは淡色野菜ですが、サニーレタスはβカロテンをたっぷり含む緑黄色野菜。にんじん、ほうれん草と並ぶ存在です」
100g当たりのレタスのβカロテン含有量が240μgなのに対し、サニーレタスは2000μg。文字どおり桁違いに多い。サラダにするなら断然サニーレタスがおすすめだ。
トマトvsミニトマト
大は小を兼ねるわけじゃなかった
ミニトマトのほうが味が濃いし、栄養価も高そう……。
「そのとおりです。100g当たりのβカロテン含有量を比べると、トマトが540μg、ミニトマトは960μg。ビタミンCも、トマトが15mgでミニトマトが32mgです。ポリフェノール、リコピンの含有量などもミニトマトが上です。特に夏はこれらの含有量がアップしますから、水分補給も兼ねてたっぷり食べたいですね」
教えてくれたのは……浅野まみこさん●管理栄養士として、これまで1万8千人以上の健康相談を実施。健康に特化した食品選びの新基準“健康コスパ”を提唱している。
取材・文/鷺島鈴香