左からブラッド・ピット、トム・クルーズ、レオナルド・ディカプリオ、ジョニー・デップ

『太陽がいっぱい』で知られる名優アラン・ドロンさんが今年8月、あの世へ旅立った。世紀の二枚目の突然の訃報に、若かりしころときめいた銀幕スターを思い出した人も多いはず。そこで、全国の50代~70代の女性500人に大アンケート。あなたがかつて沼にハマった、外国人ハリウッドスターは誰ですか?

2人の“ロバート”

 9位に2人が並び、1人はロバート・レッドフォード(88)。

「『追憶』を鮮烈に思い出します。あの甘い笑顔は唯一無二の大スター!」(神奈川県・67歳)、「『スティング』を見てファンになりました。今見ても楽しい作品だし、何よりカッコいい」(愛知県・61歳)と、15票を獲得。

「『追憶』のレッドフォードが死ぬほどカッコよかった! 今、見直しても本当に死んじゃうくらい!」と言うのは、映画ライターのよしひろまさみちさん。レッドフォードは81歳で俳優から退き、「引き際を知っていたのがまたカッコいい」と話す。

映画『普通の人々』でアカデミー監督賞も受賞したロバート・レッドフォード

「'92年公開の映画『リバー・ランズ・スルー・イット』は彼の製作・監督作で、『次世代の俺』と言ってブラッド・ピットを売り込んでいます。確かにイケメンの方向性が似ているんですよね。だからもともとレッドフォードを好きだった層がそのままブラピに乗り換えてる可能性は大。そういったことで2人を推している人も当然いるでしょう」

 そしてもう1人はロバート・デ・ニーロ(81)。

「デ・ニーロを初めて見たのが『恋におちて』。誠実な男の色気が漂っていて、素敵な俳優だと思った」(大阪府・58歳)、「『グランパ・ウォーズ』で見せた意固地なおじいさん役が好き」(神奈川県・72歳)、「渋く雰囲気のある役からコメディーまでさまざまな役を演じるカメレオン俳優で素晴らしい」(大阪府・60歳)との声が集まった。

「デ・ニーロがランキングに入ったのはすごくびっくり。男性向けの映画が多いから、あんたたちどこでハマったの、と思って」(よしひろさん)

マフィアからサイコパスまで演じ切る“カメレオン役者”のロバート・デ・ニーロ

 デ・ニーロの代表作といえば、『タクシードライバー』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』などが挙げられるが─。

若いころはすごく尖ってて、役作りで徹底的に肉体改造をしたりしてた。ただ最近は『マイ・インターン』のような女性ウケするコメディー作品にもたくさん出るようになりましたよね。そう考えると、ここ10年、20年の彼を見て沼った女性が多いのかも」

 8位はジョニー・デップ(61)。

「『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ、『チャーリーとチョコレート工場』など、演技が変幻自在でいろいろなタイプの役をこなしているから」(東京都・74歳)、「『シザーハンズ』の人造人間がジョニー・デップだと後から知って驚きました。顔も好きですが、役に対する演技の深さに惹かれます」(東京都・50歳)と、17票獲得。

出演映画が、世界で100億ドル以上の興行収入を記録しているジョニー・デップ

「彼はもともとクセの強い作品で目立っていた人で、洋画オタクの間でものすごく評価が高い。ジョニー・デップが実世界の男性を演じている作品といったら、すごいカルト映画ばかり。『パイレーツ・オブ・カリビアン』がなければ、彼はカルトスターのままだったはず。だから演技を評価するコメントが多いのはうなずける」(よしひろさん)

「女性票ならでは」

 7位はマイケル・J・フォックス(63)。

「シリアスもコメディーも演じられるところが好き」(京都府・53歳)、「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』での立ち回りが素晴らしかった」(茨城県・53歳)と18票獲得。

「無名だった彼が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で一気に世界的スターになったのはアメリカンドリームの最たる例。カッコ可愛い魅力がありました」(よしひろさん)

‘90年ごろパーキンソン病を患い、一時は俳優活動を離れたマイケル・J・フォックス 写真/共同通信社

 7位にとどまったのは女性票ならでは、と分析する。

男性が投票すれば彼はもっと上位にランク入りするはず。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で演じたマーティは未来に行って、それに憧れを抱いていたのが今の50代~60代の男たち。例えば自動で靴ひもを結んでくれるナイキとかね。女性と男性では支持する視点がまた違っていて面白い」

 6位はリチャード・ギア(75)。

「『プリティ・ウーマン』の甘い笑顔、女性の扱い方に惚れ惚れ」(高知県・55歳)、「『愛と青春の旅だち』で士官候補生が成長する姿を素晴らしい演技力で演じていた。彼のイケメンっぷりも好き」(富山県・75歳)、「『プリティ・ウーマン』で夢を見させてもらいました」(新潟県・60歳)と、21票獲得。

黒澤明作品にも出演、日本映画のリメイク作品にも主演しているリチャード・ギア

「ブラピが出てくる前は、リチャード・ギアとロバート・レッドフォードの2強イケメン時代が長い間続いていた」とよしひろさん。とりわけ女性たちの心をつかんだのが『プリティ・ウーマン』だ。

「ルックスよし、金持ちでステータスよし、絵に描いたようなイケメン男が、娼婦を淑女に変える。夢がありますよね。あの作品で人気が不動のものになりました」

 5位はトム・ハンクス(68)。

「『スプラッシュ』や『アポロ13』に『フォレスト・ガンプ』など、コミカルからシリアスなものまで何でもこなせる演技力が素晴らしい」(宮城県・55歳)、「穏やかな雰囲気でありながら演技に存在感がある」(神奈川県・51歳)との声が集まり、23票獲得。

『フォレスト・ガンプ一期一会』からオスカー常連の役者に飛躍したトム・ハンクス

「『スプラッシュ』『ビッグ』など初期のトム・ハンクスはロマンチックコメディーが多かった。『フォレスト・ガンプ』あたりから賞狙いに走ったけど……。50代~70代の女性はやっぱりロマコメ好きで、彼女たちの素直な意見なのでしょう」(よしひろさん)

「イケメンの代名詞」

 4位はジェームズ・ディーン

「『エデンの東』で演じたキャルの寂しげな瞳が忘れられない」(東京都・69歳)、「『理由なき反抗』を見て、甘いマスクに惹かれた」(栃木県・52歳)と、27票獲得。

白シャツにデニム姿のジェームズ・ディーンはかつてのイケメンの代名詞。昔は彼の写真がフリー素材みたいにバンバン使われてましたよね。今の時代だったら肖像権で大問題になりそうだけれど」(よしひろさん)

デビューして半年、3作品に出演し24歳でこの世を去ったジェームズ・ディーン

 人気絶頂期、24歳のとき自動車事故でこの世を去った。

若くして亡くなったことで伝説になった。どんなに今の俳優たちがまねしようと思っても伝説には届かない。それが彼が永遠のスターたるゆえん」

 3位はレオナルド・ディカプリオ(49)。

「『タイタニック』の若々しい演技が素晴らしかった」(東京都・52歳)、「カッコいいし、演技力もある。顔も素敵で見ていると胸がキュンキュンする」(埼玉県・67歳)、「『ロミオ+ジュリエット』がとにかくカッコいい」(滋賀県・59歳)と、31票獲得。

‘90年代後半、世界中で熱狂的な“レオマニア”を生んだレオナルド・ディカプリオ

「『ロミオ+ジュリエット』で注目を浴び、その直後に出演した『タイタニック』で大スターになった。でもそれ以前に彼は子役時代から目立っていて、もともと追いかけていた人も多かったんです」(よしひろさん)

 そのルックスも相まって当初アイドル的人気を博すも、演技派路線へ移行している。

彼はアイドル扱いされるのが嫌いなタイプで、『タイタニック』の後は一切ラブストーリーをやらなくなった。ガードが堅く、パパラッチに追いかけられまくってもプライベートをあまり見せない。そういう部分も含めて人気を集めている気がします」

 2位はブラッド・ピット(60)。

「作品というより、ワイルドなところが好き」(和歌山県・77歳)、「『セブン』のブラピが大好き。顔、雰囲気、演技の感情の出し方がセクシー」(北海道・56歳)、「『トロイ』のロン毛に惚れた」(千葉県・73歳)、「『オーシャンズ』シリーズがとにかくカッコいい」(埼玉県・52歳)と35票。

まさに“イケメン”の代名詞!ブラッド・ピット

イケメンの代名詞みたいな人で、女性にも男性にもウケる、そういう存在ってなかなかいないんですよね。彼は出てきた当初から“誰このキレイな人!”と大注目された。当時はリバー・フェニックスなどイケメンがてんこ盛りにいた時代でしたけど、その中でも目立ってましたから。ルックスだけだと“自分大好きなイケメン”なアメリカンに見えるけど、プロデューサーもして『それでも夜は明ける』でアカデミー作品賞を取ったりと、頭も切れる」(よしひろさん)

 そして、実物のブラピと何度も対面し、その印象をよしひろさんはこう語る。

「どこからどう見ても360度カッコいい。さらになぜか年を取っても美貌が保たれているんです。まさに奇跡の還暦という感じ」

「若手を引き立てている」

 1位はトム・クルーズ(62)。

「『ミッション:インポッシブル』シリーズが大好き。カッコよく年を重ねている」(富山県・53歳)、「やっぱり『トップガン』が最高。続編の『トップガン マーヴェリック』も1作目と比べてカッコよさは見劣りしなかった」(埼玉県・51歳)、「とにかく顔がドンピシャの好み。『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の静かな演技も大好き」(長野県・58歳)と、87票集まりダントツのトップに。

トム・クルーズが1位というのはすごく納得。若いころと変わらないような役柄をやってわれわれを喜ばせてくれるのはもうトム・クルーズしかいないから」(よしひろさん)

『ミッション:インポッシブル』以降、アクション俳優になったトム・クルーズ

『トップガン』の主役で一躍トップスターに上り詰めるも、その後低迷期が続いた。

「大スターで一定の数字は稼ぎ出せても、彼が出てるとすべてトム・クルーズの映画になっちゃう。ちょっとキムタクっぽい感じ。そんなとき『ミッション:インポッシブル』を自分でプロデュースして、これだけ長く続くシリーズに育て上げた。その功績は大きい。また最近は『トップガン マーヴェリック』を製作して、若手を引き立てている。老害にならずに、若い人たちを盛り上げようとしてるのがエモい」

 ランキングにズラリ並んだ銀幕の海外スターたち。ちなみにトップテン圏外は、11位がアーノルド・シュワルツェネッガー、12位ウィル・スミス、13位クリント・イーストウッド、14位ヒュー・グラント、同数14位ジョージ・クルーニーとの結果に。

「50代~70代の女性票だと考えると、納得のランキングだったかなという気がします」

 と、よしひろさん。当時と今では銀幕スターに求めるものもまた違う、と語る。

今の洋画を好きな人たちってあまりジェンダーで捉えていないんですよね。男優、女優ではなく、俳優として見ているところがある。ただあたしもアンケートと同世代だからわかるけど、この時代は“男は強くあれ”みたいなジェンダーの概念が強固にあったころ。だからある意味、俳優がセックスシンボルになっていた。ジェンダーとしてのシンボルを銀幕スターに求めていたのではないでしょうか」

 時代が変われば銀幕を彩るスターも変わり、世代が違えば沼ったスターもまた違う。久しぶりにあの名作を振り返り、青春のときめきを思い出してみてはいかがだろうか。

全国50代~70代の女性500人が選んだ「私が“沼った”ハリウッドスター」10人

1 トム・クルーズ 87票
2 ブラッド・ピット 35票
3 レオナルド・ディカプリオ 31票
4 ジェームズ・ディーン 27票
5 トム・ハンクス 23票
6 リチャード・ギア 21票
7 マイケル・J・フォックス 18票
8 ジョニー・デップ 17票
9 ロバート・レッドフォード 15票
9 ロバート・デ・ニーロ 15票


取材・文/小野寺悦子