お見合いから仮交際に入っても、1度か2度デートをすると断られてしまう。そんな経験はありませんか? 実はお見合いには、“3回の壁”があるのです。お見合いを1回と数えて、ファーストデート、セカンドデートと、この3回の壁を通過しないと、なかなか真剣交際や結婚にまで進めません。仲人をしている筆者が、婚活の現状をテーマ別に考えていく当連載。今回は、なぜ3回の壁が越えられないのか。越えるためにはどうしたら良いのかを、一緒に考えていきましょう。
いつも1度か2度の食事でお断りがくる女性
みさこさん(38歳、仮名)は、メーカーの広報で働く女性です。お見合いの通過率はとても良いのですが、仮交際に入って、1度か2度の食事をすると、相手からお断りが来ることが続いていました。
話し下手で暗〜い雰囲気の女性ならば、男性からお断りが来ても致し方ないのですが、みさこさんは、正反対のタイプ。ご自身でどんどん話題を提供できますし、明るくて笑顔もチャーミングです。
「どうして私は、3回の壁が越えられないのでしょうか?」という相談が来たので、お相手と会ったときに、どんな会話をしているのかを聞いてみました。
彼女は、誰もが知る有名私大を卒業しています。年収も800万円を超えるバリキャリでした。
「みなさんが大体プロフィールに書かれていたことを掘り下げて聞いてくるので、休日の過ごし方や趣味の話をしています。趣味の海外旅行はどの国が良かったとか、通っているジムで受けているパーソナルトレーニングの話とか」
さらに、こう続けました。
「あと私、仕事に関しては努力して切り開いてきたという自負があるので、結婚しても仕事は続けたいと伝えています。結婚してワンオペ家事、ワンオペ育児になるのは、避けたいので、家事や育児は分担したいというのも伝えています」
この面談を終えて、なぜみさこさんが3回の壁を越えられないのか、筆者にはわかった気がしました。
「私」を前に出した会話をすると選ばれない
仕事の場では、「弊社はこういう方針でこんな努力を重ねています。売りはこちらです」と、明確に伝えた方が、プレゼンはうまくいきますよね。ところが、婚活の席では、「私は、こういう人間です。結婚生活ではこんなことを希望します」と明確に伝えると、いい結果を生まないことが多いのです。
結婚は、それまで全く違った環境で育ってきた男女2人が、一つ屋根の下で暮らすこと。日々を紡ぎながら、家族という形を一緒に作っていくものです。育ってきた環境が違えば、考え方も違う。「自分がこうしたい」という明確な主張があり、それを強く押し出す人は男性も女性もなかなかお相手に選んでもらえません。
自己主張の強い相手と結婚したら、そこに合わせていかなければ喧嘩になる。喧嘩をしたくないと思ったら、自分は嫌でも相手に合わせないといけない。そんな生活は、面倒だなと思ってしまう人が多いのです。
“亭主関白”“かかあ天下”といった、昭和の時代に流行った言葉は、もはや死語。どちらかが家庭の主軸になるのではなく、夫と妻は平等な立場で話し合い、家庭生活を営んでいくのが現代のスタイルです。
では、自分の希望をどう伝えたらいいのか
だからといって自分の思いや、やりたいことをパートナーに伝えられなければ、またストレスがたまりますよね。
では、どんなふうに伝えたらいいのか。婚活では、常に“私は”“私が”という会話をするのではなく、“あなたはどう思いますか?”の会話をしようと心がけるとうまくいきます。
これはどういうことかと言いますと、「私、結婚しても仕事は続けたいんです」と自分の主張をするのではなく、「結婚して、女性が仕事を続けることをどう思いますか?」とお相手に、お相手に尋ねてみる。
「ワンオペ家事、ワンオペ育児になるのは困ります」と言うのではなく、「家の事は、ご自身でなさっているんですか?」「家事はなにが得意ですか?」「子どもは好きですか?」「育児には、参加したいと思いますか?」そんなふうに、相手からの答えを引き出すようにすると、相手がパートナーに何を臨んでいるかがわかります。
もうひとつ、わかりやすい例でいうと、デートの待ち合わせに、相手が遅れてきたとします。このとき、自分の気持ちをそのままぶつけて、こんなことを言ったら相手はどう思うでしょうか?
「20分も待っていたのよ。私は、約束を守って時間どおり来たのに、なんで遅刻したの?」
相手は、「遅刻したことが悪い」と思っていても、カチンとくるでしょう。そうではなく、相手側に立った言いかたをする。
「遅かったから、事故にでもあったんじゃないかと、心配したわ」
この2つのセリフを言われたときに、遅れてきた相手はどう感じるか。それは、もうおわかりですね。
婚活における“3回の壁”の正体
前出のみさこさん同様、婚活がうまくいっていない方は、「お見合いから交際には入れるのに、1度か2度食事をすると、なぜか相手からお断りがくる」と、感じていませんか?
では、婚活“3回の壁”の正体についてお話ししましょう。
お見合いを1回と数えて、仮交際に入り、ファーストデート、セカンドデートの3回をうまく越えられると、その交際は真剣交際や結婚に近づく。これが“3回の壁”です
実はこれは、「スリーセット理論」という人間の心理からきています。人は、無意識に以下のような流れで、相手の印象を見極めています。
・1回目に会ったときには、見た目などで、第一印象を決める
・2回目に会ったときには、1回目に会った時の印象が正しかったか、再確認する
・3回目に会ったときには、その印象を確認して、固定する
つまり3回会うと、その人がどういう人なのかわかって、その人と自分が合うか、合わないかを決めているのです。
みさこさんの場合、1回目のお見合いでは、明るくて笑顔が魅力的。筋トレや海外旅行が好きというアクティブな一面もあるし、自分の意見をしっかり言う女性という印象をお相手は持つのでしょう。
そして、ファーストデートで2回目に会ったら、「私は、こういう人間です」「こういう結婚生活が理想です」と意見を言われて、最初の印象で抱いていた“自分の意見をしっかり言う女性”という印象がさらに強くなった。
さらに3回目で、“自分の意見をしっかり言う女性”という印象が固定してしまい、こんな女性と結婚したら、家庭の中のルールは彼女が作って、自分の意見は聞いてもらえないな、という気持ちが固定してしまった。
仕事をする場合、職場には定められたルールがあります。働くことで対価を得るのが仕事です。従いたくないルールがあっても、そこの社員である限りは、従わなくてはいけません。
でも、結婚は違います。2人で築く家庭のルールは、2人で決めていくもの。自己主張の強い相手、自分ルールを押し付けてくる相手とは、結婚したいと思わないのが、人間の心理なのではないでしょうか。
仕事から帰ってきたら、家庭の中では癒されたい。
婚活がうまくいかないと思っている人は、自分がどんな会話をしているのか、もう一度振り返ってみてください。
相手が自分と一緒にいたときに、どうしたら幸せを感じてくれるか? 自分が幸せになるためには、相手の幸せをまずは考えてあげることが、良好な関係を築いていく上で大切なことです。
鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。新刊『100日で結婚』(星海社)好評発売中。公式サイト『最短結婚ナビ』 YouTube『仲人はミタチャンネル』