1ドルが160円台に円安に振れると今度は140円台に。年末にかけてドル円相場は「読めない」状況だという。そして9月には1000品目、10月には3000品目が値上げ。「円安で物価高の時代は家計を見直すいいチャンス。前向きにとらえて乗り越えたい」。ファイナンシャルプランナーや家計改善コンサルタントといったお金に詳しいプロたちがとっている対策がこちら!
今までの節約の鉄則が通用しない時代になった
調査会社の調べによると、2024年10月の食品値上げ品目数が3000品目前後になるという。2022年1月ごろから始まった値上げラッシュ。消費者の「値上げ疲れ」が見られ、一度に購入する商品の点数が減ったり、安価なPB商品への変更、買い控えが進んでいる。
値上げの背景には異常気象などに伴う原材料の高騰や輸送費、食品トレーなど包装資材にかかる費用の増加などがあるとされている。
さらに物価に重しをかけているのが円安。ここ数年で急激に進み、今年7月には1ドル161円台をつけ歴史的な円安を記録、輸入品を中心としたあらゆるものの値段を押し上げている。
「現在、1ドル140円台となりましたが、円相場は今後も予測不能。変動に耐えられる家計管理が求められます」と話すのはファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さん。
「物価高にせよ、円安にせよ、家計には厳しい状況が続きますが、学びもあります。輸入品ではなく、国産品を選ぶ、海外旅行に行くならば、為替レートとの付き合い方を工夫するなど、お金の扱い方を見直す機会と考えてみてはどうでしょう」
ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんは、円安を機に“やめた節約”があるという。
「小麦が値上げしてパン屋さんのパンも非常に高くなりました。出来合いを買うよりも、手作りのほうが当然節約につながると思い、小麦粉を大量に買ってパンを手作りしていたんです。しかし、輸入小麦やバターの価格がさらに高騰してしまったので節約にならなくなってしまいました。モノによっては値上げ率が本当に激しく、今までの節約の鉄則が通用しない時代になったとも感じます」
と丸山さん。今ではもっぱら、業務スーパーの食パンを買っているそう。
「ただ、家計が厳しい、と買い控えばかりしていても疲れますから、この機会に家庭菜園などを始めてみると楽しく節約できるのでは。例えば、小ねぎやパセリは簡単に育てられて食卓にも彩りが出るのでおすすめですよ」
家庭菜園など、楽しみつつ節約につながる趣味を見つけるのもおすすめとのこと。
「最近は、ショッピングモールに行くのを控えています」 と話す、家計改善コンサルタントのぽこりんママさん。
「モール内にはテナントが多く入っていて、欲しいと思っていなかったモノにも興味が湧いてしまうんですよね。今は誘惑が多い場所には行かず、趣味のギターを弾くなど家の中で楽しむことを心がけています。そして、固定費の見直しなどできる対策をして、不安要素につながるニュースから一時的に距離を置くように心がけています」
円高に振れる兆しは見えず、物価の値上げは続く。お金に頼らず、心を豊かにする術を身につけることが、円安時代を生き抜くカギだ。
円安時代だからこその損をしない! 節約テク
ゴールド・ブランド品を売る!
「円安では、輸出産業にメリットがあります。一般家庭では関係ないと思いがちですが、円安だと、中古のブランドバッグや高級腕時計が高値で取引される傾向があります。若いころに買ったものの、タンスの中で眠っているブランド品を売るには良いタイミングなのでは」(風呂内さん)
特に日本人が丁寧に使っていた高級品は状態がよく「ジャパニーズ中古」と呼ばれ、海外から人気を集めているものもあり売りどき。また、ゴールドの価格も上昇傾向なので、金の含有量が多いゴールドのジュエリーも高値がついて売りどきだとか。断捨離もはかどりそう!
「Apple製品は持っているデバイスを売却したお金が新機種購入時の補てんになります。特にiPhoneは中古需要が高い!」(風呂内さん)
メリハリのある出費を心がける
輸入する原材料が値上がりしている“家電”も円安の煽りを受けている。
「家電本体に加えて、電気料金も大幅に上がっているので子ども部屋に設置する予定だったエアコンの購入を見送りました。夜は家族全員同じ寝室で眠り、昼間もエアコン1台で過ごすようにしています」(ぽこりんママさん)
「今あるものを大切に使い、可能な限り“今あるもの”で済ませることを心がけています。ただし、切り詰めるだけでなく、使うべきところは使う。満足度の高い消費への意識をより上げる時代です」(丸山さん)
円安は自分にとって“本当に必要な出費”を見極めるきっかけにもなるのだ。
現地通貨をやや円高のときに貯めておく
「近々外国に行く予定がある人は、為替レートを見ながら外貨預金を貯めるのもおすすめです。私は以前から、円高だと感じたタイミングでソニー銀行の外貨預金で外貨を買い足しています。Visaが付いたデビットカードである『ソニーバンクウォレット』なら、そのまま現地でのお買い物で使え、旅行時のレートよりも有利に支払える場合もあります」(風呂内さん)
ただし、渡航時の為替レートが外貨購入時よりも円高になっている場合は、クレカ払いがおすすめ。為替レートをチェックしてみよう。
海外通販はぜいたく品と心得て
円安ドル高の為替市場では輸入品の値上がりは避けられない。アメリカとの物価価格の開き、輸入コストの影響が直撃している。
「以前はアメリカに拠点がある『iHerb』という海外通販サイトが手頃で質もよく、保湿クリームなどを購入していました。しかし、円安で値段が倍以上になり、利用を断念。革製品も大きく値上がりしたので今は購入は控えています」(丸山さん)
貯蓄を分散させておく
円安ドル高という状況だと、ドル建ての「外貨預金」をすすめる声が多い。しかし円の預金の大半をドルに替えるのはNGとのこと。
「円安のときに日本円の預貯金だけでは不安になるかもしれませんが、外貨を買うには割高なタイミングであるともいえます。資産運用の基本は“分散投資”。今調子がよさそうな国や商品だけに集中するのではなく、分散させる持ち方がおすすめです」(風呂内さん)
海外旅行をするならポイントは貯めておく!
円安時はクレジットカードやポイントカードの使用で貯まったポイントを海外旅行で活用する技も。
「海外旅行も非常に割高感のある昨今。ハワイにあるPontaカードの提携店なら1ドル=100Pontaポイントで買い物や食事ができるんです。物価高の中、円安前とレートがかわっていないので、お得感がありますよね。そのほか、私は海外にもあるマリオット系列ホテルで使える『マリオットボンヴォイ』というポイントを日本で貯めて、ポイントの利用価値が高くなる海外旅行時に使用しています」(風呂内さん)
Netflixなどサブスクが値上げ解約も一考
「固定費の見直しは定期的に行っており、サブスクはわが家の支出の中で『なくなっても気づかないどうでもいい出費』だったのでほぼすべて解約しました。物価や円相場が不安定なときこそ固定費見直しのチャンスです」(ぽこりんママさん)
サブスクは海外資本のサービスが多く、よく見ると月々の支払いが値上げされているケースも! フル活用できていないなら、この機会に解約しよう!
今こそ早寝早起きスタイルに
エネルギー資源を海外輸入に頼っている日本の電気・ガスは円安の影響を大きく受ける。
「わが家では、光熱費を節約するために“早寝早起き生活”を基本ルールにしています。子どもたちには『お店の商品が値上がりしてるし、電気やガスも高くなっているので早く寝よう』と説明。日頃から節電の意識を高めています」(ぽこりんママさん)
ぽこりんママさん 家計改善コンサルタント・アドバイザーであり、2児を育てるシングルマザー。オフィシャルブログ「節約彩りLIFE*」やYouTube「ぽこりんママ」にて楽しくできる節約術や時短術を発信。
丸山晴美さん ファイナンシャルプランナー、消費生活アドバイザー。節約や貯蓄、資産運用などお金にまつわる著書多数。『知識ゼロでもまるっとわかるお金の基本』(宝島社)などマネー関連本の監修も務める。
風呂内亜矢さん ファイナンシャルプランナー。独身時代にマンションを衝動買いしてから、お金の勉強と貯蓄・運用を開始。現在はテレビや雑誌、YouTube「FUROUCHI vlog」などで情報を発信中。
取材・文/大貫未来(清談社)