フワちゃんの不適切投稿からもうすぐ2か月。まだ収まりきらない騒動の発端は「誤爆」によるものだったわけだが、起こってからでは取り返しがつかないのが誤爆。最小限に被害を食い止めるにはどうしたら? スマホやネット関連の事件、トラブルに詳しい高橋暁子さんに聞いた。
「誤爆は誰でもやってしまう可能性があるもの。さまざまな調査でもわかるように、複数アカウントが作成できるSNS、例えばXやインスタグラムなどでは、1人が4~6個ぐらいのアカウントを持つのは、若者では当たり前。メインアカウントの他、趣味アカ、学校アカ、特定の人にしか見せない裏アカ、鍵アカなどをいろいろ使い分けています。それをうまく切り替えられず、誤爆するのは当然。“ああ、やるよね”って感じで、むしろ経験がない人のほうが少ないぐらいです」
Xでの誤爆は、本来、言うべきでない公の場所でしてしまう失言のようなもの。現在では、多くの有名企業が公式アカウントを持っているものの、リスクを考えて参入しない会社もあるという。
読者の誤爆体験
「ある企業のSNSセミナーでは、登壇していた6人中4人が誤爆の経験があると回答していました。私自身も複数のアカウントを使っていますが、切り替えたつもりでも切り替わってないことがある。つまり、SNSを扱い慣れているプロでさえも、誤爆してしまうものなんですよね」(高橋先生、以下同)
一般人なら言わずもがな。さらに年齢とともに注意力も散漫に……! 『週刊女性』読者から寄せられた誤爆体験も、なんだか人ごととは思えない。
《本アカと趣味アカを間違えて、ややディープなゲーム投稿をしてしまい、ママ友にオタクであることがバレた。恥ずかしかった》
同じく趣味アカでの失敗談でも、もう少しマニアックでより厄介なケースも!
《アイコンは推しキャラのイラスト……そんな腐女子丸出しアカウントに、誤って家事の失敗談(しかも自宅キッチンの写真付き)を投稿してしまったところ、気づかぬうちに万バズに! ウェブニュースサイトからもDMで取材の連絡があったが、ひっそりとやっていたエロアカウントが盛り上がって身バレしても困るので、アカウント名は匿名で載せてもらいました》
“盛り上がって特定されると気まずい趣味アカウント”という存在もあるようだ。
《裏アカで義実家と夫への不満や恨みつらみをつぶやいたつもりが、素性が透けて見える本アカのほうに投稿。もちろんすぐに削除してまわりには気づかれなかったものの、肝が冷えた》
LINEの誤爆で離婚騒ぎも
ここまではXでの事件簿。Xでは本名を晒して投稿する一般人は少ないので、大事には至らないことが多いかもしれない。次の事件は、実名でのアカウントも多いインスタグラムで起きたものだそうだが……。
《酔っぱらってなんだかわからないうちに、インスタのストーリーに彼氏との営み動画を載せてしまった。すぐに削除したものの、3~4年たった今でも武勇伝として友達の間で語り継がれている》
同じく、これもインスタでの“うっかり、いつのまにか”パターン。
《眠るまで布団でインスタを眺める私。いつもは見る専門なのに、寝落ち寸前で朦朧として、謎の投稿をしてしまった。意味不明な自宅の汚部屋写真を誤爆……。もちろんコメントなしの無言。もう眠い時はインスタを見ません》
などなど、SNSの種類を問わず、多数の声が寄せられておりオソロシイ~!
「同じSNSでも、PC版だと一度ログアウトしてから別のアカウントにログインするのにひと手間がかかる。その分間違えにくい。画面もスマホより大きいので、小さなアイコンなども見やすく、視覚的にも気づきやすい。PCでログインする際のブラウザをアカウントごとに分けてしまうのもオススメの手です」
老眼でぽちぽちとスマホをいじっていると、すわ誤爆ということになりかねない。あえて大画面のパソコンでSNSを利用するのも手だ。
家族間でLINEのやりとりをすることも増えた。親子間や夫婦間での誤爆だからと油断はできない。俗に「誤爆離婚」などと呼ばれるケースもある。芸人の鳥居みゆきは、“もう離婚かな”というメールをマネージャー宛てに送るつもりが夫に送ってしまい、本当に離婚するはめに。LINEなどのメッセージの誤爆は、Xやインスタグラムの投稿以上に起こりやすい。
「とある調査によれば、LINEでの誤爆は一般人で4人に1人が経験しているそう。では、誤爆してしまったらどうするか。“相手が読んでいなかったら送信取り消し。すでに読まれていたら謝罪”が基本です」
アカウント特定のトラップに“カニ”
また誤爆してからの対応も大事だが、起こる前の対策も大事とのこと。
「誤爆してはいけない要注意人物には、名前を編集して“●●様”と重要人物であることを目立たせるとか、注意を促すように頭に絵文字を入れる。またトーク画面の壁紙を変えるとか、ひと目でほかの人と違う仕様にすることが重要です」
「裏アカは基本、バレます。偶然、表示されたら知人の場合はすぐわかりますし、アカウント名やキーワードで調べたらだいたい探せます」
テレビ番組で数回、芸能人や一般人のアカウントを探した経験を持つ高橋先生だが、毎回すべてのアカウントが特定できてしまったそう。
「企業が新入社員のアカウント特定のために大量のうまい棒を配布しておいて、“#うまい棒”を検索する手法も聞いたことがあります。特定したい相手の通り道に、驚く仕掛け、例えば道に立派なカニを落としておくなども。驚きのあまり“道路にカニが落ちていた”と投稿したところを見つけて特定することもあるそうです。そういったトラップはいくらでも考えられてしまうんですね」
大量のうまい棒に、道路にカニ─特定班の手法は恐ろしい限りだが、高橋先生は“SNSとは、基本的に見られたくない人に投稿を見られてしまうツール”だと言い切る。そこに嫉妬や恨みが絡めば、誤爆から炎上への道は一直線だ。
最後に、読者世代が誤爆を防ぐために最も重要なことは何だろうか?
「今は50代以上でも複数のアカウントを持つ時代。ヒカキンさんも言っていますが、SNSではネガティブな感情を吐き出さないで。裏アカなどは持たないのがいちばんです。少なくとも自分と紐づいたときに不利益になることは書かないようにしてください。今の若い人は、デジタルタトゥーの怖さを知っていて、失言などの誤爆が永遠に残ることに敏感ですが、大人世代ほど感覚的に鈍っています。人の悪口や愚痴などは、SNSに投稿するのではなく、飲みに行った席などで吐き出しましょうね」
取材・文/ガンガーラ田津美