左上から、目黒蓮、二宮和也、小池栄子、竹内涼真、山田涼介。左下から、有村架純、八木勇征、松本若菜、櫻井翔、水川あさみ

 夏ドラマもいよいよ最終回を迎え、反省会の時期がやってきた。今期のがっかり&よかった夏ドラマといえば? 

 30代~60代の男女500人を対象にアンケートを実施。この夏、よくも悪くも話題となったドラマをランキングで紹介しよう。

『がっかり&よかった夏ドラマ』ランキング

 まずは、がっかり夏ドラマから。

 5位は『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)。

 山田涼介10年ぶりの学園ドラマにして初の教師役!と意気込んではみたものの─。「内容がよくわからない」(京都府・32歳・女性)、「第1話で見るのを挫折した。ストーリーがわざとらしくつまらない」(秋田県・51歳・女性)、「1話を見たがまったく面白くない」(大分県・64歳・女性)と、1話脱落の声多数。

「山田さん主演で普通の学園ドラマにしたほうがよかったのでは?」と指摘するのは、ドラマウォッチャーのカトリーヌあやこさん。山田が扮するのは億万長者のCEO。正体を隠して教師となり、さまざまな問題を解決していく姿をオリジナルストーリーで描いた。

「AIの教師が出てきたりと近未来SF的な話で、設定が凝りすぎていて入り口のハードルが高くなっていた。トリッキーな学園ものなのに、結局泣きながら『先生!』なんてオチになる。山田さんは演技もすごくちゃんとしてるのに、作品に恵まれていない印象がありました

『がっかり』夏ドラマ4位&3位

 4位は『南くんが恋人!?』(テレビ朝日系)。

 ある日突然、恋人が15cmになって─。原作は漫画『南くんの恋人』で、今回で5度目のドラマ化。

「以前のドラマと比べると新鮮さがない。話の筋がなんとなくわかる」(岐阜県・65歳・男性)、「キャストがいまいち」(滋賀県・44歳・男性)、「初回を見て面白くなかったのでやめた」(静岡県・59歳・男性)との声が集まりランクイン。

1話を見てびっくりしたのが、ものすごくCGがしょぼいということ。令和の今なのに、武田真治さんが主演したころ(1994年)と変わってないチープさ。予算がなかったのか」とカトリーヌさん。今回は初の男女逆転バージョンで、主演を飯沼愛&八木勇征が務めた。

「男の子を小さくした意味があまりなかった。胸ポケットに入って心臓の鼓動が伝わってきたり、マグカップのお風呂に入って『見ないで!』なんて言ったりする定番シーンも男の子が小さくなると女の子に比べて意味がなくなってしまう。思春期のドキドキ感にちょっと欠けてた」

昭和と令和という、2つの視点から“コンプライアンス”が描かれて、幅広い世代の共感を呼んだTBS系のドラマ『不適切にもほどがある!』

 3位は『新宿野戦病院』(フジテレビ系)。

 前クールのヒット作『不適切にもほどがある!』(TBS系)に続く宮藤官九郎の完全オリジナル脚本ということで期待されていたものの─。「楽しみにしてたのにそれほどではなかった」(神奈川県・54歳・男性)、「小池栄子の英語とクセのある日本語にものすごい違和感を感じた」(東京都・64歳・男性)、「ごちゃごちゃしすぎ」(東京都・59歳・男性)、「ストーリーに共感しなかった」(埼玉県・34歳・女性)と、残念な結果に。

「クドカンドラマはいつも家族がテーマになっていて、クセのあるバイプレーヤーが脇をがっちり固める。そのファミリーに入り込めないと厳しい」とカトリーヌさん。今回ハードルを高めた要因のひとつが、小池栄子演じる女医のヨウコ・ニシ・フリーマン。

あの岡山弁交じりの英語についていけないとそこで脱落してしまう。ハマれる人はハマれるけれど、ハマれない人は初期からハマれなかった

『がっかり夏ドラマ』2位&1位

 2位は『ブラックペアン シーズン2』(TBS系)。

 主演は二宮和也で、世界的天才外科医の天城雪彦を演じた。6年ぶりの続編で話題を呼んだが─。「非現実的すぎ」(大阪府・55歳・男性)、「強引に韓国ネタを仕込んでたのが嫌」(東京都・49歳・男性)、「最終回でそれまでのストーリーがすべて潰れてしまった」(長崎県・66歳・女性)、「前作のほうが面白かった」(福岡県・54歳・女性)と、手厳しいコメントが目立つ。

「外科医が執刀しているとビシャーッと血が飛び散り、アラームがピコンピコンと鳴って天城先生が登場。神業的な手術をして終わる。リアリティーを求めて見ると違和感がある。劇場型医療ドラマで、はったり度が強めだった」とカトリーヌさん。韓国人研修医役でキム・ムジュンが出演。

原作にもあるエピソードだけど、それを韓国に舞台を置きかえて1話まるまる使っていた。韓国若手イケメンも入れておこう、というノリで、そりゃないよなっていう感がありました

目黒蓮主演の月9ドラマ『海のはじまり』(公式HPより)

 1位は『海のはじまり』(フジテレビ系)。

 目黒蓮が月9初主演、『silent』のチーム大集結と、鳴り物入りでスタートしたが。「週明けからつらく暗い気持ちになる」(富山県・57歳・女性)、目黒蓮が演技下手。死んだ恋人が性格悪くてムカつく」(北海道・67歳・女性)、「シリアスすぎ。面白さゼロ」(千葉県・52歳・女性)とワーストワンに。

「昔の月9は“こんな恋ができたらいいな”という憧れをもって見ていたけれど、最近は“いや、こんな恋は勘弁してほしい”という作品が多い。特に今回は全体的にホラーでした」とカトリーヌさん。

 目黒扮する夏は、かつての恋人が自分の子どもを出産していたことを知り─。

「黙って子どもを産みつつ、余命わずかとなったときに手紙を残している。亡霊に振り回される物語といった感じで、男性にとってはかなり怖い設定ですよね。毎週月曜に目黒蓮が泣くほど詰め寄られる姿を見るというしんどさがあった」

 続いて、よかった夏ドラマのランキング。晴れてトップ5入りしたドラマは─。

『よかった夏ドラマ』5位~3位

 5位は『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)。

 松本若菜扮するヒロイン・西園寺は、松村北斗演じる年下のシングルファーザーと偽家族として暮らし始める。

「明るくあまり考えずに楽しめるドラマ」(富山県・57歳・女性)、「働く女性が抱える気持ちやシングルで子どもがいる人の悩みをリアルに再現してくれた」(福岡県・47歳・女性)、「ハッピーな気分になれた。若菜さんの良さが引き立つキャスティングだった」(大阪府・57歳・女性)とのコメントが集まった。

「やっぱりシングルファーザーものはこういうのがいいよね、と思えたドラマ。松本さんのコメディエンヌぶりはさすが。松村さんも役どころを誠実に演じていました」(カトリーヌさん)

 4位は『海のはじまり』。

「暗いけど、目黒蓮がよい」(大阪府・65歳・男性)、「じっくり見られるストーリーで、テーマソングもよかった」(東京都・63歳・女性)、「考えさせられるドラマ。知らないところで自分の子どもが生まれて、男性にとっては残酷だと思った」(秋田県・51歳・女性)と、がっかり&よかったの双方でランクイン。

「脚本が丁寧に描かれていて、物語が大きく動くというよりは、感性の部分で見るドラマ。みんな繊細で、その傷つきやすい心をじっくりひもといていく。現代を象徴している。だからすごく刺さる人もいるのはわかる」(カトリーヌさん)

櫻井翔が玉山鉄二(左)、水川あさみ(右)と共演した7月ドラマ『笑うマトリョーシカ』

 3位は『笑うマトリョーシカ』(TBS系)。

 若き政治家を櫻井翔、その正体を追う記者を水川あさみ、秘書官を玉山鉄二が演じた。

「ストーリーがめちゃくちゃ面白い。裏で操っているのは誰か、ドラマの世界に引き込まれた」(千葉県・52歳・女性)、「主人公の最後まで諦めない行動力に背中を押された」(神奈川県・51歳・男性)、櫻井翔がハマっていた」(大阪府・58歳・女性)と高評価。

「櫻井さん演じる政治家が嘘くさく、彼を陰で操る者は誰なのか、最後まで引っ張られる。ちょうど自民党の総裁選が告げられ、小泉進次郎さんが出てきたりした。現実とリンクするところもあって、そういう意味でも面白かった」(カトリーヌさん)

『よかった夏ドラマ』2位&1位

 2位は『新宿野戦病院』。

「クスッと笑え、今問題になっていることに鋭い指摘をしていた」(秋田県・66歳・男性)、「先に進むほどキャラの良さが見えてきて少しずつ楽しく見られるようになった」(福岡県・35歳・男性)、「テーマが斬新で面白い」(東京都・62歳・女性)と、がっかり&よかったでトップ3入り。

「クセのあるキャラもずっと見てると慣れてくる。トー横キッズやガールズバーが出てきたりと、新宿の今のリアルが描かれている。笑えるだけでなく、社会的なテーマをクドカン流に斬っていた」(カトリーヌさん)

 1位は『ブラックペアン シーズン2』。

「緊迫感のあるドラマだった」(岐阜県・65歳・男性)、「期待を裏切らない内容でありながら、展開が二転三転し、最後までストーリーが読めなかった」(千葉県・50歳・男性)、「病院内のドロドロが面白かった」(三重県・64歳・女性)と、見事トップに輝いた。

「景気のいい音楽が鳴って天城先生が颯爽とオペ室に登場し、神業を見せ、『心臓は美しい』と決めゼリフを言って終わる。定番であるがゆえにシンプルで見やすい安心感がありました。メンバーも豪華で海外ロケもあり、さすが日曜劇場というゴージャスなドラマだった」(カトリーヌさん)

二宮和也(中央)が主演を務めた7月スタート日曜劇場『ブラックペアン2』

 今期の夏ドラマを改めて振り返ると、賛否もろもろありつつも、これといって目立ったヒット作は見当たらず。いずれも小粒な印象がある。

「夏ドラマはオリンピックのせいで苦戦したと思います。中継で1週空いたりして、込み入った設定だとそこで“あれ、これ何だっけ?”となってしまった。オリンピックに負けた。残念な結果でした」(カトリーヌさん)

 そこで気になるのがもうすぐ始まる秋ドラマ。注目の作品をカトリーヌさんに聞いた。

「日曜劇場の『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)は神木隆之介さん主演。野木亜紀子さん脚本、塚原あゆ子さん演出で、この方たちの作るドラマはいつも必ず面白いので注目しています。あとは柳楽優弥さん主演の『ライオンの隠れ家』(TBS系)、『民王R』(テレビ朝日系)に、『わたしの宝物』(フジテレビ系)は松本若菜さん主演で田中圭さんがモラハラ夫を演じるというのでSNSで盛り上がるのでは。夏よりは興味深いドラマがありそう」

 次クールに期待!

2024年『がっかり夏ドラマ』ランキング
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カトリーヌあやこ 漫画家&テレビウォッチャー。著書にフィギュアスケートルポ漫画『フィギュアおばかさん』(新書館)など

取材・文/小野寺悦子