障害者のダンス大会「ドレミファダンスコンサート」を鑑賞。『マツケンサンバ』の曲に合わせてポンポンを振る佳子さま(2024年6月16日)

「緑がきれいですね」

 秋篠宮家の次女、佳子さまは9月10日、母親、紀子さまと一緒に東京都内のデパートで開催された「草乃しずか日本刺繍展―源氏物語を花で装う」を訪れた。報道によると、この展覧会は、日本刺繍作家の草乃しずかさんが、平安時代の物語文学『源氏物語』に登場する女性たちをイメージして刺繍を施した訪問着や几帳など約200点を展示していた。光源氏の愛人、明石の君をイメージした訪問着の前で佳子さまは、前述のように声をかけた。

日本伝統工芸に想いを馳せる佳子さま

日本工芸会総裁として、東京・日本橋三越で開催された「日本伝統工芸展」を鑑賞した佳子さま(2024年9月11日)

 翌9月11日、佳子さまは、東京都内のデパートで開かれた「日本伝統工芸展」を鑑賞した。会場には、陶芸や金工など7部門546点が展示されていた。日本工芸会総裁の佳子さまは、日本工芸会総裁賞に選ばれた作品「鐵地象嵌花器」の前で立ち止まり、「細かい線の中に引き込まれるような思いがしました」などと感想を述べたという。

 この日は、紀子さまの58歳の誕生日だった。私は誕生日祝いの記帳をするため、永田町駅で地下鉄を下り、弁慶堀近くの出口から地上に出た。とても暑い日で、赤坂見附交差点の電光掲示板は「32度」を表示していた。どうりでやけに日差しもきつい。道行く会社員や通行人は日陰を選んで信号待ちをしていた。通称「青山通り」(国道246号の一部)に沿ってスーツ姿の私は、ゆるい坂道を小さいタオルで汗をぬぐいながら歩いた。

 巽門には7、8人の皇宮護衛官がいた。記帳に来た旨を伝え、名前などをチェックされた後、秋篠宮邸に向かった。セミの鳴き声がする。赤坂御用地は都心とは思えないほど緑が多い。玄関ホールで記帳を終え、宮家職員たちに挨拶をして秋篠宮邸を後にした。

《次女の佳子は、この一年も国内外でさまざまな公的な仕事をしてきました。そのひとつひとつに心をこめて携わり、頑張っている姿を頼もしく思っております。そして経験を重ねる中で、彼女らしいものの見方を育み、新たな視点を持ちながら自分の考えをしっかりと持って取り組んでいる様子、いろいろなことを考え、どのような仕事にも丁寧に臨んでいる姿を見て、刺激を受けたり学んだりしています》

 誕生日にあたり、宮内記者会から「佳子さまは国内外で多くの行事に出席されていますが、こうしたご活動や家庭でのご様子をどうご覧になっていますか」と、尋ねられた紀子さまはこのように綴っている。公的な活動に取り組む佳子さまから「刺激を受けたり学んだりしています」という、母親の高い評価を娘はどのように受け止めたのだろうか。

紀子さまに対し愛情深い答え

東京・中央区の日本橋高島屋で開催中の刺繍展を訪れた紀子さまと佳子さま。母娘2人で公務に臨むのは5年ぶり(2024年9月10日)

 2014年12月、20歳の成年を迎える前に行われた記者会見で、紀子さまについて質問された佳子さまは、次のように愛情深い答えをしている。

「母は、週刊誌などではさまざまな取り上げ方をされているようですが、娘の私から見ると、非常に優しく前向きで明るい人だと感じることが多くございます。幼いころは手紙にスマイルの絵を描いてくれたことが、よく印象に残っております」

 2003年8月、ご一家はタイを私的に訪問した。姉の小室子さんの後ろに隠れるようにして、いつも恥ずかしそうにしていた佳子さまの印象が強い。それがどうだろう。昨年のペルー公式訪問に続き、今年はギリシャを公式訪問したが、スピーチや立ち居振る舞いなどが実に堂々としていて、国際親善の大役を見事に務め上げている。

 2015年、結婚満25年に際してのご感想の中で紀子さまは、佳子さまとの微笑ましいエピソードを紹介している。

《佳子が小さかったとき、誕生日によく手作りのものを贈ってくれました。幼稚園のときだったでしょうか。私の誕生日に2つの贈り物を考えていたのですが、先に作った貝殻の贈り物を私に見せたくて、早めに渡してくれました。そのあと、誕生日にもうひとつの贈り物をもらい、お祝いを2回してくれた、かわいらしい思い出もあります》

 2006年9月6日、弟の悠仁さまが誕生した。このとき、佳子さまは学習院初等科6年生だった。紀子さまは、胎盤の一部が子宮口をふさぐ「部分前置胎盤」と診断され、予定日より約20日早い帝王切開での出産となった。

 佳子さまは、入院している紀子さまをほぼ毎日のように見舞っていた。入院中の母親を訪ねては、紀子さまのそばで学校の夏休みの宿題をしたり、留守中の家の様子やフィギュアスケートの練習について楽しそうに話してくれたと、紀子さまは記者会見で語っている。想像するだけで心温まる光景だ。

小さいころから母親が大好き

秋篠宮ご夫妻に付き添われ、学習院初等科入学式に出席した佳子さま(2001年4月)

 こうしてみると、佳子さまは小さいころから母親が大好きで、仲良しのようだ。9月10日、佳子さまは母親と一緒に展覧会に出かけたが、さぞかし楽しかったことだろう。

 今年の紀子さまの誕生日文書回答と、佳子さまの成年会見の発言には母娘の親愛の情があふれ、深い味わいを感じさせる。

 誕生日に際して紀子さまは、宮内記者会から「佳子さまの結婚や将来についてのお考えはいかがでしょうか」とも質問されている。これに対して紀子さまはこのように文書で回答した。

《今は成年皇族として、心を尽くして公的な仕事に携わりながら日々過ごしています。これからも健康に気をつけて、元気にすごしてほしいと思っております。そして彼女らしい生き方、幸せを心から願っています》

 紀子さまは、佳子さまの結婚については直接、触れず、「彼女らしい生き方、幸せを心から願っています」という表現にとどめている。成年皇族として、毎回、心を込めて仕事に取り組むことの大切さと、その延長線上に佳子さまの幸せな結婚が待っているのだという、母親の暗黙の教えがあるような気がしている。

 最初から最後まで、「結婚ありき」で突き進んでしまった姉、小室子さんの反省があるのかもしれない。佳子さまには、彼女らしい結婚や結婚後の生活に対する考え方があるはずだ。それを私は期待している。

<文/江森敬治>

えもり・けいじ 1956年生まれ。1980年、毎日新聞社に入社。社会部宮内庁担当記者、編集委員などを経て退社後、現在はジャーナリスト。著書に『秋篠宮』(小学館)、『美智子さまの気品』(主婦と生活社)など