10月26日(日本時間、現地は25日)、ナ・リーグ二冠王の大谷翔平投手(30)要する『ロサンゼルス・ドジャース』と名門『ニューヨーク・ヤンキース』による「ワールドシリーズ(以下、WS)」がいよいよ開幕する。
各テレビ局のニュースや情報番組、ワイドショーで連日にわたって“大谷フィーバー”に乗じたWS特集が組まれているが、中でも全試合を生中継するフジテレビはお祭り騒ぎの様相。高視聴率が望める“ドル箱”だけに当然といえば当然か。
一方で息巻くのはテレビだけではない。他のスポーツメディア、特にスポーツ新聞にとっても“売り上げ”が期待できるチャンス到来とばかりに、連日にわたって大谷、そしてドジャースの情報を海の向こうから伝えてきた。WS第1戦を終えた後の27日に発刊される各紙が「大谷」を“一面”で飾るのは必然だろう。
ところがWS開幕を手放しで喜べない事情もあるようだ。というのも、
「日本シリーズですよ。まさか日程が丸かぶりになるとは」と苦笑いするのは、在京球団を担当するスポーツ紙・野球記者。
WSと日程が丸かぶりの日本シリーズ
そう、10月26日にはWSと同じく、パ・リーグ王者『福岡ソフトバンクホークス』と、セ・リーグ1位の『読売ジャイアンツ』を破って下剋上を果たした『横浜DeNAベイスターズ』による、プロ野球の日本シリーズも開幕するのだ。
2024年の野球シーズンを締めくくる日本シリーズは毎年、秋季のビッグイベントとして「一面」が自動的に埋まる、スポーツ紙にとってもありがたい“ネタ”でもある。
それだけに平時以上に各社が人数を割いて現場に赴き、試合に向けて練習に励む両チーム選手、首脳陣、馴染みのスタッフや関係者への取材攻勢をかける。ところが今年、現場では逆に“こんな声”をかけられることもーー。
「でも、(一面は)大谷なんでしょ?」
もちろん冗談めかした口調ではあるものの、担当記者にはチクリと刺さる言葉のようだ。
日シリが「一面」とは断言できない葛藤
「スポーツ紙もWebニュースがメインとなりつつある時代ですが、今も昔も“一面”を飾ることは選手のモチベーションにもなっています。また球団とは日頃の付き合いもありますし、時に“特ダネ”を教えてくれる恩があるのも事実。
それだけに担当記者として日シリを推したいのは山々なんですが、今年に限っては“もちろん一面ですよ!”とは断言できないもどかしさと申し訳なさもあるわけで(苦笑)」(前出・記者)
なるほど、大谷が出場するWSとプロ野球の同日開催は、特に出場チームに思い入れのある担当記者にとって心苦しい現場取材にもなっているわけか。そんな記者の一存で翌日の“一面”が決まるわけもなく、どちらが“売れる”試合なのか、各社の判断も透けて見えそうだ。
ちなみに10月29日の日本シリーズ第3戦を中継するフジテレビ。午前中にWS、夜にはプロ野球と野球づくしの1日になるが、せめて日本シリーズの途中で「今日の大谷」を垂れ流すような無粋な演出をしてくれるなよ、と担当記者は思っているのかもしれない。