松本若菜 撮影/吉岡竜紀

「今回の役、怖かったです」

 と話すのは、今期ドラマでダントツの意欲作『わたしの宝物』に主演している松本若菜

俳優としての代表作になるかもしれないと

 モラハラ夫・宏樹(田中圭)に作り笑いする日々を過ごす専業主婦・美羽(松本若菜)が偶然出会ったのは、幼なじみ・冬月(深澤辰哉)。相思相愛だったふたりは懐かしさ、愛おしさから……。

 冬月の子を宿すも、ほぼ同時に冬月の死が報じられる。この命を守りたい、愛したい。美羽は、夫の子と偽って育てる禁断の“托卵妻”となり、その命を産み落とした……!

オファーに対しての迷いは、ありました。人間である以上、やっぱり(視聴者に)嫌われたくない気持ちはあるので。でも“生身の松本若菜が演じる美羽だったらどうだろう?”と考えていくと、だんだん“それでもいいか”と思えてきて。それで嫌われるなら本望だ、じゃないですけど(笑)。

 そんなふうに見てもらえるなら、俳優としての代表作になるかもしれないと思いました。今後どんな役がいただけるかはわからないですけど、きっと今回のような役はもうないかなと思いましたし。だから、このひとりの女性としてしっかり生きていこうと思いました

 その苦悩と俳優としての本気が伝わってくる。本作は『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』('14年)、『あなたがしてくれなくても』('23年)の三竿玲子プロデューサーが贈る第3弾

「1作前(『西園寺さんは家事をしない』)はいつもワクワクしている役だったので、真逆(笑)。でもそれは、この仕事をしている醍醐味。プロデューサーは別作品でご一緒しているときからお話ししていてすごく楽しかったですし、その方が何年も温めていた作品。

 3部作において“もしかしたら、いちばん難しい話になるかもしれない”とも。作品への愛情を感じるとともに、そこで私の名前を出してくれたことに何か意味があると思いましたし、すごい大役を任せてくださったなと思っています

 放送後、X(旧ツイッター)では世界トレンド1位に。物議の嵐となっている。

たぶん、想像しがちな“悪女”とは違う形になっていると思うので。ある意味、裏切っていきたいなと思っています。私は不倫に対して肯定はしませんが、こういうドラマがあってもいいんじゃないかとは思っています。

 (托卵妻は)実際にある話だとも聞いて、人ごとではなく“もしかしたら自分の近くにはこういうことがあるのかもしれない”という人間の怖さも見てもらえるようにしたいし、ひとつのエンターテインメントとして楽しめるというか、考えてもらえるようになったらいいなと思っています」

 デビューは'07年。'22年のドラマ『やんごとなき一族』での怪演が話題となって2年。今や、2クール続けての連ドラ主演だ。

ありがたい気持ちでいっぱいです。正直、スケジュール的には大変ですが、バラエティーなど番宣への出演も作品や自分を知っていただきたい気持ちがあるので。生活としてはそんなに変わっていないです。忙しくなったとしても、やることは同じ。とにかく一生懸命いただいた役をやりきることを念頭に置き、大事にしています

 本作は妻と夫、そして妻がかつて愛した男がもつれ合う、罪と愛の物語だが、演じる中で自身の結婚観について考えることも?

「あんな旦那は嫌だな(笑)。でも、あの冷めきった夫婦はきっと最初からではないはずですし、ふたりの中で歯車が狂い始めて、少しずつお互いに思っていたものがある日、爆発したんだと思っています。

 私の周りを見ていても、ケンカしたことがない夫婦って聞いたことがないですし、ずっと仲良しな夫婦が幸せかといわれたらそうじゃない部分もあるかもしれない。結婚っていうものに憧れていた10代、20代のころとは、また少し違う見え方になってきていますね(笑)

宝物、教えて!

ひとつしかないです。愛猫です(笑)。私、猫を飼ったのは初めてだったんですが、本当にいろいろなことを教えてくれるんですよね。呼んでも来てくれないと“対人間でもそうだよな”と思ったり。自分と相手の当たり前は違ったりするし、それを求めることも違うなと考えられるようになったのは猫と出会ってから。私自身の性格は変えられなくても、考え方は変えられるって思えました

 もんちゃん(正式名もずく、♂)は14歳。人間年齢で言うと74歳くらいになるという。

ある程度、将来のことを想像していかないといけない時期だとは思うんですが。最後まで彼の人生をまっとうしてもらうためにも、私は“お母ちゃん、頑張ってご飯代稼いでくるからね!”と、日々奮闘しています(笑)

『わたしの宝物』(フジテレビ系)

ドラマ『わたしの宝物』毎週木曜夜10時〜(フジテレビ系)放送中