「FA宣言した選手を含めて補強を進めていく方針は了承しています。こちらがお声がけした選手に関しては、ぜひ来ていただきたいと思っています」
11月20日に開催されたNPB12球団のオーナー会議で、FA(フリーエージェント)権を行使した選手らにラブコールを送ったのは、『読売ジャイアンツ』山口寿一オーナー(67)。セ・リーグ優勝をしながらも、日本シリーズ進出を逃した“球界の盟主”は兜の緒を締める構えだ。
今オフのFA市場の“目玉”とされるのは『阪神タイガース』大山悠輔内野手(29)、『福岡ソフトバンクホークス』甲斐拓也捕手(32)と、同じくホークスの石川柊太投手(32、以下敬称略)。戦力補強を図る球団による争奪戦が予想される。
中でも通算914安打、137本塁打を阪神の“主砲”大山の流出は、特に「伝統の一戦」を繰り広げる巨人への移籍は、阪神ファンにとって絶対に避けてほしいところ。今季年俸2億8000万円から、大幅アップの4年総額16億円規模の提示も報じられるなど、球団も必死に引き留めるのは当然だ。
片や「ぜひ来ていただきたい」と、大山獲得に動き出すと見られる巨人はというとーー。
大山入団でポジション問題が勃発
「なんでも“阪神が4年契約ならウチは5年”と、総額20億円以上の大型契約を準備しているともいいます。単年4億円の年俸とするならば、野手ではチームトップの坂本勇人(35)の6億円、岡本和真(28)の4億2000万円(いずれも2024年)に次ぐ金額。
確かに勝負強いバッティングは魅力的ですが、プレー以外でも“チームの顔”として貢献してきた坂本、岡本と比べてしまうと、20億円を出してまでジャイアンツに必要な選手なのか、と疑問に思うのが正直なところ」
と、在阪球団を中心に取材するスポーツライターも首を傾げる大山争奪戦。さらに念願かなって大山を迎えたとして、巨人に浮上するのがポジション問題だという。阪神で主戦場とするのは一塁手と三塁手だが、この2年間は前者に専念している。
一方、巨人の一塁を守るのは2024年の「ゴールデングラブ賞」を受賞した岡本、三塁にも同じく受賞者の坂本が君臨。遊撃手は守備のスペシャリスト・門脇誠(23)がレギュラーを任されていることから、坂本の再コンバートはなさそうだ。
つまりは現時点で、巨人には大山が守れるポジションはないということ。
「となると今シーズンも15試合でレフトを守った岡本のコンバートが有力ですが、ファースト固定で優勝しただけに阿部慎之助監督(45)も動かしたくはないところ。坂本の年齢を考慮した上で、三塁手での併用が現実的になりそう。
それで万一にも20億円選手が“飼い殺し”状態になったとしても、ジャイアンツとしては目的を達成したようなもの。現在のFA補強は、単に自軍の戦力補強の面だけではなく、ライバルチームの戦力を削る側面もあるとの見方も……」(前出・スポーツライター、以下同)
主力の“引き抜き”は巨人のお家芸
かつて長嶋茂雄(88)終身名誉監督が現場で指揮をとっていた時代、FA宣言した落合博満(70、中日ドラゴンズ)、広澤克実(62、ヤクルトスワローズ)、江藤智(54、広島東洋カープ)らセ・リーグ球団の4番打者を掻っ攫ってきた歴史がある。
近年でも丸佳浩(35、広島)、梶谷隆幸(36、横浜DeNAベイスターズ)、井納翔一(38、横浜)ら各チームの主力選手に大金を積んでいる。
「もちろん巨人だけの話ではなく、例えば西武(ライオンズ)からホークスに移籍した山川穂高(32)のようにフィットすれば万々歳。逆に結果を残せなかったとしても、脂の乗った時期をチームに費やしてくれたら脅威にはなり得ないわけで」
それでも主力選手を奪われたチームが、決して戦力ダウンするとも限らない。
「大山選手は人的補償と金銭補償が生じる“Aランク”。代わりに移籍した若い選手が新天地でブレイクして、新たなチームの顔に成長する可能性もあります。阪神にも思わぬ“掘り出し物”が転がり込んでくるかもしれないですね」
果たして大山が来シーズンをプレーするのは甲子園か東京ドームか、それとも?