ボディメイクで最凶女子プロレスラーを熱演。日本を飛び出し、世界で勝負をかける彼女に直撃インタビュー!「夢はタレントとクリエーターの二刀流」とゆりやんが語る自分自身の“未来”とは?
気がつけば110キロまで太っていた
今年の9月19日より配信され、日本のNetflix週間TOP10で3週連続1位を獲得。'80年代を熱狂の渦に巻き込んだ女子プロレスラーの抗争劇をリアルに描き、大きな反響を呼んでいるNetflixシリーズ『極悪女王』(独占配信中)。ご覧になり心奪われた読者もたくさんいるだろう。
中でも最凶のヒール・ダンプ松本を演じたゆりやんレトリィバァ(34)の熱演ぶりには目を見張るものがあった。
しかもダンプ役を演じるゆりやんの肉体は研ぎ澄まされ、まさにプロレスに生きるアスリートそのもの。
スポーツとは無縁に見えるゆりやんがなぜ、この肉体を手に入れることができたのか。
その秘密を解き明かす前に、そもそもゆりやんはなぜ、太ってしまったのか。11月、上梓されたばかりのゆりやんの著書『じぶんBIG LOVE!~ゆりやん体づくり本~』(集英社)によると、
「好きな人のためにやせようとしてフラれたらリバウンド。やせる動機は誰かのためばかり。自分のことをまったく大事にできていませんでした。太っていることでできるネタもあったし、健康に興味がないから、気がつけば110キロまで太っていました」
健康診断で脂肪肝であることも判明。さすがにまずいと思ったゆりやんは、テレビ番組で知り合った『スパイス アップ フィットネス』の代表でトレーナーを務める岡部友さん(38)の指導のもと、40キロのダイエットに成功。健康的な身体を手に入れた。
その矢先、
「ダンプ松本役のオーディションを受けないか」
というオファーが舞い込んできた。なんというタイミング。このオファーにゆりやんの心は大きく揺れた。
「リバウンドするだけなら、正直厳しいなと思いました。ところが友さんのトレーニングを続けながら筋肉や脂肪をつけていける。その方法だったら頑張れる。そう決心しました」
食事が8割、トレーニング2割のつもりで肉体改造
ダンプ松本役を見事、射止めたものの、そこからが試練の始まり。茨の道だった。
「'20年にオーディションに受かって撮影開始までの2年間で、トレーニングしながら体重を40キロ増やしました。ところがいくら食べても自分にとってちょうどいい体重(コンフォートゾーン)の75キロからなかなか太ることができません。体重を増やすために昼から1人で焼き肉を食べに行くこともありました」
体重を増やしたくても増やせないゆりやん。そうした時期が数か月間も続くとさすがに心が折れそうになったが、やがてコンフォートゾーンの苦しみを乗り越え、ゆりやんは目標体重に達する。
しかしプロレスラーの肉体を手にするためには筋肉を増やしながら体重を増やさなければならない。そのためのトレーニングは過酷を極めた。
毎日、自宅で筋トレを行い、プロレスの練習にもできる限り参加して汗を流した。
「プロレスラー役なので、まず弱かった体幹を鍛えました。人を持ち上げたりもするので背中や胸の筋肉を鍛えつつ、身体を大きく見せるために、肩や前ももの筋肉も大きくしていきました。
トレーニングは1日せいぜい1、2時間くらいしかできないけど、食事は1日3回食べる。しかも身体は食べたものでできているから食事が8割、トレーニング2割のつもりで肉体改造に取り組みました」
こうしてゆりやんは筋肉をつけながら、40キロの体重アップに成功したのだ。
トレーニングと食生活で作り上げたボディだが、撮影がクランクアップした後も健康的な生活を続けていると、自然に体重が落ちてきたという。どうせなら、作品の公開までに元の体重に戻ればとも思ったが─、
「撮影時に筋肉をたくさんつけたおかげもあって、そこから減量した今の身体のほうが、自分がいいなと思う体形に近づけたんです。お尻の丸みもしっかり出てきて、いい感じです」
今作でゆりやんが俳優魂を見せつけたのはボディメイクだけではない。落ちこぼれのレスラー、松本香がやがて実家とも決別。ヒールとして覚醒していく姿が今作最大の見せ場ではないか。
映画『孤狼の血』シリーズや『十一人の賊軍』を手がけた白石和彌総監督から、
「芸人をやっていて周囲に置いていかれた気持ちになったことはある?」
と聞かれたゆりやんは、
「芸人として、同期の中では出世頭といわれ、泥水をすするような経験はありませんでした。でもネットとかで不当にバッシングを受けることがしょっちゅうあり、そのたびに“今に見とけよ”と歯を食いしばってきました」
撮影は順撮り。ほぼシナリオの順番に行われたため、ヒールとして覚醒するまで、ゆりやんは4、5か月間かけてじっくり役作りをすることができた。
最凶のヒール、ダンプ松本に覚醒してからは、悪役を演じることが楽しくて仕方がなかったともいう。
「竹刀を振り回してあたり構わずしばき倒す。スイッチが入ると机の上の物を全部弾き飛ばして大暴れ。この快感は何物にも代えられません。イタリアンレストランに入って、フォークを手にした途端に手が震えたこともあります。
記者会見の席で白石監督を竹刀で思いっきりしばいたら、後でめちゃくちゃ痛かったと言われました(笑)」
こうしたスイッチの入り方は、お笑いやバラエティー番組でも経験したことはなかった。
「むちゃくちゃしてきたように見えて、今までボーダーラインを振り切ったことは恥ずかしくてありませんでした。
ところが『極悪女王』ではそんなことは言っていられません。とにかくもう全部さらけ出して、全員でぶつかっていった結果、スイッチが入るようになりました。こうした環境を整えてくれた監督やスタッフには本当に感謝しています」
『家庭の医学』のような本になってほしい
2年間かけて身体を大きくして、プロレスのトレーニングにも熱心に取り組んできた。撮影の期間中、ダンプ松本の人生を生きたといっても過言ではない。
実はそんなゆりやんも、ダンプ松本を演じるにあたり、当初かなりプレッシャーを感じていたという。
「ところが実際にご本人に会ってみるとおちゃめで優しい香ちゃん。でもじっくり話してみると、めちゃめちゃ熱い人でした。強い信念がなかったら、あそこまでできない。だから歴史に名を残すレスラーになれたんだと思います」
今ではLINEでやりとりをする間柄だという2人。今年の11月11日に行われたダンプの誕生会には、ゆりやんも参加している。
「ダンプさんの妹、全日本女子プロレスの後輩レスラーや当時、追っかけをやっていたファンの人たちも集結。ダンプさん行きつけのスナックに30人から40人集まり、とても温かいひと時を過ごすことができました。ダンプさんの歌うエヴァンゲリオンの『残酷な天使のテーゼ』が今も耳に残っています」
『極悪女王』で主演。過酷な肉体改造に成功し、異次元の演技を見せつけたゆりやんには素敵なご褒美が待っていた。前述した、自身のボディメイクの方法をまとめた著書の発刊だ。
「ダイエットって、やせることがすべてだと思っている人が多いんです。いつまでに何キロやせなきゃと思って、頑張って達成してもゴールを過ぎたら解放されて、ほとんどの場合リバウンドしてしまう。不摂生で“暴飲グ・マイウェイ”だった私自身もそうでした。
そんな私に友さんは、“自分が最高になったらそれでいい”“新しい自分になって、今までと違うステージで活躍できるように頑張ろう”と言って、科学的な裏づけのあるアプローチを教えてくれました。単なるダイエット本ではなく栄養学に基づいた食事、最新のトレーニング、美容にも役に立つみなさんにとって『家庭の医学』のような本になったら素敵ですね」
12月にはいよいよ活動の拠点をアメリカ・ロサンゼルスに移すゆりやん。『極悪女王』で注目を集め、世界進出の夢が今まさに叶おうとしている。
「アメリカのテレビや映画で活躍してハリウッドの大スターになるのが夢。クリエーターとしてもアカデミー賞を取りたい。そして大好きな人と結婚。最高の家庭も築きたい。やりたいと思ったことはムリだと思わず声に出して生きてます。全部叶えますのでよろしくお願いします(笑)」
すでに映画監督デビューの夢を実現しつつある、ゆりやん。10年後の夢を尋ねると、
「ロスのプール付きの豪邸に住んで、ロスと東京を行ったり来たり。大谷翔平さんのようにタレントとクリエーターの二刀流で活躍したい。その全部が“ゆりやんレトリィバァ”の世界ですから」
吉本興業の「最終兵器」から「世界のゆりやんレトリィバァ」になる日も近い!?
取材・文/島 右近
ゆりやんがトレーナーの岡部友さんと、まさに“二人三脚”で作り上げた理想のボディの秘密がここに! ゆりやんの幼少期からの体重の移り変わりを、プライベート写真とともに見つつ、トレーニング&食事法が学べる『じぶんBIG LOVE!~ゆりやん体づくり本~』(集英社)定価1700円+税