日本人の死因1位のがん。2人に1人がかかると言われているが、逆に言えば、2人に1人はかからないということ。“かからないほう”に入るためにはどうしたらいいか、がん専門医に話を聞いた。
がんの発症リスクをあげる食材
「近年、がんと食べ物に関する研究が進んだことによって、がんの発症リスクが上がる食材、つまり、“がんになりやすくなる食材”が徐々にわかってきました」
というのは、帝京大学福岡医療技術学部教授の佐藤典宏先生だ。どういう食材を食べているとがんになりやすくなるのか。まずは、毎食のように食べている人が多い主食に要注意だという。
「白米やパン、麺類には糖質が多く含まれているため、食べると血糖値が上昇しますが、血糖値が高い状態が続くと、がんが進行する可能性が高いです」(佐藤先生、以下同)
がん細胞にブドウ糖を与えると、細胞の増殖や転移に必要な運動能力が高まるというデータがあり、血糖値が上昇すると分泌されるインスリンも、がんを進行させることがわかっている。実際に、多くの研究で高血糖のがん患者さんは生存率が低いことが報告されている。
「がんのリスクを下げるために大切なのは、血糖値の上がりすぎを防ぐこと。そのため、私はがん患者さんに白米やパン、麺類などの主食を控えめにするようお伝えしています。血糖値を上げすぎないことはがんの予防にもつながるので、がんになっていない人にも、もちろんおすすめです」
糖質を控えるのはダイエットだけでなく、がんのリスクを下げるためにも大事なのだ。炭水化物のドカ食いや忘年会シーズンの“シメのラーメン”に気をつけたい。
主食に続いて、特定の肉類にも注意が必要だという。
「ベーコン、ハム、ソーセージ、サラミ、コーンビーフ、ビーフジャーキーなどの加工肉は、製造過程で発がん性のある亜硝酸ナトリウムなどの食品添加物が加えられています。世界保健機関の専門組織は、加工肉をタバコやアスベストなどと同じく『発がん性の十分な証拠があるグループ』に分類しているので、食べすぎないのに越したことはないと思います」
もちろん、ハムやベーコンを食べたからといって、すぐにがんが進行するわけではない。
研究によると、加工肉は1日の摂取量が50g増えると大腸がんのリスクが18%上昇することがわかっている。50gというのは、ウインナーだと1本20gとして2.5本、ハムだと1枚13gとして4枚程度。
たとえば毎朝のように、ハムエッグでハムを4枚食べていたり、ウインナーを2~3本食べていたりすると、食べていない人よりも約2割、大腸がんのリスクが上がるというわけだ。現在、がんの中でも大腸がんで命を落とす人が多く、女性では死因1位、男性では死因3位だ。毎朝食べるのは控えたい。
女性に人気のデザートドリンクは要注意
タンパク質やビタミン、ミネラルなど、身体に必要な栄養素を多く含んだ玉子。がんとはどういった関係があるのだろうか。
「海外で行われた研究では、玉子をもっとも多く摂取するグループともっとも少ないグループを比べて心血管病、心臓病、脳卒中、呼吸器疾患による死亡リスクに差はありませんでしたが、がんによる死亡リスクだけは、およそ20%高くなっていました」
ただ、この研究は世界中のさまざまな人種のデータだという。日本人ではどうなのか。
「2017年に発表された日本人を対象とした研究では、30歳以上の4686人の女性を15年間にわたって調べた結果、玉子を1日に1個食べるグループに比べて、1日に2個以上食べるグループでは、がんによる死亡リスクが3.2倍になっていました。
アメリカ人の研究でも玉子の摂取量が増えると、がんによる死亡リスクが高くなっているので、玉子は1日に1個までにするのが賢明だと思います」
玉子を原材料に多く使っているマヨネーズの食べすぎも要注意だ。
続いて乳製品。
最新の研究で2000人以上の大腸がんの患者さんを調べたところ、乳製品のなかでも脂肪分の少ない“低脂肪タイプ”の摂取量が多いグループは再発リスクが40%低下していたのに対して、一般的な乳製品だと摂取量が多いグループは、大腸がんの一種である結腸がんの再発リスクが60%増加していたという。
「同じ乳製品でも脂肪分によって真逆の結果が出ているので、乳製品のがんリスクは脂肪分がカギを握っていると考えてよさそうです。牛乳やヨーグルトを毎日摂るなら低脂肪タイプをおすすめしますが、生クリームやホイップクリームといったクリーム類やバターはどうしても高脂肪になりがちなので摂りすぎ注意です。
特に、チェーン展開しているコーヒーショップなどではホイップクリームがたくさんのった甘いドリンクがとても人気だといいます。なかには毎日必ず飲んでいる人や、ホイップを増量する人もいるとか。ホイップクリームを毎日のように食べすぎるとがんのリスクが確実に高まるので、ぜひ気をつけていただきたいです」
食事やおやつは365日、毎日の習慣。食材選びやメニュー選びなど、少し意識するだけでがんのリスクは変わる。摂りすぎ注意な食材と上手につきあっていきたい。
佐藤典宏先生●がん専門医。九州大学医学部卒、帝京大学福岡医療技術学部教授。著書に、がんのリスクを下げてくれる“抗がん食材”を使ったレシピ集『がんにも勝てる長生き常備菜』、『がんにも勝てる長生きスープ』(主婦と生活社)などがある。