「信頼関係が破綻しているのに、契約維持は受け入れられません。午前0時をもって専属契約を解除します」
NewJeansのメンバー5人が11月28日に緊急会見を開き、所属事務所「ADOR」とその親会社「HYBE」との話し合いの決裂を明らかにした。
経営手法にも要因が
BTS、SEVENTEEN、LE SSERAFIM、ILLITなど世界的な人気を誇るアイドルグループを抱え、今最も勢いのあるHYBEとNewJeansはなぜ対立してしまっているのか。韓国事情に詳しい甲南女子大学准教授の鴨下ひろみさんによると、
「NewJeansの生みの親である、ADOR前代表のミン・ヒジン氏がHYBEから業務上の背任などの疑いで告発されました。ミン氏がメンバーを煽って独立をするのでは、とHYBEが疑心暗鬼になった気がします。ミン氏をADORの代表に戻してほしいという5人の要求が受け入れられず、HYBEへの不信感が募っていったんだと思います。
HYBEの経営手法は小さな芸能事務所を買収するなどして子会社を増やすマルチレーベル制という今までにないものですが、ミン氏のような自己主張が強くて能力のある人をコントロールできなかった」
NewJeansがグループ名や楽曲を今後使えなくなる可能性はあるのだろうか。
「アーティスト名や楽曲の権利はHYBEにあります。NewJeans側は一方的に専属契約解除を主張していますが、HYBEが提訴したら当然、名前や楽曲の差し止めもあり得ます」(鴨下さん、以下同)
“奴隷契約”は改善でも…
過去に東方神起、KARAといった日本でも人気があったグループが事務所と裁判に。最近だとFIFTY FIFTY、オメガエックスが事務所に対し訴訟を起こした。なぜ韓国アイドルは事務所との裁判にまで発展するのか。
「韓国芸能界では事務所とタレントの専属契約期間が10年以上という“奴隷契約”が主流でしたが、東方神起の裁判で契約期間は最長で7年に改善されました。中小の事務所はコンプライアンスがしっかりしていなくて、アイドルへのセクハラやパワハラなど、訴訟が後を絶ちません。デビュー前の練習生時代は事務所がお金を立て替えていて、先行投資した分を回収しようと働かせるため、アイドルも疲れて不満が起きやすくなる。売れているアイドルは世界ツアーなどスケジュールは、より過酷なものになります」
そんな過酷な労働環境でも、アイドルを目指す若者は多い。
「若者が名声と多額の収入に憧れる背景には、韓国社会のひずみがあります。親の資産や所得が子どもの一生を左右することから、金・銀・銅・土に階級が分かれる『スプーン階級論』が広がっています。そんな階級を超えて唯一、夢を見られるのがアイドルですが、練習生の中から勝ち抜いてデビューしても売れる保証はありません」
K―POP界の改善すべき点はどこにあるか。
「ファンにサービスをして、事務所から言われたことをやっていると燃え尽き症候群になってしまったり、うつや自殺につながるので、アイドルの精神的ケアは必要です」
韓国アイドルの光の裏にある影はあまりにも濃い─。