2024年シーズンのパ・リーグをぶっちぎりで制しながらも、日本シリーズで敗退した福岡ソフトバンクホークスが早速の補強に動いた。アメリカから帰国してNPB球団への復帰を模索していた、上沢直之投手(30、以下敬称略)の獲得が報じられたーー。
昨シーズンに北海道日本ハムファイターズからポスティングシステムの使用を認められ、「夢」だったメジャーリーグ挑戦のために渡米した上沢。ところがMLBのマウンドに立てたのはわずか2試合と、年間を通してほぼマイナーで過ごすことに。
11月1日にFA(フリーエージェント)となり、今後のことについて『スポーツニッポン』の取材に応じると、
【今年1年、僕の中で思うところもあり、家族にかなり迷惑をかけました。家族にとっては僕が日本にいた方がいいと思いますし、野球の面で足りない部分が多いなと感じたので、現状は日本の方に気持ちは傾いているかなと思います。】
実力不足を認めつつも、“家族のために”日本復帰を示唆。帰国後には日ハム時代の元同僚・鍵谷陽平投手(34)の引退セレモニーに出席し、また球団施設を利用するなど、誰もが古巣に戻ってくると信じていた。ところが、その『スポニチ』が12月16日にソフトバンクとの契約合意を伝えたのだった。
「恩を仇で返すような人」
同紙によると、契約は4年の複数年で総額10億円規模。渡米前の年俸は推定1億7000万円だったことから、年間で8000万円の昇給を勝ち取った形に。現役生活が限られているプロ野球選手で、2025年2月には31歳を迎える上沢だけに、自分を高く買ってくれる球団への移籍は正解と言えよう。しかしながら、
《上沢、出て行く時も自分の意思でハムに全く利益置いていかない選択してる上に一年でこの裏切りやからな あまりに惨い》
《ルール違反してる訳じゃないんだけどさ、経緯が経緯だけに上沢にはガッカリしたよ》
《上沢よりは絶対稼げないけど 恩を仇で返すような人にはならないような人間になろうと思いました》
SNS上では“裏切り者”扱いされる散々な言われよう。たしかにポスティングによる譲渡金はわずか90万円ともされ、それでも背中を押してくれた日ハムに戻るのが道理とも言えるだけに、特にファンの怒りはごもっともだ。
しかし、パ・リーグ球団を取材するスポーツライターによると、決して「裏切り」とは言えない事情もありそうだ。複数報道では日ハムの“争奪戦”参加も伝えられたが、
「球団が提示した契約は、在籍時の年俸と据え置きの単年契約だったとも見られています。資金が潤沢なホークスとは違い、現実路線の経営をする球団だけにマネーゲームには参加せず、来るもの拒まず去るもの追わずのドライな編成ですからね」
“どうしても上沢が必要”ではない
さらに新庄剛志監督(52)の元でリーグ2位につけた今シーズン、原動力となったのがエースの伊藤大海(27)、10勝を挙げた加藤貴之(32)、そしてオリックスから移籍した山﨑福也(32)ら投手陣。さらに金村尚真(24)をはじめ、伸び代十分な若手投手も揃っている。
「伊藤を中心にベテランと若手がうまく噛み合っている投手陣の現状、さらに高額年俸を出してまで“どうしても上沢が必要”というチームではないと思います。当の本人も、日ハムからオファーを受けた時点で、“戻るならどうぞ”くらいの空気を感じ取って、逆にホークスに居場所を求めざるを得なかったのではないでしょうか」(同・スポーツライター)
それでも2023年、同じくポスティングで日ハムからメジャー挑戦した有原航平(32)が、帰国後にソフトバンクに移籍したように、システムの“穴”を疑問視する声も各方面で相次いでいる。
今回もネット上では“上沢式FA”などと揶揄されているが、ルール改正に本腰を入れる時期に来ているのは確かだろう。