12月9日、小倉智昭さんが膀胱がんのため自宅で亡くなった。
「小倉さんは1970年に東京12チャンネル(現・テレビ東京)にアナウンサーとして入社。軽快なトークで人気を博し、順調にキャリアを重ね、1999年からフジテレビ系の情報番組『情報プレゼンター とくダネ!』の司会を22年間務め、朝の顔として親しまれていました」(スポーツ紙記者、以下同)
身体に異変が起きたのは2016年、68歳のときだった。
「初期の膀胱がんと診断されました。このときは1週間で仕事に復帰しましたが、完治に至らず。2018年に膀胱を全摘出する手術を行うため『とくダネ!』を休んで治療に専念していました。2019年に再復帰を果たしましたが、番組は視聴率の低迷で2021年に終了しました」
その後、想定外の事態に直面することに。
「多趣味だった小倉さんは、本やCD、オーディオ機器など自身のコレクションを借りているビルに集めて“小倉ベース”という空間をつくっていたんです。老後はそういった趣味を楽しみながら過ごそうと考えていたんだとか。しかし、がん治療などで老後の蓄えが逼迫。人生設計の見直しを余儀なくされ、借りていたビルを解約し、所有していたコレクションの多くを処分しました」
この経験は、今年3月に日本経済新聞に連載していたコラムでも触れており、
《体が動くうちに海外旅行をすればよかった。(中略)老後になるとできないことがあまりにも多すぎる》
と、胸の内を吐露。
小倉さんの訃報後にこのコラムは再び注目を集め、SNS上でも共感を呼んだようだが……。
リタイア後も「新番組が作れないか」
「小倉さんはリタイア後の悠々自適な生活を考えながらも、仕事への意欲も持ち続けていたんです。特に“団塊世代に向けた新番組が作れないか”と真剣に考えていました」(制作会社関係者)
今年2月に刊行された社会学者の古市憲寿との共著『本音』の中でも、この“目標”について言及。
受験や就職など激しい競争に追われ続けた団塊世代が、年齢を重ねてもなお、競い合う現状を嘆き、
《同世代の人が心から共感できたり、面白がったりできる番組をやれたらなあってすごく思う。そういうものを面白くやれる自信はあるんです》
と語っていた。
がんに侵されながらも、老後の在り方を語り、同世代へのエールを発信し続けていた小倉さん。彼のアナウンサーとして“人に伝えたい”という情熱は、最後まで尽きなかったようだ─。