今年を彩ってくれたドラマ作品は? 女性1000人の答えを早速見てみると─。
社会問題を問いかける衝撃作
「不妊や代理出産、女性向け風俗など興味あるテーマがたくさん出てきた」(愛知県・34歳)、「黒木瞳演じる千味子が怖すぎてハマった」(大阪府・40歳)
5位にランクインしたのは『燕は戻ってこない』(NHK)。原作は女性の問題に切り込む桐野夏生。石橋静河演じる貧困女性がお金のために卵子提供から代理母出産をするというもの。不妊に悩み代理母を依頼する夫婦に稲垣吾郎・内田有紀を配役。義母役の黒木瞳など、出演者たちの怪演も話題に。ドラマウォッチャーの神無月ららさんは、
「とにかく出てくる人間全員の身勝手さがヤバかった(笑)。己の優秀な遺伝子をどうしても残したい基(稲垣)とその母・千味子(黒木)が、流産を繰り返して妊娠できない悠子(内田)に投げかける無神経な“子ども欲しいから代理母頼もう!”攻撃も、金欲しさに代理母を引き受けながら本能のままに男と寝まくって妊娠する理紀(石橋)も、全員ひどい。登場人物誰ひとり好きになれなかったですね(笑)」
とはいうもののそれも作品の一面で、出来栄えへの評価は高い。
「決して後味はよくなかったけど、私はこのドラマで代理母というシステムに対しての考え方がはっきりと変わりました。社会派ドラマとしての役割に加え、見た者それぞれの胸に小石を投げて、ドラマが終わった後も消えない余韻を残す、NHKにしか作れない良作だったと思います」(神無月さん)
NHKならではの挑戦作だったといえよう。続いたのはやはり同局のドラマで、
「架空の人物なのに会えなくなって寂しい」(東京都・30歳)、「生徒たちが変わっていく様子に胸が熱くなった」(千葉県・57歳)
大団円を迎えた『宙わたる教室』(NHK)が4位に。舞台は東京・新宿にある夜間定時制高校。そこに赴任してきた理科教師(窪田正孝)が科学部を立ち上げ、さまざまな生徒たちに可能性を見せていく─。
ドラマに詳しいドラァグクイーンのエスムラルダさんは、
「決してお涙ちょうだいの物語ではないのに、それぞれの登場人物が抱える事情や強い思い、変化し成長していく様に毎回泣かされました。キャストの演技も素晴らしい。特に生徒の柳田役を演じた小林虎之介くんはこれから絶対にブレイクすると思う」
と勢いのある俳優を青田買い。
大河のような重厚感
続く3位は、
「神木隆之介は天才だと改めて思った」(埼玉県・44歳)、「脚本家の野木亜紀子さんは本当に細部まで考えていてすごい」(神奈川県・48歳)
最終回を迎えたばかりの『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)がランクイン。石炭産業で栄えた長崎県・端島と、現代の東京を舞台に70年にわたる愛と友情、そして家族を描いた壮大なストーリー。神無月さんは、
「野木さんは、過去の名作『アンナチュラル』や『MIU404』でも知られるように、サスペンスと人間ドラマを巧みに描く腕前には定評がありますが、今作は端島(軍艦島)のドキュメンタリー要素も相まって、大河ドラマのような重厚感も加わったと思います。
すべてのキャラクターがちゃんと人生を背負っているので、家族を見守るような気持ちで没入できるのが野木ドラマの良さですよね。ぜひ大河ドラマや朝ドラも書いてほしいです」
と絶賛。
続いて、
「ヨウコ先生がカッコよすぎて同性なのに惚れた」(福岡県・37歳)、「未知のウイルスに関するくだりがリアルで、初期にコロナに感染したクドカンだからこそ描けるのだと思った」(静岡県・49歳)
2位にランクインしたのは『新宿野戦病院』(フジテレビ系)。朝ドラ『虎に翼』とキャストがかぶったことでも話題に。ユーモラスな会話を繰り広げながらも社会問題の核心を突いた同作。ドラマに詳しいライターの成田全さんは、
「クドカンらしい笑いとテンポがありながら、コロナ禍初期を思い出させ、そのときに多くの人が感じた不安や違和感を描いていました。クドカンが早い時期にコロナに罹患したため、普段の脚本とは違う思いが込められていたのだと思います」
「可視化されなかったこと」にスポット
栄えある1位は、
「毎週、待ち遠しかった」(山梨県・28歳)、「ミュージカルパートもハマった」(宮城県・60歳)
2位と同じく宮藤官九郎脚本の『不適切にもほどがある!』。略して『ふてほど』は今年の流行語大賞にもなったほど。昭和と令和をタイムスリップする教師(阿部サダヲ)のハートフルコメディー。
ランキングを見た成田さんは、
「宮藤官九郎脚本の作品が話題を集めた年だったと思います。ただクドカン脚本は推進力はあるけれど、ことジェンダーの問題となると描写が雑になるのが浮き彫りになってしまった感は否めないですね。
そうした問題も含め『可視化されなかったこと』にスポットが当たったドラマが多かったように思います。出産と格差問題を描いた『燕は戻ってこない』、学びを通じて自身の可能性を見つめた『宙わたる教室』、自閉スペクトラム症の弟と暮らす『ライオンの隠れ家』、独身女性とシングルファーザーが同居する『西園寺さんは家事をしない』などが入ったのは、さまざまな境遇にある人たちの生活や心情が丁寧に描かれたから。いい物語は人の心を育てるもので、多様な人々が描かれるドラマはさらに増えると思います。
そして昨年ドラマ化された『セクシー田中さん』の原作者・芦原妃名子さんの死が大きな影を落とした一年でもありました。原作をどう扱うのか、ドラマで何をどう描くのかについて話し合う重要度が増し、今後は、合議制のもと複数の脚本家が携わる『3000万』のような制作方法が増えるのではないでしょうか」
第1話のラストが「ホラー」
続いて記憶に残る「がっかり」部門の3位に選ばれてしまったのは─。
「暗くてボソボソ話していて、夏に見るものじゃない」(東京都・27歳)、「理屈っぽくて眠くなった」(滋賀県・33歳)
若年層を中心に残念票を集めたのは、若者に人気なはずの目黒蓮が主演した『海のはじまり』(フジテレビ系)。
大学時代の恋人・水季(古川琴音)の死を知った夏(目黒)が、水季の忘れ形見の海(泉谷星奈)から突然の来訪を受け「海のパパって夏くんでしょ? 夏くんのパパはいつ始まるの?」と告げられる第1話のラストが「ホラー」と話題に。神無月さんも、
「見終わった瞬間にこの夏一番のホラーが始まった、と戦慄を覚えました。このドラマでキツかったのは、非のない人が毎回、理不尽に責められるところ。水季の母・朱音(大竹しのぶ)に嫌みを言われる夏の恋人・弥生(有村架純)、水季を愛して生活を支え続けた同僚の津野(池松壮亮)からひたすら責められる夏。
“いや産んでたの知らんし、親を頼らずに津野くんの恋心を利用したのは水季やし、そもそも黙って産んだ子に実の父親とその住所を教えるのは卑怯では?”と」
続けて役者に同情する。
「ネット上の批判も水季に集中してしまい、演じた古川琴音さんも大変だったろうなと勝手に案じたりもしてましたね。脚本家は制作にあたり、予期せぬ妊娠と子宮頸がんについて啓発したかった、と語っていたそうですが、水季をもっと愛されるキャラにしていたら、何倍も伝わったんじゃないかな?と今でも思ってます」
キムタクありきはもう古い!?
続いて、
「危機感のない逃走劇」(福島県・39歳)、「キャストの無駄遣い」(北海道・50歳)
2位は、『Believeー君にかける橋ー』(テレビ朝日系)。木村拓哉を筆頭に、天海祐希、北大路欣也、上川隆也などの名優をそろえたが─。
「刑務所から脱獄する場面を見て、主演がよく見える役柄を決めてからストーリーや設定を後づけする、知名度や人気に頼ったキャスティング先行の作り方はそろそろ潮時かなと思いました。面白いドラマはキャラクターやストーリーに惹きつけられ、リアルな世界観と展開に驚いて、見た後に心に残る余韻が大事。それは配信ドラマが人気になっていることが証明していると思います」(成田さん)
キムタクありきはもう古い!?
「月9は明るくして」(広島県・50歳)、「救いがない」(沖縄県・30歳)
残念な1位に選ばれてしまったのは『君が心をくれたから』(フジテレビ系)。神無月さんは、
「昨年ラストのフジ月9『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ』が大コケしてしまった直後の今作、年も明けて今度こそ、と期待したのに……。
パティシエを目指して上京するも挫折、故郷の長崎に帰った失意の雨(永野芽郁)が、学生のときに好きだった太陽(山田裕貴)と再会して心を通わせた直後に太陽が事故で死亡、そこへ現れた謎の案内人(斎藤工)たちに、五感を差し出すのを交換条件にして恋人を生き返らせるストーリー。制作側は『無償の愛』というものを究極の形で提案したんだろうなというのはわかるけど……」
2018年の流行語にノミネートされた『おっさんずラブ』がリターンズとして1月から3月に放送されていたが、ベストにもワーストにも入らなかった。忘れられるのが早いにもほどがある!?