「正月太り」の経験についてのアンケートで、「正月太りを経験した」人は約8割。また、同調査でダイエットを始めたタイミングを質問したところ、正月前後からという答えが最も多かった(※)。
「毎年のようにお正月が終わると“太った”、“正月は食べすぎた”などの声は上がりますよね。正月太りなどの肥満解消は、運動より食べるものを意識することが重要です」
そう話すのは、医師で分子栄養学認定医の齋藤真理子先生。先生自身も、さまざまなダイエットに挑戦しては何度も挫折した経験があるそう。
自身の経験から考案したダイエット法
試行錯誤を重ね、齋藤式「満腹やせメソッド」を考案し、2か月間で健康的に6kgの減量を達成。このメソッドでは、内臓脂肪を効率よく落とすことができ、誰でも成功しやすいのだとか。
「男女10人の被験者に私の考えたダイエット法を3週間試してもらったところ、平均して体重が1・14kg、お腹まわりが2・24cm、体脂肪率は0・53%減少しました。しかも被験者の8割以上が『今後も続けたい』というほど簡単なんです」
やるべきことは3つ。
(1)MCTオイルを活用する。
(2)「満腹(かさ増し、置き換え)フード」を使い、糖質量を減らす。
(3)戦略的に間食をとること。
これらを実践することで内臓脂肪を無理なく減らしていけるという。
(1)MCTオイルを活用する
人間の活動に必要なエネルギー源は糖質だけでなく、実は脂肪を分解してできるケトン体という代謝産物によっても得られる。このケトン体をエネルギーにすることを「脂質代謝」といい、糖質ではなくケトン体をエネルギー源にする状態を「脂肪燃焼体質」という。
「内臓脂肪を減らすには、脂肪燃焼体質になることが大切。MCTオイルは脂肪代謝のスイッチをオンにしてくれるんです。一般的な植物油より分子構造が小さいので、素早く体内で消化され、脂質代謝の機能が呼び起こされるんです。すると体内の脂質を使ってケトン体がどんどんつくられる。ケトン体が増えると加齢により衰えたミトコンドリアが活性化してアデノシン三リン酸というエネルギーを生み出し、基礎代謝が上がってやせ体質になっていきます」
つまりMCTオイルをとるだけで一般的な糖質代謝に加えて、脂質代謝の二馬力で燃焼回路が働くようになるのだ。
「しかも糖質とMCTオイルを一緒にとると、糖質自体もエネルギーとして早く燃焼され、体脂肪になりにくいんです。糖質を徹底的に減らすダイエットよりもリバウンドしにくいですし、オイルをとって脂肪燃焼体質になれば、筋肉量を維持しながら体脂肪を優先的に減らせます」
さらにインスリン抵抗性を改善する機能があるといわれている。インスリン抵抗性とは、内臓脂肪が増えることによって、糖を脳や筋肉に運ぶというインスリンの働きが悪くなり、血糖値が上昇してしまうこと。必要な場所に届けられなかった血中の糖は脂肪に変換され肥満の原因となるが、インスリン抵抗性が改善されることで、脂肪がつく原因の1つである食後血糖値の急上昇をやわらげる効果も期待できるのだ。
「ただし最初は一時的な胃痛や、お腹がゆるくなることがあるので、空腹時を避けて1日の上限量は小さじ2分の1からにしてください。でも心配すべきはそのくらいで、肝臓の脂肪も内臓脂肪も減って大きな副作用はありません。体調を見ながら徐々に増やしていき、小さじ2分の1の量を1日3回とると良いでしょう。1食あたり大さじ1までなら増やしても構いません。少量でも身体がポカポカして代謝が上がった実感が湧くと思います」
無味無臭で幅広い食べ物に合うのも大きなメリット。
「スープやお味噌汁、サラダ、ドリンク、デザートなどあらゆるものに『かけオイル』をするのがベスト。玄米はしっとりとして、美味しさがアップしますよ。ドカ食いできないカレーなどに加えるのも良い。ただし発煙点が低く、酸化しやすいので加熱調理に使うのは控えましょう」
特に朝と昼にとるのが、エネルギーが有効活用され、ダイエットにおすすめだ。夜なら寝る1~3時間前までにとると、体脂肪の減少につながるという。オイルをかけることで満腹感が増し、糖質の過剰摂取も抑えられるので、正月休みから続くダラダラ食いも抑えられるかもしれない。
(2)「満腹フード」で糖質量を減らす
糖質をとりすぎれば余分な糖が脂肪に変化し、体内に蓄えられてしまうことから、無理なく糖質を減らすことも大切だ。ご飯やパンの量を減らした分、別の低糖質な食材で量を補う「かさ増し」フードと、主食を別の食材に「置き換える」という2本柱で取り組みたい。
「例えば『ラク鶏ひき肉ご飯』は作り方も簡単で、米1合を炊く準備をして、そこに鶏ひき肉200gを足して炊飯するだけです。それを3~4つに小分けにすれば作り置きにもなりますし、糖質は4割カットできます」
置き換え食材なら、バナナやサラダチキン、玄米が良い。
「バナナは白米に比べて100gあたり4割も糖質を減らせて、食後血糖値も上がりにくい。サラダチキンは糖質0を謳うものもあって、満腹感があり、高タンパク質なのもいいですね。タンパク質を豊富に摂取するとコレシストキニンという満腹感を与えるホルモンが十二指腸や小腸から分泌されるので、食欲も抑えられます」
玄米の糖質量は白米とさほど変わらないが、食物繊維が6倍あるため、食後の血糖値が上がりにくい。最初は白米1:玄米1の割合で作り、徐々に玄米の比率を増やすといいだろう。
(3)戦略的に間食をとること
間食をすると太るというイメージは間違い。むしろ空腹が続くと血糖値が下がり、その状態で食事をすると血糖値が急上昇し、余った糖が中性脂肪になり蓄積されてしまう。エネルギー源となる糖が減る、食後3~4時間で間食をとれば、太りにくい身体をつくることができる。
「空腹を感じたときに少量をこまめにとると血糖値が安定します。一番いいのは『齋藤流間食お味噌汁』です。発酵食品の味噌によって腸内環境が整い、鉄分とタンパク質によって貧血やめまい、頭痛の予防にもなります」
鍋の残り汁やレトルトの味噌汁で手軽にとるのもOK。
「ほかには食物繊維が豊富な茎わかめは1日15gを目安に。代謝を促すビタミンB群が豊富な、無塩のミックスナッツは1日手のひら1杯まで。70%以上の高カカオチョコレートを20~25gを目安にとるのもいいですね。チョコは食物繊維のほかにポリフェノールが多く含まれるのもうれしいところ。バナナもおすすめで、1本を5分の1に分けてこまめに食べるのがコツです」
とにかく続けることが大切。正月太りも焦らず解消!
※2021年GOFOODによる500人を対象に『正月太りとダイエット』に関するアンケート調査
齋藤流「間食お味噌汁」
<材料>
味噌…大さじ1
いりこだし(かつおだしでも可)…大さじ1
くず粉…大さじ1
お湯…200~300ml(お好みの濃さで)
<作り方>
(1)水筒にお湯以外のすべての材料を入れる。くず粉はあらかじめお湯(分量外)でといておけばダマになりにくい。
(2)お湯を水筒に入れ、かき混ぜる。
取材・文/植田沙羅