「うちのお風呂、1年半、お湯替えてません!」
という衝撃的なフレーズで始まる動画がSNSで拡散され、物議を醸している。
「動画では、“マコモ”という植物を発酵させた入浴剤を使った“マコモ湯”という入浴法が紹介されています。
投稿主によると、マコモ菌という発酵の力で雑菌を抑えてくれるそうで、お風呂のお湯を替える必要がないんだとか。むしろ、お湯を替えないほうが、お湯の質がよくなり、アトピーや肌荒れにも効果があるといった説明をしていました」(生活情報誌ライター、以下同)
動画では、1年半替えていないというお湯も映されているが、
「マコモの色なのか、お湯を替えていないことによる色なのか、黒く濁っています」
この動画を見た人からは、
《汚すぎて草》
《簡易ガンジス川》
《普通に汚い、臭いもヤバそう》
といった声がSNSで殺到。
パロディー動画を作る人まで出てくる事態となり“ネットミーム”と化している。
では、実際に“マコモ湯”は、投稿主が言うように身体にいいものか……。
マコモ菌自体は「身体への悪影響は少ない」
『のぞみクリニック』の院長で救急、感染症を専門とする筋野(すじの)恵介医師に聞いてみた。
「マコモ菌自体が身体に悪さをすることは、おそらくないと思います。
菌には、人間に感染するものとしないものがあり、例えば、鳥インフルエンザは、今後ウイルスが変異しない限りは鳥にしか感染しません。
マコモ菌が人間に感染をしたという話は聞いたことがありませんし、身体に悪影響は少ないと思います」
ただ、やはり問題なのは“お湯を替えていない”点だという。
「お風呂のお湯を1年半も替えていないと、かなりの雑菌が増殖していると考えられます。
その後、シャワーで身体を流していれば大丈夫ですが、流さずに出ると、皮膚にそういった菌が付着したままになるので、ニオイの原因となります。
さらに、それがタオルや服に付着すると、それも臭くなってしまいます」
皮膚に傷があった場合は、そこから雑菌が入って化膿したり、傷が悪化したりする可能性も考えられるという。
「雑菌を抑えてくれる」ことはない
「皮膚には常在菌があるので、そのバランスが崩れてしまうと、他の病気にもかかりやすくなってしまうことも考えられます。
最悪の場合、蜂窩織炎(ほうかしきえん)といって、傷口から入った菌によって片足がすべて腫れてしまう症状が出たり、糖尿病の人や、免疫機能が低い人は、菌が全身に回って高熱や意識障害が出ることもありえます。
そのため、お風呂のお湯は毎日替えて、清潔な状態で入浴するべきです」(筋野医師、以下同)
動画で説明していた“雑菌を抑えてくれる”という点については、
「基本的に、菌が他の菌を分解するということはありません。
例えば、インフルエンザに感染しているときにコロナウイルスが体内に入ってきたら、インフルエンザの菌がコロナをやっつけてくれるのではなく、同時に来たら同時にかかるだけ。
このように、菌同士は共存するものですから、雑菌がゼロになるということは考えにくいです」
適切な方法で入浴することが、健康への近道のようだ。