舞台『遺音』に出演する新里宏太、阿部大地、伊藤萌々香

 1月9日~12日まで、『下北沢「劇」小劇場』で公演が行われる舞台『遺音』。株式会社モンスターファームが製作し、同社所属の次世代タレントたちが戦時下の日本を舞台に、“明日がどうなるかわからない恐怖に向き合いながら、国のために戦う若者の葛藤を演じ、命の大切さを伝える”という作品。

2度の歌唱シーンがあった伊藤萌々香

 主演は人気漫画『弱虫ペダル』の舞台で水田信之役やミュージカル『ダイヤのA』で小湊春市役を演じた阿部大地。

阿部「戦時下の設定なので、ひとつひとつ当時の状況を調べながら、戦時中の人々の感情を想像しながら、辻褄を合わせていく作業が楽しくもあり、大変なことでもありましたね。実際に“死”について考えたり、非現実的なことに対し、“想像を膨らませていかないといけないね”と演者やスタッフのみなさんと話しながら、作り上げていきました」

 演者は10名でそれぞれに見どころが詰まっている。

阿部「全員に見せ場がある舞台になっているので、それぞれの演者の視点で物語を見ることができると思います。そうした目線で楽しめるのもこの舞台のひとつの見どころですね」

 舞台『東京リベンジャーズ-天竺編‐』で佐野エマ役を演じ、ダンス&ボーカルグループで活躍した伊藤萌々香は、阿部らを陰ながら支える健気な女性を演じた。劇中では2度の歌唱シーンも。

伊藤「アーティストとして活動していたのですが、そのときとは曲調や歌い方も全く違って、今回は童謡のような曲だったので、そこをどう表現するかは難しかったですね。ボロボロに泣いているシーンの直後に歌唱という場面もあり、そこはより難しかったですが、演出の保母海里風(かりぶ)さんから“涙の感情を引きずったまま、表現していいよ”とアドバイスいただいたので、できる全力を尽くしながら歌っています」

 阿部と伊藤のセリフの掛け合いでは、独特の間の取り方が印象的だったが、どのような稽古を重ねたのだろうか。

「もう1度必死に生きてみよう」

伊藤「実はそこまで話し合っていないんです。芝居に関してのアドバイスはお互いにしていたのですが、ふたりのシーンに関してはあまり相談していなくて、お互い感情ができ上がってきたタイミングで、セリフを発するという形を繰り返していました。海里風さんも“間を取ろうと気にしすぎないでいいよ”と言ってくださって、お芝居ですけど、よりリアルに近いテンポ感でできたなと思っています」

 ‘14年のドラマ『GTO』(フジテレビ系)の森野真役やアーティストとしての一面も持っている新里(しんざと)宏太は阿部と同僚だが、立場が上という役柄だった。

新里「同僚の阿部くんたちを戦争に駆り出す指示をする立場でした。同僚を殺すことに似た感情を持ち、だんだん迷いが生じ始め、一時は自死も考えてしまうほど、自分自身を追い込んでしまうという役柄。阿部くんたちとはまた違った“命の在り方”を考えさせられましたね。この舞台は冒頭のシーン以外は、1~2日の出来事の話なので、その短い間での感情の起伏をどう演じるかは何度も思考を重ねました」

 最後に演出の保母と主演の阿部から、これから観劇する方にメッセージが。

舞台『遺音』のビジュアルポスター

保母「題材が少し重めの舞台ではありますが、この舞台を見たお客さまが明日から生きていく中で“生かされているんだ”ということを意識したうえで、自分の命に向き合ってほしいなと思います」

阿部「日々過ごす中で、生きることがつらくなってしまうこともあると思います。生きることを諦めそうになっている方にこの舞台を見ていただき、一歩踏みとどまって“もう1度必死に生きてみよう”と思ってもらえるようなメッセージを届けたいです。
見に来てくださったみなさまがこの舞台をきっかけに“生きる”ことについて、少しでも考えてもらえれば嬉しく思います」