写真左から小栗旬、松本潤、吉高由里子、柴咲コウ

 

 『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』が1月から放送がスタートするも、SNS上では早くも離脱したという声が。1年間放送する長丁場の作品だけに、途中で挫折した人も多いのでは。2000年以降のNHK大河ドラマで、最終回にたどり着けなかった人が多いのはどの作品?

若い世代を意識しすぎて「滑ってる」

 新年を迎え、いよいよスタートした新大河。今年は横浜流星が主演の『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』で、蔦屋重三郎の波瀾万丈の生涯が一年にわたり描かれる。NHKは「笑いと涙と謎に満ちた“痛快”エンターテインメントドラマ!」と気勢を上げるが─。

最近のNHKは大河ドラマをリノベーションしようという意気込みを感じます。リニューアルして、もっと若い世代に見ていただきたいと頑張っちゃう。それで滑ってる

 と言うのは、漫画家でテレビウォッチャーのカトリーヌあやこさん。その指摘どおり、近年はNHKの意欲が空回りし、結果、視聴者を逃す例は多い。

 そこで、30~60代の男女500人にアンケート。2000年以降の大河で、途中で見るのをやめた作品は何ですか?

 5位は『鎌倉殿の13人』(2022年)で、24票獲得し、ランクイン。脚本は三谷幸喜で、主演を小栗旬が務めている。アンケートには、

「殺し合いが多く残酷」(福岡県・66歳・女性)

「大河の醍醐味が感じられない」(大阪府・66歳・女性)

 との声があがった。

三谷さんはものすごい歴史オタク。特にこの時代はどうしても書きたかったのでは。遡れば、『王様のレストラン』(フジテレビ系)の役名も鎌倉殿になっている。だから三谷さんにとって満を持しての作品だったはず

 とカトリーヌさん。なぜその思いは視聴者に届かなかったのだろう。

NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(公式HPより)

「主人公が地味、歴史が改変されてる、大河ドラマらしくない、というのが大河ドラマの三大がっかり要素。そういう意味では大河らしくないところがあった。“首チョンパ”なんて言葉が出てきたりして、違和感を感じた人もいたでしょう。

 ただ序盤コミカルな部分があったからこそ、権力を握って闇に落ちていく主人公の生きざまが浮き彫りになる。一年かけて描く意味がある。だから途中でやめちゃった人は見直せば評価が変わるかも」(カトリーヌさん、以下同)

 4位は『おんな城主 直虎』(2017年)で、29票獲得。脚本は『べらぼう』と同じ森下佳子で、主演は柴咲コウ

3位には“スイーツ大河”がランクイン

 アンケートには、

「途中、演出がむごすぎて見るのをやめた」(高知県・49歳・男性)

「話が間延びしてつまらない」(千葉県・51歳・男性)

 との声が集まった。

クランクアップでは「体力があり余っています。あと1年ぐらいできそう」と笑顔でコメントした柴咲コウ

「直虎が女性だったのではないかという設定で、まさに歴史改変もの。脚本の森下さんが『この作品は山田風太郎+ベルばら』と言っていて、アンケートにもあるむごい部分は山田風太郎テイスト。

 ベルばら部分は、柴咲コウさんがオスカルで、幼いころから彼女を支えて人生を共にする高橋一生さんがアンドレ。三浦春馬さんがフェルゼンで、柳楽優弥さんがアラン。ベルばら大河だと見ないおじさんもいるよな、とは思う

 拒否感を持つ視聴者がいる反面、一部熱狂的な盛り上がりもみせた。

高橋さん扮する小野但馬守政次が直虎を助けるために自分が敵役となって彼女に処刑され、そこで2人とも真逆のセリフを言い合う。このオスカル&アンドレパートはものすごくSNSで沸いた。結果、その年のTwitterトレンド大賞 エンタメコンテンツ・オブ・ザ・イヤードラマ部門第1位に輝きました

 3位は『光る君へ』(2024年)で、32票獲得。脚本は大石静、主演は吉高由里子で、昨年12月15日に最終回を迎えている。アンケートには、

「恋愛ものを大河ドラマで見るのは期待と違う」(神奈川県・55歳・男性)

「史実と相反していそうだった」(兵庫県・49歳・女性)

 との声が寄せられた。

女性向けの大河はよく“スイーツ大河”と揶揄されるけど、まさにこれはスイーツ大河だった。女性からするとすごくキュンキュンする大河だったと思う

 どうやら視聴者層によって受け止め方が違ったよう。

平安時代って大河ではあまり取り上げられないけれど、衣装やセットを含めてすごく美しく、存分に雅やかな空気が出てた。ただ女性的には受け入れられても、おじさんが排除された部分があった。そこで離脱した人が多くいたのかもしれません

 2位は『どうする家康』(2023年)で、40票獲得。脚本は古沢良太、主演は松本潤で話題を呼んだ。

1位は流行語も生み出した人気脚本家の実験的作品

 アンケートには、

「家康像と演技も見た目も離れすぎで、演出も寒くてついていけなかった」(大阪府・35歳・女性)

「数回見て興味を失った。内容が面白くないし、出演者も魅力がない」(福島県・58歳・男性)

「松本潤の顔が濃すぎてアップに耐えられなかった」(富山県・57歳・女性)

 とのコメントが。

これも歴史改変もの。背景をCGにしたことで、まずものすごい違和感があった。家康の側室が実は私は女性のほうが好きなんですというLGBTQ話があったり、現代的なエピソードが盛り込まれた大河ドラマだった。歴史的なドラマとして見ると、新しすぎたのかなという部分がありました

 物語の構成もまた独特だった。

後から“実はこうでした”というシーンがすごく多かった。実はあの時こんなことを誰かがしてて、こういうことだったんですと遡る。脚本の古沢さんは『コンフィデンスマンJP』を書いていて、まさにその手法です。でもやっぱり大河は大きな川で、上流から下流に時代が流れていかないといけない。川が逆流すると面白みが失われるということが初めてわかりました

長男の勘太郎の運動会で『いだてん』の扮装で走った中村勘九郎(写真左)、阿部サダヲ主演のヒット作『不適切にもほどがある!』(TBS系)は『いだてん〜』から着想された

 1位は『いだてん ~東京オリムピック噺~』(2019年)で、59票獲得。脚本は宮藤官九郎で、中村勘九郎と阿部サダヲがW主演を務めた。

「時代をまたぐドラマで話についていくのが面倒になった」(東京都・59歳・男性)

「ノリが軽すぎで大河を見てる感じがしなかった」(兵庫県・57歳・女性)

「見たい年代というものがある。近代は興味が湧かない」(兵庫県・66歳・男性)

「オリンピックに便乗して視聴率稼ぎをもくろんだだけ。視聴者を愚弄してる。このような愚作のために貴重な受信料を注ぎ込むのは許せない」(京都府・38歳・女性)

 と、コメントも辛口だ。

クドカンドラマのあるあるで、まず冒頭で入り込めないとずっと入れない。マラソンと東京オリンピック、時代をまたいで2つの物語が進行し、主人公が途中で変わるリレー方式というイレギュラーな形が、やはりとっつきにくかった。女子体育の成り立ちやスポーツから見る近代史など、テーマ的には非常に興味深いものだったけど

 平均視聴率は大河ドラマ史上初の1桁となり、歴代ワースト記録に輝いた。

あまりに視聴率が低くて、裏番組のテレ朝『ポツンと一軒家』が20%取ったという話も。三大がっかり要素のうち、主人公が有名人じゃないと大河らしさがないに当てはまった。大河って近代が舞台だと難しいといわれるけれど、まさにそれが表れた

「途中で見るのをやめた」大河ドラマランキング

 離脱のきっかけになるという大河の三大がっかり要素。それは新大河『べらぼう~』にも当てはまる。主人公の蔦屋重三郎は江戸時代の浮世絵版元で、今でいう出版人だというが。

まず主人公が有名人ではない。さらに合戦がないと、大河ではかなりのマイナスポイントになる。NHK自身が蔦屋重三郎のことを“江戸のメディア王”“トップカルチャーの礎”と表現したりと、カタカナを使って若い層に訴えていて、そこですでにヤバい空気がぷんぷんしてる

 新大河は視聴者の心をつかむことができるのか─。

取材・文/小野寺悦子

カトリーヌあやこ 漫画家&テレビウォッチャー。著書にフィギュアスケートルポ漫画『フィギュアおばかさん』(新書館)など