今から50年前は死亡原因の第1位だった結核。医療の進歩で薬を飲めば完治できるようになったが、それでも2023年の新規登録患者数は1万人を超え、死亡者は1587人を超えている。そして2024年には、5月に島根県で36人、10月に福島県で34人、11月には静岡県で24人の集団感染が確認されて、大きなニュースとなった。
「結核を昔の病気だとあなどってはいけない」と感染症の専門医である佐藤昭裕医師(KARADA内科クリニック院長)は警鐘を鳴らす。
佐藤先生によると、結核にかかりやすいのは60歳以上の高齢者が7割ということだが、お笑い芸人の箕輪はるかさんは29歳、タレントのJOYさんは25歳で発症。高齢者に多いが、誰もがかかる可能性はあるというわけだ。
“え~っ、なんでオレ?”
お笑い芸人のつぶやきシローさんの結核が判明したのは、今から14年前の40歳のとき。それまで大きな病気をしたこともなく、まさに青天の霹靂だったそう。その時の体験を語ってもらった。
「テレビ番組の企画で、人間ドックを受けたんです。オレはどの検査でもAで“やっぱ、健康なんだ”と安心していたら、最後の最後で“結核”だと発表されてさ。みんな引いちゃうし、オレもパニクって、死んじゃうのオレは? 収録中だけど、笑えないですよ。なんでオレがぁ~~。って。20歳からタバコは吸っていたけれど、どこも悪くなかったんだから。自覚症状なんてまったくなかったですよ」
結核=死、隔離のイメージがあったつぶやきさんはここに座っていていいのか、と収録中スタッフの様子をうかがっていたという。
「幸い早期発見の『遺伝子レベルの結核』でね。初期だから、結核に感染はしているけれど、発症はしていなかったんです。発症していないから、人にうつすことはない。そりゃあそうだよね、検査の結果が出て、スタッフはそれを承知で、番組を撮っているわけだからさ。もし人にうつすとわかれば、結果が出た時点で、すぐに隔離されてしまいますもんね」
番組では、喫煙の身体への悪影響も説かれ、禁煙サポートのためのニコチンパッチが紹介された。
「僕も貼ったほうがいいですかねなんて言ってたら、お医者さんに“あなた、死にますよ”と。ニコチンパッチなんて貼ってる場合じゃないだろって感じですね。目が怖かった~(笑)。あれから今日までタバコは1本も吸っていない。すっぱりやめましたよ」
すぐに抗結核薬を飲む治療が始まった。人に会っても問題はないから仕事に影響することもなく、食事も普通にとり、お酒も飲める。
「毎朝10錠くらいの薬を飲みました。絶対に飲み続けるようにって医師に強く言われたから、それだけは守った。最初は薬のせいでオレンジ色のオシッコが出て。びっくりしたけれど、慣れました。そのころ、たまたま長期のロケがあり、ホテル暮らしをしていたから、1人で部屋飲みするようになってね。結核って痩せて弱々しいイメージだけれど、タバコもやめたしアルコールで太りました(笑)」
朝は発酵食品をとって免疫力UP
薬をまじめに6か月間飲み続けて完治した。初期だったこともあるが、早期発見・早期治療が大切だと身をもって実感したという。
思いがけず大病を経験し、現在は53歳を迎えるつぶやきさん。身体への意識も変わったのか。
「家族で、結核になってる人はいないし、どこかでうつったのかなあ。とにかく免疫力を高めなければって思いました」
身体にいいものをしっかりとるように心がけている。「朝は納豆に刻みネギをたっぷり。たれは使わず、その代わりトクホマークのキムチと生搾りのエゴマ油、『ヨード卵・光』の生卵を入れてよくかき混ぜ、ご飯にかけて食べてます。みそ汁代わりはカップラーメン。締めは梅干し」
朝からカップラーメンとは驚きもあるが、好きでやめられないと笑う。
「他のものは身体にいいものも食べているからプラスマイナスゼロかななんて。好きなものを食べないって、ストレスじゃないですか。マイナスにならなければいいと思うんですよ。そろそろ足腰が弱くなってくる年齢だから、移動は自転車で。電車に乗る時は立っているし、エスカレーターは使わない、など意識して身体を使っています」
今でも結核で亡くなる人はいるものの、早期発見であれば薬で治せる。免疫力を高めて、予防することが大事だ。
取材・文/水口陽子