90年代ごろには、ドラマのジャンルのなかでもとりわけ人気の高かった恋愛ドラマ。だがオワコン化しつつあるのかもしれない。実は今期(1月期)、ある異変が起きている。
それはTBSの火曜22時枠「火曜ドラマ」が、恋愛ものではなく医療ものを放送していることだ。
恋愛ドラマで固定されていた火曜ドラマに異変
今期は芳根京子(27)主演の『まどか26歳、研修医やってます!』が放送されているのだが、「火曜ドラマ」は長らく恋愛ドラマで固定されており、恋愛以外のジャンルが放送されるのは5年以上ぶり。
2019年10月期の『G線上のあなたと私』以来、ずっと恋愛ドラマを放送し続けていた「火曜ドラマ」が、今期はその“こだわり”を捨てたことになる。
「火曜ドラマ」といえば、2016年10月期の新垣結衣と星野源主演の『逃げるは恥だが役に立つ』が社会現象化するほどの大ヒット作となり、2020年1月期の上白石萌音と佐藤健の『恋はつづくよどこまでも』や、2020年7月期の多部未華子と大森南朋の『私の家政夫ナギサさん』など、恋愛ドラマでヒット作を量産していた枠だ。
「『逃げ恥』ドリームをもう一度!」とばかりに、恋愛ジャンルで固定していたのだろうが、ここ数年はヒット作を出せておらず、コケてしまう作品が目立っていたのも事実。
TBSもようやく恋愛ドラマの需要が低下していることに気付き、今期は恋愛ものから医療ものにスイッチしたのではないだろうか。
医療ドラマの胸キュンシーンに好意的ではない声が多数
『まどか26歳、研修医やってます!』はタイトルのとおり主人公が研修医。働き方改革で急激に変わってきている医療現場に戸惑いながらも、同期の仲間たちと励まし合って成長していく医療ドラマとなっている。
とはいえ、恋愛要素を完全に排除しているわけではなく、たとえば第1話では主人公がイケメン指導医から点滴のレクチャーを受ける際、ふいにバックハグのような体勢になるという胸キュンシーンもあった。
しかし、このシーンを報じたニュースのコメント欄には、次のような好意的ではない意見が多かったのだ。
《ただしイケメンに限る、ってやつだよね》
《はいはい。ダンナや彼氏以外にしてほしいおばちゃんが多いのね。こんなイケメンはいないから、その辺のブサイクにしてもらってください》
《イケメンじゃなくて、ブサメンだったら即セクハラ相談窓口にかけこんだだろうし、 (中略)オレカッコいいから許されるダロだったら、チャラすぎてウザいし、急に冷めたドラマ》
なかば強引にねじ込まれたキュンシーンに辟易とした視聴者が続出した模様。いずれにしても恋愛要素はあまり求められていないのかもしれない。
6年半ぶりに恋愛ドラマを復活させたが
恋愛ドラマのオワコン化は、TBSの「火曜ドラマ」だけでなく、フジテレビの月曜21時枠「月9」にもその傾向が現れている。
「月9」と言えば鈴木保奈美と織田裕二の『東京ラブストーリー』(1991年)、山口智子と木村拓哉の『ロングバケーション』(1996年)、松嶋菜々子と堤真一の『やまとなでしこ』(2000年)といった数々の大ヒット恋愛ドラマを生み出してきたフジの看板ドラマ枠。
しかし、恋愛ドラマの視聴率が取れなくなっていったため、2017年1月期の『突然ですが、明日結婚します』を最後に、その後何年間も恋愛ドラマは作っていなかった。
そんな「月9」で6年半ぶりに恋愛ドラマ復活となったのが、2023年7月期の『真夏のシンデレラ』。フジとしては「月9」で恋愛ドラマを放送して黄金期を築いていたため、その過去の栄光にすがりつき、取り戻したかったのだろう。
けれど、森七菜と間宮祥太朗の『真夏のシンデレラ』以降、2024年1月期、永野芽郁と山田裕貴の『君が心をくれたから』、2024年4月期、広瀬アリスと眞栄田郷敦の『366日』と恋愛ドラマを投入したが、3作ともすべてコケてしまった。しかもヒットするどころか酷評されることも少なくなかったのだ。ちなみに『366日』後となる2024年7月期以降、恋愛ドラマは作られていない。
恋愛ドラマの大ヒット作は『silent』で止まっている
5年以上も恋愛もので固定されていた「火曜ドラマ」が、今期は医療ものを放送しており、一昨年に恋愛ものを復活させた「月9」は、また恋愛ドラマ離れしつつある。
ちなみに今期の民放GP帯のドラマでは、川口春奈(29)主演のリーガルラブストーリー『アンサンブル』(日本テレビ系)や、比嘉愛未(38)×岩田剛典(35)主演のラブサスペンス『フォレスト』(テレビ朝日系)あたりは恋愛要素を押し出している。だが、別のジャンルと恋愛要素を掛け合わせているため、純然たる恋愛ドラマとは言えない。
――これがドラマ界の現状なのだ。
近年で恋愛ドラマの大ヒット作として思い出されるのは、2022年10月期に川口春奈主演で放送された『silent』(フジテレビ系)だが、これももう2年以上前の作品。
やはり恋愛ドラマ自体の求心力や需要が徐々に薄れ、オワコン化しつつあるのかもしれない。