引退を表明した中居正広とスポンサーの撤退が相次いでいるフジテレビ

 中居正広の『解決金9000万円女性トラブル』は、ついに本人を芸能界引退に追い込み、そしてフジテレビ存亡の危機を招くことになった。

 トラブルに関して、フジテレビの局員が関与していたという報道が出た際、同局は即座に否定。1月17日に開かれた会見で、港浩一社長は第三者委員会を立ち上げ、調査するということを強調し、記者の質問にはほぼ“無回答”だった。また、他局のテレビカメラを入れず、週刊誌やネットメディアを排除したことで多くの批判が集まっている。

「とても看過できる話ではない」

 フジテレビの一連の対応と姿勢に多くのスポンサーが反発し、CM放送差し替えを決めた企業は75社以上に。公益社団法人ACジャパンの公共広告への差し替えは350本以上という、まさに異常事態だ。

「昨年12月に第一報が報じられた時点では、中居さんはもちろん、フジテレビ関係者は大きな騒動になるとは微塵も思っていませんでした。彼らだけでなくそう考えていた人は多いです。それは示談金が支払われていて、トラブルはすでに解決していると聞いたから。しかし、『週刊文春』の続報でトラブルの中身が明らかになり、“解決しているとはいえ、とても看過できる話ではない”となりました。新聞、テレビも一斉に報じるようになり、中居はもちろん、関与したフジ局員に何らかのペナルティを課すべきだという世論が高まりました」(キー局報道記者)

 騒動を受けて、フジの株主である米投資ファンドのダルトン・インベストメンツと関連会社が、フジテレビの親会社であるフジ・メディア・ホールディングスの取締役会に書簡を送付。トラブル調査のため外部の専門家で構成される第三者委員会を設置するよう求めたことで、状況は大きく動くことに。

「ダルトンに右倣えとなる株主も出てきましたし、当然スポンサーも、“これはまずいことになる”と思ったでしょう。最近は企業に直接クレームが行きますから、撤退しようと考えるスポンサーが出てくるのは当然です」(広告代理店社員)

「番組が制作できなくなる」

 震災などが起きた時に、ACの広告が流れるのはよくあることだが、今回は事情が異なる。

「震災などの際にスポンサーの事情で広告を差し替える場合はスポンサーフィー、つまり広告料の返還をテレビ局に求めることはしませんが、今回は返還を求める企業が多く、揉めていると聞きました。出演タレントの不祥事で番組スポンサーを降りたり、差し替えたりすることは結構ありますが、そんなときでも“広告料を返還しろ”とはならず、次回に値引きするくらいなのですが、今回は番組でなくテレビ局に対してですから、金額は相当なものになります」(同・広告代理店社員)

 スポンサーがCM出稿を取りやめ、広告料の返還を求めていることで、次に何が起こるかというと……。

「番組が制作できなくなる可能性が大きいです。これから改変期を迎えて、局の営業や代理店が動かなければなりませんが、それができない。放送からだいたい2クール前くらいの交渉でスポンサーや広告料が決まりますが、それもなしです。新番組はもちろん、放送中の番組の制作費が捻出できなければ、放送継続も難しくなります」(キー局プロデューサー)

NHKが報じた、フジテレビ港浩一社長の謝罪(NHK公式Xより)

 予定していた新番組が制作中止となれば、最悪の場合は決まっていた出演者に違約金を支払わなければならない状況もあるという。そして、さらに不安視されているのは、騒動が収束した後、スポンサーが戻ってくるかどうか。キー局の元幹部はこう語る。

「テレビ放送というのは、もともとCMを流すために考えられたもので、それだけでは見てもらえないから番組をくっつけたわけです。テレビ全盛のころは、自社のCMを放送してもらいたいスポンサーが局に列を作っていました。当時の営業はそれを捌くだけでよかったのですが、今は逆です。テレビCMを流さなくても、コーラや醤油などの定番商品はいまさら宣伝しなくても売れますし、売り込みが必要な新商品にしても、宣伝ツールはほかにいくらでもあります。テレビでCMを流すスポンサーは、局と長年の付き合いがあって、広告費に余裕があるところぐらいでしょうね」

 若い人向けの商品を開発しても、その世代がテレビを見なくなっている以上、CMの効果は望めなくなっており、本音ではテレビCMを止めたい企業も多いという。

 冗談ではなく、フジテレビがなくなる可能性がゼロとは言えなくなった。会見も開かず、有料の会員サイトで引退を発表した中居にも批判が集まっているが、こんな事態になったのは、“彼ら”が世の中を甘く見すぎていたからではないだろうか。