独身者だけではなく、既婚者を対象としたマッチングアプリも増加。しかし昨年9月にはそこで出会った女性に性的暴行を加えたとして、50代のテレビ局員が警視庁に書類送検されるなど、トラブルもあるという。「姫扱いをされたい、いいレストランに連れていってほしいなど、昔のキラキラ体験が忘れられなくて登録する中高年女性も多い。リスクよりチャンスを優先したい心理は、正直危ういです」と事情通は語る―。
検索やマッチングの方法もアプリによって異なる
職業や趣味などのプロフィールと顔写真を登録して気になる相手を検索し、メッセージ交換やデートができるマッチングアプリ。普段の生活では会えない人とも気軽に知り合えるのが魅力だ。
若い世代を中心に登録者数を増やしてきたが、中高年やシニア世代も活用しているという。
「『ペアーズ』や『ウィズ』といった大手マッチングアプリの会社がテレビCMを出すようになってから一挙に認知度が増しました。アクティブなマッチングアプリは今や1000を超えています。中高年のシングルマザーやシングルファーザーが、子どもにすすめられて始めるケースも多いです。60代以上の利用者の8割以上が、再婚を目的とした真剣な出会いを求めています」
と話すのは婚活メディア編集長の伊藤早紀さん。
「婚活やそれにつながる出会いを成功させるには、合ったアプリを選ぶことが前提。中高年なら40代以上の登録者が多い『ユーブライド』、50代以上が多い『ハハロル』など利用者の下限年齢を設けているアプリがおすすめ。どちらも真剣な出会いを求めている人の割合も高いのが特徴です。そのほか、子持ちで再婚目的の登録者が多い『マリッシュ』なども人気」(伊藤さん、以下同)
『ペアーズ』など認知度が高く登録者数の多いアプリは、初心者でも始めやすく出会いの幅も広いが、登録者の年齢層や目的も雑多なため本気モードの人には適していない。
「また、検索やマッチングの方法もアプリによって異なるため、自分が使いやすいものを選ぶのもポイントです」
検索型、スワイプ型、デート直結型、の3種類があるという。検索型はさまざまな条件から相手を検索して『いいね』を送り、マッチングが成立したらメッセージ交換を行うというもの。最も一般的だがメッセージのやりとりが苦手な人には不向き。
スワイプ型はAIが自動で候補の相手を検索、表示してくれる。相手の画像を見て、ありかなしかを直感で選んでいくので、条件検索の手間が省けて便利だ。
デート直結型は相手選びだけでなく、デートのセッティングまで自動でやってくれるので、メッセージのやりとりが苦手な人に最適だそう。
利用するのは独身者だけではない。“既婚者専用”も増え、現在、国内で運営している会社は10社以上、利用者は100万人以上、最も会員数が多いサイトでは累計マッチング数が700万件を超えるという“触れ込み”で業界が活況を呈している。
中高年女性が注意すべきは「年下男性」と「ときめき」
身分証明書の提示がないと登録できない、24時間のサイトパトロールをする、といったトラブル予防措置がとられているとはいうが、
「既婚サイトの浮気が見つかって離婚訴訟となるケースもありえます。家事や育児にまで影響が出たり、ストーカー行為にまで及んだりしないよう、自制するという点がアプリを利用する際の一番の注意点でしょう」
中高年女性が“沼る”例として1つ目は、「相手が年下」のケース。
「アプリやサイトでは、年上好きも多く、好意を寄せられるうちに有頂天になってしまう。お金や身体目的だとしても、そこに気づけずに、これが最後の恋愛とばかりに抜け出せなくなるのです」
そして「ときめきを思い出させてくれる」が2つ目のケース。50代後半以降の世代は、若かりしころをバブル期とともに過ごした。
育児や介護が一段落して自分の時間を楽しめるような年代になったとき、男性からの外食やドライブなどのお誘いは「ダンナからはそんな提案はないし、一緒にどこかに行ってもときめかない。私だって、ちょっとくらい楽しんだっていいよね」という免罪符となる。
異性からの甘い言葉や、自己肯定感をくすぐるような褒めワード。うっとりしている先に待ち構えているのが「リスク」だ。
消費生活センターによると、マッチングアプリで知り合った人から暗号資産やFXなどの投資をすすめられ、送金したところ、相手と連絡が取れなくなるといった相談が多く寄せられているという。
メッセージ交換の段階で外部リンクに誘導され、個人情報を抜き取られて架空請求されるといった被害や、会ったこともない相手に何十万円も振り込んでしまったケース。相手の身元を特定するのが難しく、お金を取り戻すのは極めて困難だ。
「リスクを踏まえたうえで、もしアプリを試してみたいと思うなら、相手からお金や投資の話が少しでも出た場合は、すぐに連絡を絶つこと。会う前からLINEのIDや個人や家族の情報につながるものを渡さないこと。住んでいる場所も明確にしないこと。初対面では個室の居酒屋や密室になるカラオケボックスなど2人きりになる場所を選ばない、いきなりドライブに行かないなどの対策をしましょう」
人生経験を豊かに積んだ年代だからこそ沼らず、騙だまされず。アプリというツールとは距離感を持って付き合いたいものだ。
トラブル対策チェックリスト
1・電話で確認
メッセージのやりとりだけでは、相手の素の姿や雰囲気をつかみづらいため、あらかじめ電話での会話やテレビ電話を活用して身なりをチェック。「顔は出せない」「電話ができない」と理由もなしに断られたら要注意、迷わず連絡を絶とう。
2・URLリンクにはアクセスしない
「違うアプリのほうが話しやすいから」「このサイトに移動して話したい」というような勧誘をして、見知らぬURLを貼りつけてくる人には要注意。移動先で法外な利用料金を請求されたり、個人情報を抜き取られる可能性も。
3・密室での待ち合わせはNG
既婚者専用マッチングアプリを通して出会った女性が、カラオケボックスで性被害に遭うという事件が。身体の関係を持ちたい場合はそれなりに関係値が深くなり信用できるようになってからにしよう。
4・自分の生活圏で会わない
家の特定や、ストーカー被害につながる可能性もあるため、自宅近くの場所で会うのは避けよう。相手の家に近すぎても危険なので、お互いの生活圏の中間地点を指定するのがベスト。
プロが選ぶ優良マッチングアプリ
ハハロル
精神科医が監修する50代以上のための検索型マッチングアプリ。シニア世代の孤独や孤立を防いで、心身の健康を保つことを目的としている。恋愛だけでなく、友人を探したい人にもおすすめ。
マリッシュ
再婚を目指す登録者が多い検索型マッチングアプリ。登録者の7割以上が中高年で、真剣にパートナーを探したい人向き。シングルマザーやシングルファーザーなどの子持ち独身者も多数登録する。
取材・文/井上真規子