
60代以上のクレジットカード所持率は今や9割超え。だが、「スマホとの連携性が高まり、シニア層では活用しきれていない人も多い。昔と同じ使い方をして損している人もいるので要注意」と話すのは、クレジットカード専門家の菊地崇仁さん。お得をがっちりつかむ最新の活用ワザを教えてもらった。
少額の支払いでも小銭よりクレカで!
物価高で家計のやりくりに苦しむ人が多い昨今。ピンチを乗り切るため、買い物などの支払いを現金から”クレジットカードメイン”に切り替えるのも有効な手だ。
「クレジットカードの利点は、現金と同じように使えるポイントをもらえること。それが、生活費の節約につながります。対して、ポイントなしの現金払いは明らかに損」
こう語るのはクレジットカードの専門家として知られる菊地崇仁さん。利点はポイントだけに限らない。
「シニア層を対象とする割引やサービスを備えたカードも少なくありません。該当のカードを保有してさえいれば、シニアにうれしい特典の恩恵を受けられるわけです」(菊地さん、以下同)
重要なのはクレジットカード選び。ここで間違った判断をすると、お得から遠ざかってしまうので正しい選択を学んでおきたい。
「クレジットカードを保有する目的を考えてみてください。ポイントを貯めることと思いがちですが、目的はポイントを使うことにあります。ひと言にポイントといっても使い方はさまざまなので、自分が日常生活の中で利用できるポイントでなければ得とはいえない。シニア層向けの特典を備えたカードも同様で、自分の目的に合ったものを選ぶのが大前提になります」
例えば、ポイント還元率が1.2%と高い「リクルートカード」。同カードで貯まるポイントは旅行や美容、グルメといったリクルートのサービスに使えるほか、dポイントやPontaポイントに交換できる。
「ポイントが貯まりやすいからと”リクルートカード”を選んでも、リクルートのサービスを利用していなかったり、dポイントやPontaポイントを貯めていなかったりしたら、カードを保有する意味はないですよね」
また、dポイントなどへの交換には、リクルートIDと交換先のポイントの連携が必要なため、ウェブ上での手続きが苦手な人にとってはここがネックとなって活用できない可能性も。
加えて大切なのは、クレジットカードは複数枚保有しないこと、そして使えるシーンではカード払いを徹底することだという。
「こちらのお店ではこのカード、別の店ではこのカードとしていたら、ポイントが分散して貯まりません。効率よく貯めるには1枚に集約すること。また、コンビニなどで100円、200円といった少額をクレカ払いするのは申し訳ないなどとは考えず、金額、用途問わず1枚を多用することが、ポイントを賢く貯めて有効に使う近道に」
いまやさまざまなものがクレジットカードで支払い可能となっている。公共料金(水道光熱費・通信などの代金)をはじめ、税金や国民年金保険料、生損保保険料、病院代など幅広く対応。家賃、葬儀やお墓の費用までクレカ払いOKというケースも。
「新NISAで人気の投資信託の積み立てはクレカ払いが可能です。長期運用により成果を狙えるため、まだ50代なら資産を預けながらポイントを稼ぐのもいいでしょう」
スーパーの買い物が驚きの高還元率に
では、具体的にどんなクレジットカードがシニア層にお得といえるのか。菊地さんおすすめの5枚を右ページ下の表にまとめた。スーパーの買い物で有利なのが、年会費永年無料の「三菱UFJカード」。オオゼキ、オーケー、三和、東武ストア、肉のハナマサなど14のスーパーでの利用でポイント還元率5.5%と非常に高い。

「該当のスーパーによく足を運ぶ方には、強い味方となる1枚です。仮に毎月4万円、カード利用した場合、月々2200円分のポイントが還元される計算になります」
貯まったポイントはAmazonなどの各種電子ギフト券をはじめ、dポイント、楽天ポイントなどの各種ポイントやJALのマイルに交換できて使い勝手もいい。
「シニアに有利な特典を備えるのが『大人の休日倶楽部ジパングカード』と、JCBなどのゴールドカードです。前者はJRの切符が割引になり、後者は健康や介護などに関する相談サービスを受けられます。どちらのカードも年会費はかかるものの、目的に合致するならそれに見合う価値は十分ありますね」
還元率や使い勝手が悪くないか確認して
一方、シニア層に人気ながら、損をしがちなクレジットカードも存在すると菊地さんは指摘。1番に挙げるのが、三越や伊勢丹、高島屋など百貨店ブランドのカードだ。
「百貨店系カードのポイント還元率は最大8%、10%と高く、魅力的です。貯まったポイントは同店の買い物などに使えます。ただし、百貨店でのカード利用が一律で高還元になるわけではありません。一部のハイブランドやセール品の購入はポイント対象外だったり、デパ地下の食料品は還元率1%だったりします。かたや年会費は2200円(初年度無料)かかる。使い方によっては割に合わないケースも出てくるでしょう」
次にガソリンスタンド系カード。会員価格で給油でき、1リットルあたり2円引きが定番だが、魅力に乏しいとのこと。ガソリン価格が1リットルあたり150円から200円の間だとした場合、2円値引きは1~1.5%の割引率に過ぎないからだ。
「いま話題のナンバーレスカードも慎重な検討が必要です。券面にカード番号や有効期限などの情報が記載されていないものを指し、セキュリティー上は安心といえますが、シニア層にとって使いづらいのは否めません」
不正利用が心配なシニアにはおすすめといえそうだが、
「ナンバーレスカードはスマホのアプリと連動させてカード情報を管理します。必要に応じてアプリを開いて番号などを確認しなければならず、アプリを使いこなせない人にとっては逆に活用が困難に。その点を頭に入れて選択すべきでしょう」
アナログ派のままではポイントがムダに……

ナンバーの管理に加え、セキュリティー面で重要なのが明細書のチェック。だが、ここで意外と大きく損しているシニアも多いという。クレジットカードの不正利用を見逃さないためには自身の利用明細の定期的な確認が必須だが、いまだに紙の明細を利用していないだろうか。
「紙の明細書は近年有料化が進んでいます。ウェブ上の明細に切り替え、パソコンやスマートフォンでチェックすべきです。”紙で見ないと不安だから”と紙の明細書のままだと、月200円前後の手数料がかかって年間2400円余りの負担に。コツコツ貯めたポイントがムダになってしまいます。ネット操作が苦手な場合は、お子さんなど家族にウェブ明細をプリントアウトしてもらい確認を」
いざクレジットカードを作ろうとする際、「自分の年齢や収入で作れるのか不安……」という人もいるだろう。
「審査基準を満たせばシニア層でもクレジットカードを保有することは可能です。年齢は18歳以上が一般的で、年収は安定した収入があればOKというカードも。年金も安定収入にあたるため、高齢や年金受給者だからといって諦める必要はありません」
ポイント交換案内サービス「ポイ探」の代表。100枚超のクレジットカードを保有・利用し、信用できる情報提供を目指している。クレジットカードの専門家としてテレビ、雑誌、ウェブなどのメディアで活躍中。