橋本環奈

 NHK連続テレビ小説『おむすび』が、2月11日にクランクアップを迎えたことが発表された。現在は最終章『病院・管理栄養士編』に突入しており、放送は3月29日まで続く。

 朝ドラ111作目となった同作は、3年連続『紅白歌合戦』の司会を務めるなど人気絶頂の女優・橋本環奈が主演ということで、放送が始まる前から視聴者の期待が膨らみ、初回は世帯視聴率が16.8%を記録。名作と言われた前作『虎に翼』を0・4ポイント上回る好スタートを切った。

受け入れられなかった“ギャル”

 しかし、2回目、3回目の放送が終わったころから、SNS上では「#おむすび反省会」が立ち上がり、同じ「#反省会」で盛り上がった『ちむどんどん』の再来か、と視聴者から厳しい声が上がり始めたのだった。第1週の週平均視聴率は16.1%で、何とか持ちこたえたかと思われたが、翌週からは階段を転げ落ちるように視聴率が低下。昨年12月の第10週からの回ではついに13%を割り込み、わずかだが一時的に回復を見せたものの、その後は12%台が続いている。

 このままでは、歴代朝ドラの平均視聴率ワーストの『ウェルかめ』(2009年度後期)の世帯13.5%という記録を下回る可能性も出てきている。

 “反省会”を楽しんでいるうちはよかったが、「もう無理」とリタイアする視聴者が続出し、今では反省会すらも消えてしまった感がある。

 NHKのホームページを見ると、同作は《平成元年生まれのヒロインが、栄養士として、人の心と未来を結んでいく“平成青春グラフィティ”。どんなときでも自分らしさを大切にする“ギャル魂”を胸に、主人公・米田結が、激動の平成・令和を思いきり楽しく、時に悩みながらもパワフルに突き進みます!》と紹介されている。

 しかし、低迷の元凶は、ドラマのテーマの一つでもあったこの“ギャル魂”にあったのは、誰もが認めるところ。視聴者の多くに“ギャル”は受け入れられなかったようだ。

「いまさら言っても仕方がありませんが、ドラマのテーマだった“ギャル”は、朝ドラの視聴者にはまったくウケないことがハッキリしました。制作サイドも早い段階で感じ取っていたと思うのですが、そのままギャルのシーンがしつこく続いた。主人公が栄養士になった後も時折“ギャル”が現れて、これでは、ギャルを見たくなくてリタイアした人たちが戻ることは無理だと感じました」(テレビ誌ライター)

活かされなかった橋本の“持ち味”

 不調の原因は“ギャル”だけではない。ベテラン映画記者はこう語る。

「“ドラマだから”と言われればそれまでですが、あまりに現実味がなく、意味不明のシーンが多い。数え上げたらきりがないですが、ツッコミどころも多いです。制作陣の思い違いと言いましょうか、“これは絶対受ける”と考えて作った脚本が視聴者にまったくハマっていないということです。

 世間と感覚がズレていることに加えて、人物の描き方が単純すぎて、脚本の“練り感”が感じられない。後半、主人公の父親が人間ドックの結果を見てガンかもしれないと悩むシーンや、主人公の母親に不倫疑惑が持ち上がるシーンなどは、これまでもいろんなドラマで見られた展開です。朝ドラには必要ないですね」

紅白で特徴的なドレスを着用した橋本環奈(NHK公式YouTubeチャンネルより)

 NHKの朝ドラといえば、視聴者の反応を見ながら脚本が手直しされていく、という話をよく聞くが、

最近の朝ドラは脚本家が一人ではないことが多く、全員で協議しながら進めていくようです。『おむすび』もそうしていると思いますが、あまりその雰囲気は感じられないですね。それどころか“ダイジェスト感”と言いましょうか、話を端折っている感じが強く、時間が経つのが早すぎるのと、主人公が直面する困難が解決するのも早くて記憶に残らない。

 そもそも、病院勤務の管理栄養士にそんなに多くの頻度で“危機”が訪れることはないと思いますし、困難自体も“そんなことある?”みたいなことばかり。さらに、次から次に降りかかるトラブルで、橋本さんはいつも暗い表情。“明るさ”という彼女の持ち味が活かされる場面が少なく、ファンもガッカリなのでは」(前出・テレビ誌ライター)

 さらに、2週間に渡って主人公が回想シーンでしか登場しない、という朝ドラ史上例のない事態も起き、これには驚いた人も多い。民放でドラマ制作にあたるプロデューサーは、これをどう見るか聞いてみると、

「スケジュールがタイトな橋本さんに撮影予定を合わせるしかなかったのでしょうが、もう少しましなやり方があったのではないかと思います。これは、視聴者をないがしろにしていると取られても仕方がない。主人公不在の間に頑張ってくれた仲里依紗さんの評価が上がり、数字が少しばかりでも上がったのは皮肉ですけど(笑)」

「義理堅い」NHK

 “ダイジェスト感”については、

「放送を見ていると、時間経過も早いですが、舞台が病院と自宅、両親の理髪店など、全てスタジオで撮影されていて、ロケはまったくない。これも忙しい橋本さんに合わせてのことだと思いますが、駆け足で早く終わらせようとしている感じがすごくしました。普通なら次回ヒロインへのバトンタッチが話題になったりするのですが、クランクアップしたこともあまり大きく報道されませんでした。NHKのスタッフは達成感というより、“終わってよかった”という安堵の気持ちのほうが強いと聞きました」(同・プロデューサー)

 もはや迷走を止めることはできそうもなく、このままいけば、朝ドラ史上ワースト記録更新の恐れも出てきている。橋本にとっても“黒歴史”になりそうで、NHKの責任は大きい。

橋本環奈が『おむすび』で披露したギャル姿(マネージャーのSNSより)

「お詫びということではないでしょうが、義理堅いNHKさんのことですから、橋本さんは『紅白』の司会が続くと考えられます。さらに、なにか新しいドラマの主演に抜擢される可能性も大きいですよ」(同・プロデューサー)

『ウェルかめ』のヒロインを演じた倉科カナは、その後もNHKのドラマ出演し続け、NHKでの主演作品も多い。もっとも、彼女の実力があってのことだろうが。

『ちむどんどん』でW主演だった宮沢氷魚は、現在放送中の大河ドラマ『べらぼう』で田沼意知役を演じている。

 これも『ちむどんどん』のお詫びというわけではないだろうが、橋本にも再びチャンスが来るか――。