
「受賞作品のいくつかを拝読いたしましたが、自分の知らない世界に出合った感動を言葉で表現する力に驚くとともに、登場人物の気持ちに寄り添ったり、自分と重ねてみたりして、そこからさらに深く考えて得たことを、執筆者自身で昇華させている様子がうかがえました。
(略)本を読んで感想文を書くとき、皆さんは、自分の考えをまとめながら自身の経験を振り返ったり、自分と向き合う作業をされたりしたことと思います。そのような自分を振り返ってみることは、面白い反面、楽しいだけではないかもしれません。しかし、本を通じて自分とじっくり向き合う時間は、皆さんの心を豊かにしてくれたのではないでしょうか」(秋篠宮さま)
秋篠宮ご夫妻が出席した読書感想文コンクール

第70回青少年読書感想文全国コンクールの表彰式が2月6日、東京都千代田区で行われ、佳子さまの両親である秋篠宮ご夫妻が出席した。このコンクールは、子どもや若者が本に親しみ、本を心豊かに生きる糧にしてほしいという願いから開催されている。表彰式には約500人が出席し、小学校低学年の部などの内閣総理大臣賞受賞者らに賞状が贈られた。式の後、受賞者たちは秋篠宮ご夫妻と懇談し、おふたりから「おめでとうございます」などと声をかけられた。今年は、全国の小・中・高校と海外の日本人学校、計約2万4000校から230万編以上の応募があったという。
秋篠宮さまの子どものころの読書の思い出について直接、私は本人から話を聞いたことがある。秋篠宮さまが、小学校1年生のときだった。10月の運動会の後、熱中症になり数日、学校を休んでしまった。ベッドで寝ていたとき、母親の美智子さまが椋鳩十(1905―1987年)の『動物ども』を持ってきて、読んでくれた。その本は大切にしていて、今でも自分の部屋の書斎に置いてあるという内容だった。椋鳩十は、児童文学者で、動物文学の第一人者として知られている。『片耳の大シカ』『大空に生きる』など多数の名作がある。私は秋篠宮さまと次のようなやりとりをした。
─椋鳩十さんの全集をお母さまはお持ちだったのですか。そのとき、どういう物語を読まれたのですか。
「何冊かあったうちの1冊だと思います。私が動物を好きなので、母が読んでくれたのだと思います。今でも、そのときの光景をよく覚えています。私にとっては思い出の本ですし、大事に残しています」
このように秋篠宮さまは答えてくれた。なお、秋篠宮さまの読書の思い出は、拙著『秋篠宮』(小学館)で詳しく紹介している。
本や読書に関心を持つ佳子さま

'23年12月29日、佳子さまは29歳の誕生日を迎えたが、宮内庁皇嗣職は同年6月の佳子さまの次のような公的な活動を紹介している。
《「誰もが読書できる社会を目指す」ことについて、文部科学省と厚生労働省から説明を受けられました。例えば、目が見えない、見えにくい、文字や文章の認識が困難、本を持てない、本のページをめくれない、目で文字を追えないなどの状況にある人が、本や生活情報を読めるようにするための取り組みについてお聞きになりました。
情報を、点字や音声、読みやすい文字の大きさや文章にするなどの取り組みが、ボランティアの支援も受けながら行われています。このような取り組みを、たいへん意義深く思われたと伺っております》
翌'24年6月、産経児童出版文化賞贈賞式に出席した佳子さまは次のように挨拶している。
「本を読むことで、さまざまな想像をしたり、新しいことを知ったり、考えを深めたりすることができます。夢中になるひとときや、くつろいだ時間を過ごすこと、本を読む時間が心の支えになることもあると思います。幼少期に始まり、生涯にわたって多様な本に接する経験は、大切な宝物になるのではないでしょうか」
佳子さまもまた、本や読書について深い関心を持っていることが理解できる。
《弟に本読み聞かせゐたる夜は旅する母を思ひてねむる》
これは'15年、新春の歌会始で佳子さまが詠んだ和歌である。お題は、「本」だった。宮内庁の説明によると、姉が海外留学中で、秋篠宮ご夫妻が国内や外国を訪問して留守の間、弟の悠仁さまと佳子さまは一緒に過ごす。夜、就寝する前、弟に本の読み聞かせをしながら佳子さまは、仕事で遠くにいる母親、紀子さまのことを思った情景を詠んだものだという。
前年の'14年12月、佳子さまは20歳の成年の誕生日を迎える前の記者会見で、このように答えている。
「弟につきましては、私は幼いころから弟か妹が欲しいと思っておりましたので、弟が生まれたときは非常にうれしかったことをよく覚えております。年は離れておりますが、ケンカをしたり一緒に遊んだりしております。最近は姉が海外にいて、また、両親も仕事で家にいないことが多かったため、ふたりで折り紙をしたり本を読んだりして過ごす時間もございました」
このように、佳子さまと悠仁さまにとって、読書はとても大切な時間だったようだ。
衆参両院の正副議長は1月31日、与野党各会派の代表者と衆院議長公邸で会談し、安定的な皇位継承に向けた皇族数確保を巡る協議を再開した。衆院議長は「今国会中に結論を得たい」と表明した。報道によると、女性皇族が結婚後も皇族に残れるようにする案を実現できるかが焦点となるらしいが、女性皇族の夫と子どもに皇族の身分を与えるのかどうかなどが課題となるとも指摘している。
自民党などは、子どもを皇族とした場合、将来的に父方が天皇の血を引かない女系天皇の誕生につながる可能性があると反対しているという。
もちろん、佳子さまはまさにこの議論の渦中の一人であり、議論の推移がとても気になるところだろう。この連載で何度か説明しているが、30年間もの長い間、「内親王は結婚後、民間人となります」と、言われ続けて育ってきた。佳子さまもそのように強く自覚している。それが、結論次第では結婚してからも、内親王としての仕事をやり通さねばならなくなる。そして、佳子さまの愛する夫と子どもたちは、皇族の身分となるのか、それとも民間人のままなのか。それも心配だ。
今年、結婚35周年を迎えるご両親のように、佳子さまも当然、幸せな結婚を望んでいる。佳子さまばかりでなく私たちも、いろいろな意味で気をもむ事態が続く。
<文/江森敬治>