
NHK連続テレビ小説『おむすび』の放送終了まで残り1か月を切った。初回放送からツッコミが入り、『#反省会』が即立ち上がってしまったほどの作品は、脚本の改善がなされたのかどうかもはっきりしないまま放送が続いた。そのため、リタイアする視聴者が続出。遂にはネット上の書き込みも少なくなり、ツッコミさえ入らなくなった。
初回視聴率は秀作と言われている前作『虎に翼』を超えたが、その後は下降を続け、時折盛り返すことはあったものの、2月24日に放送された第101話はなんと平均世帯視聴率10.4%という数字だった。連休中の月曜日は数字が落ちると言われているが、それにしてもだ。
ファンタジーな展開に「パクリ」疑惑も
だが、ここにきて再び視聴者からのツッコミが増えており、ネット上では変わった盛り上がりを見せ始めている。テレビ誌のライターによると、
「『#反省会』に参加していた人たちは元々、“隙あらば”とツッコミを入れるのが好きな人たちです。リタイアしても、“最近はどうかな”と気になって、時々様子を見て、“おや、おや”と思う場面があると、やはり黙ってはいられなくなるのでしょう。また、想像を超えるぶっ飛んだ展開が増えてきていますから、違う意味で見どころ満載です」
2月28日に放送された第105話では、驚きの声があがった。主人公・結(橋本環奈)の祖父・永吉(松平健)が亡くなり、葬儀が営まれているシーン。そこに、思いもかけない人たちが弔問に訪れる。演歌歌手の山内惠介、サッカーのラモス瑠偉が本人役で登場。さらには王貞治、アントニオ猪木、引田天功から弔電も届いている。
永吉が生前「歌を教えたのは俺ばい」「一本足打法をアドバイスした」などと話していたことはホラ話ではなく、本当の話だった……ということなのだが、「そんなアホな」というツッコミが殺到したのは言うまでもない。こんな展開は誰が予想しただろうか。
ここまでくると、もはやファンタジーだ。ネットでも、ティム・バートンが監督を務めたファンタジー映画『ビッグフィッシュ』のオマージュではないか、「いや、これはパクりだ」と騒がれている。
新しいドラマの楽しみ方
また、話の後半では、「40数年前に父親が栄吉から借りたお金を返しに来た」という人物が登場する。大鶴義丹が演じるその人物は、岐阜から福岡までやって来るのだが、通夜のその日まで父親の借金について知らず、父親の遺品を整理していたら借用書が出てきたという。
温かい目で見るなら、偶然借用書を発見し、連絡したら貸した本人が亡くなっていて、今日通夜だと聞いたからやってきた、ということだろうが、これも強引すぎる。しかし……。
「この展開に呆れていたら『おむすびウォッチャー』はやっていられません。これが『おむすび』の醍醐味なんです。いま『おむすびウォッチャー』の間では、ツッコミを入れることに加え、次回の展開を予想するのが流行っていて、SNSでもそんな書き込みが増えています。まあ、結局は予想通りの展開になっているんですが、“最終回はこうなる”というトピックで盛り上がっていますね」(前出・テレビ誌ライター)

『おむすび』の時代設定は、主人公・結が高校に入学した2004年(平成16年)から始まる。管理栄養士となって4年目を迎えた2018年(平成30年)には病院に勤務し、永吉が亡くなったのは2019年(平成31年)。その年9月に『令和』に改元。
作中ではその間、国内で起きた災害や開催された行事が描かれている。この先、“コロナ”と“東京オリンピック”も描かれることが予想されており、結が栄養士として関わっていくと見られている。
『#反省会』が立ち上がった朝ドラと言えば『ちむどんどん』(2022年前期放送)が最初だが、『おむすび』は間違いなく同作品を超えた。この先も、『#反省会』が立ち上がる朝ドラが出てくると思われるが、
「反省会を立ち上げて、ツッコミを入れる」
「ドラマの展開予想を競い合って盛り上がる」
『おむすび』は、そんな新しいドラマの楽しみ方を確立させたのかもしれない。最終回はどんなエンディングとなるか――。いずれにせよ、忘れられない作品となったのは間違いない。