「いちど朝ドラに出させてもらったことがあるんですが(『カーネーション』でヒロイン・糸子の従兄弟)、今回は主人公の同級生として作品の頭から最後まで関われるのがすごくうれしい。高志はふだん無口ですが、いろいろな思いや感情を歌にして吐露する役柄。しかもプロのロックミュージシャンを目指して都会に出る設定が、実際にバンドをやっている僕自身に重なり、とても楽しみです」
連続テレビ小説『まれ』で二木高志を演じている渡辺大知。ヒロイン・希(土屋太鳳)の仲間たち6人組の中にあって、物静かで癒し系の存在が気になっている視聴者も多いはず。ドラマが横浜に移ってからも、高志は希の近くにいて心のよりどころのひとつに。
それしにても、劇中では極端にセリフの数が少ないけれど?
「いや、心ではいっぱいしゃべっているんです(笑い)。みんなのことが大好きだし、一緒に楽しい空間を共有しているし。ただ、本番であまりしゃべらないぶん、その反動で、待ち時間とかすごく共演者の人たちと話をしたくなっちゃいます」
人懐っこい笑顔を見せながら、セリフの多寡は問題ではなく、みんなで作る空気を大事にしたいという。
「出演者だけじゃなく、監督、カメラマンさん、照明さん、音声さん……全員が力を合わせて作っている。その場にいられるのがうれしいです」
俳優業の傍ら、ミュージシャンとしての評価も高く、バンド『黒猫チェルシー』では、セクシーな歌声を堂々たるパフォーマンスで披露している。
「一時期、どちらかひとつに絞らなければいけないのかと悩んだ時期もあったんですけど、子どものころから役者に興味があったし、両方やってこそ自分。無理しているのがいちばんカッコわるい。僕は自分のやりたいことを、例えば、さっき言った"空気を作る"仕事をしたいんです。俳優とバンドと方法は違いますが、同じことをやっているつもりです!」
能登の高校卒業の日、高志は同級生たちの前で自作の歌『また会おう』を熱唱。この曲は実際に渡辺自身が作詞・作曲した。
「今まで感じたことがないくらい緊張しました。本番が終わってみんながウワーッと拍手してくれたのは"よく頑張りました!"という意味もあったのかも(笑い)」
スタイリスト/鴇田晋哉 衣装協力(シャツ)/ANACHRONORM,