
「今年は例年よりもハードな1年を送られることでしょう」
『皇室の窓』(テレビ東京系)で放送作家を務めるつげのり子さんがこう語るのは、雅子さまについて。阪神・淡路大震災から30年、太平洋戦争の終戦から80年と、日本にとって重要な2つの節目を迎える'25年、皇后としての務めに追われることになるという。
マスコミ向けの取材案内に“変化”
「4月には激戦地となった硫黄島、6月に沖縄県と広島県への訪問が予定されています。さらに、7月上旬にはモンゴルへの訪問が調整されていて、終戦後に抑留されて亡くなった日本人の慰霊碑を訪問されることが検討されています。9月には『国民文化祭』に出席するため、長崎県を訪問される見通しで、その際に原爆で亡くなった方々への追悼の機会が設けられるでしょう」(つげさん、以下同)
4月の硫黄島訪問を皮切りに、ご多忙を極めることが予想される雅子さま。体調面を考えると、この春はお出ましを控えられるかと思われたが、
「ご一家で展覧会に足を運ばれたりと、今年に入ってからお出ましが多いように思います。中でも印象に残っているのは、1月に阪神・淡路大震災の30周年追悼式典に出席された際のことです。当時皇太子ご夫妻だったおふたりは、震災発生から3日後、前々から予定されていた中東へのご訪問に臨まれました。
おふたりは予定よりも早く帰国の途に就かれましたが、このとき、後ろ髪を引かれる思いで日本を発たれたものと拝察いたします。30年を経て復興した神戸の街を感極まった様子でご覧になっていたのが、とても印象的でした」
雅子さまは'04年に適応障害であることを公表された。体調には現在も波がおありだというが、最近は安定の兆しが見えているという。
「2月下旬ごろからでしょうか、宮内庁から届くマスコミ向けの取材案内には“天皇、皇后両陛下行幸啓”と記載されるようになりました。行幸啓とは天皇と皇后が一緒に外出されることです。これまで雅子さまは、体調が原因で当日にドタキャンとなる可能性があるため、事前の取材案内では、天皇陛下のみ、お出ましになられる旨が記載され、雅子さまは当日参加が決まるというパターンがほとんどでした。今はご体調の波が安定していて、公務にも前向きでおられるのでしょう」(皇室担当記者)
「環境を変えられない」皇族の宿命
この雅子さまの変化について、心理学に詳しい東京未来大学こども心理学部長の出口保行さんはこう分析する。
「お出ましになることを事前に告知できるということは、体調が良いことの表れでしょう。適応障害の場合、ストレスの要因は案外明確ですから、現時点ではお出まし自体はストレス要因になっていないのかもしれません。また、外出を事前に告知できることが自信につながり、ストレスを弱めているとも考えられます。ただ、無理をなさることは禁物です。責任感がお強く、まじめなご性格から、あれもこれもと引き受けてしまわれがちでしょうが、上手にコントロールしていく必要があります」
ご体調は好転しておられるようだが、昨年10月、雅子さまの誕生日に際して発表された医師団の見解には《回復の途上》との記載があった。適応障害を公表して20年以上がたつが、いまだ完治に至らないのは、皇族ならではの理由があるという。新潟青陵大学大学院で教える社会心理学者の碓井真史教授はこう語る。
「精神医学的に適応障害の原因は環境にあると考えられています。過酷な環境、例えばブラック企業などに身を置くことで心身のバランスが崩れてしまうのです。一般的には、ブラック企業といった環境がつらければ、辞職などの対応ができます。しかし、雅子さまを含む皇室の方々は転職も離婚も転居も困難です。原因は環境にあるのに、環境を変えられないというのが、完治を遠のかせているのでしょう」

完璧とは言い切れない状態でも、雅子さまが奮起されている背景には、皇后としての責任感があるようだ。
「上皇ご夫妻は在位中、太平洋戦争の激戦地となった各地を巡る慰霊の旅へ赴かれました。一方、今の両陛下は戦後のお生まれです。ですから今年、戦後80年という節目に平和を再び胸に刻むという目的で、かつての戦地へ足を運ばれるのではないでしょうか。平和の意義を伝え続けるという心持ちで、両陛下とも気合が入っておられると拝察いたします」(前出・つげさん)
ただ、前出の碓井教授は、この“強い責任感”が心の病を引き起こすと説明する。
「心の病気は弱い人がなると思われがちですが、それは誤解です。むしろ能力の高い努力家こそ患いやすいのです。雅子さまは高い能力をお持ちなだけでなく、まじめで努力家でいらっしゃるようにお見受けします。日本や皇室のためにと頑張りすぎてしまい、心がつらくなってしまわれるのです」
頑張りすぎた反動で最悪のシナリオも
実際に、雅子さまは'93年に皇室に入られてから、皇族としての強い使命感を持ち、公務に臨まれていた。
「婚約内定の記者会見で“大きな責任をお引き受けすることになるわけでございますから、身の引き締まる思いがいたします”と心境を語り、その言葉のとおり、積極的に公務などへお出ましになっておられました。しかし、かねて希望されていた、外交官というキャリアを生かした国際親善に関わるお務めはなかなか実現しなかった上、お世継ぎを産むことへの重圧に苛まれた結果、適応障害を患われたといわれています。
適応障害を公表されて以降、それまでのしわ寄せが及んだかのように公務を欠席される日々が続きました。そして今年、終戦から80年という節目をきちんとこなさなければという責任感から無理をしてしまい、以前のように公務に出られなくなる事態も考えられます」(皇室ジャーナリスト)

この最悪のシナリオに、前出の出口教授も警鐘を鳴らす。
「頑張りすぎてしまった結果、その反動で、以前のようにお出ましが困難になられるということは十分考えられます。そうならないよう、今後もご本人の思いやお気持ちを大切にしながら、医師やカウンセラーがサポートすることが必要不可欠です」
今の雅子さまの好調なサイクルには思わぬ落とし穴があるようだ。それでも周囲の力を借りながらハードな1年を乗り越えていただきたい─。
つげ のり子 西武文理大学非常勤講師。愛子さまご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の『皇室の窓』で構成を担当。著書に『素顔の美智子さま』など
出口保行 犯罪心理学者。東京未来大学こども心理学部長。これまで1万人の犯罪者・非行少年を心理分析し、多くの報道番組で解説を行う
碓井真史 社会心理学者。新潟青陵大学大学院教授で、著書に『なぜ「少年」は犯罪に走ったのか』『よくわかる人間関係の心理学』