担任になってほしいアスリートランキングTOP5

 4月に入り、いよいよ始まる新学期。学生時代はクラス替えがあるたびに、今年は誰が担任に!?とワクワクしたもの。運動神経抜群の面白そうな担任ならば、日々の授業もぐんと楽しくなりそうで─。そこで、大人になった30代〜50代の女性500人にアンケート。もし自分が学生だったら、担任の先生になってほしいスポーツ選手は誰ですか?

人生観がためになりそうなサッカー選手

本田圭佑

 5位は近年、ヨーロッパやブータンなど海外でプレーする本田圭佑(38)。 

 アンケートには「人生観の勉強になりそう」(神奈川県・43歳)、「しっかりした意見を持ってるから」(三重県・39歳)、「枠にとらわれず、身になる授業をしてくれそうだから」(広島県・46歳)との声があがり、17票を集めた。

「彼はJリーグがブームになった時代に、Jリーグのユースチームではなく、高校に行って日本代表のエースになった人。当時は高校でJリーグのユースに入れない時点で、もう終わりという雰囲気だったけど、そこから這い上がって自身の道を切り開いた。だから落ちこぼれの気持ちがわかるのでは」

 と言うのは、作家でスポーツライターの小林信也さん。豊富な取材経験を持ち、選手の能力や人間性も知り尽くす。それだけにこんな危惧も。

「たぶん彼と相性がいいのは非常に限られた人間だけ。ある意味その道を極めた人だから、独自の持論や考え方があって、それを受け入れられないと付き合うのは難しい。ハマる生徒とハマらない生徒がいて、ハマらない生徒はつらそう。そこはちょっと心配です」

日本代表の長友佑都(左)と堂安律(右)

 4位は先日、ワールドカップ出場を決めた日本代表のベテラン・長友佑都(38)。

「面白さと熱さがあり、クラスのバランサーになってくれそう」(宮城県・44歳)、「家族を大事にしているイメージがあるので子どもとうまくコミュニケーションが取れそう。人柄も気さくで接しやすそう」(広島県・33歳)と、25票。

「彼は世界一努力をしたスポーツ選手。天性のものもあるでしょうけど、途方もない努力と根性で今の領域に到達したと思う。その能力はすごい」

 と小林さんは手放しで称賛する。先生としての能力はというと?

「誰でも彼ほどの努力ができるとは限らない。俺みたいになりたければダッシュ100本やれ、なんて言われてもムリですよね。ただ、アンケートにもあるように、彼はコミュニケーション能力がすごく高いと思う。サッカーというのは、相手と調和しつつ、相手からボールを奪うゲーム。相手と調和するからこそ相手を崩せる。相手の特徴を見抜いていい関係をつくる、そのコミュニケーション術を教わることができたら非常に有益なのでは」

人生経験豊富なプロ40年目の選手

父・三浦知良と並ぶ三浦孝太(孝太のインスタグラムより)

 3位は今年、プロ生活40年を迎えたレジェンド、三浦知良(58)。

「生き方がカッコいいから」(埼玉県・57歳)、「栄光と同じくらい苦難も経験しているはず。若いときとはまた違う視点で指導してくれるのでは」(福井県・50歳)、「10代で海外へ行き、ずっと現役でいるパワーを知りたい」(岡山県・55歳)、「人生経験が豊富だからいろいろなことを教えてくれそう」(埼玉県・47歳)と、35票。プロ入り40年の今なお現役で、豊富な人生経験に期待する声が寄せられた。

「彼は自分自身の生き方を徹底して追求してきた人。心身の維持も含め、いちサッカー選手としてこの年齢までやってきたのはすごい。ただ彼が担任としてどういうふうに生徒に接するかはちょっと想像がつきにくい」と小林さん。現役最年長選手で、孤高のキングというイメージが強い。

「具体的に教えるというよりも、彼の姿を生徒が見て勝手に憧れるタイプの先生になりそう。自分の好きなことを見つけて、その目標に向かって突き進んでいけ、という教え方になる気がします」

2023年3月11日のWBC中国戦前、言葉をかわす大谷翔平とダルビッシュ有

 2位はメジャーリーグ、「サンディエゴ・パドレス」のダルビッシュ有(38)。

「WBCで若手に接する姿を見て教え方がうまそうだと感じた」(青森県・45歳)、「人間的にも素晴らしい選手で、グローバルな視点も持っているので」(千葉県・59歳)、「プレー以外でもいろいろな出来事を経て人間として成熟していると感じる」(神奈川県・42歳)と、41票獲得。

「ダルビッシュはきっと素晴らしい先生になると思います。彼は教えるのが大好き。自分が持っているものを共有したいという気持ちがある」と小林さん。トップ5の選手の中で最も教師向きと断言する。

「日本の野球史上、彼ほど自分の“企業秘密”を積極的に公開している選手はいない。まだ現役なのに、変化球をどう投げているとか。高身長に恵まれながら器用さを併せ持ち、工夫することが大好きで、それを分け与える。実際、日本にいたときも、ダルビッシュに教えてほしいという選手が球団に関係なく彼を訪ねて、本人も積極的に教えていましたね」

 ここで6位以下のランキングを見てみよう。6位に阿部一二三(16票)、7位は羽生結弦(14票)、8位は石川祐希(11票)と高橋藍(11票)、田中将大(11票)とトップ10にはいずれも名だたるスポーツ選手がずらりと並ぶ。しかし「名選手だからといって、必ずしもいい教師になるとは限らない」と小林さん。では、実際にいい担任になりそうな選手はと聞くと、前述のダルビッシュ有のほか、田中将大(8位)、三笘薫(14位)、山本由伸(15位)の名が挙がった。彼らに共通するものは何だろう。

「まず教えるのが好きで、自分が目立つだけではなく他人を輝かせることに楽しみを感じられる人。自分勝手ではなく、他人への優しさがあること。そして一番は、自分の技術を共有する方法を持っていること。

 超一流の選手は、自分でも知らずに技術を身につけていたりする。それが名選手だからといって名コーチにはなれない理由。自分でどうプレーしているか論理的にわかっていない名選手って、実はものすごく多いんです」(小林さん)

目標管理能力がすごすぎるスーパースター

大谷翔平

 そして1位は納得の、大谷翔平(30)。 

「学生のころから細かく目標を持って努力していて、生徒一人ひとりに合った指導ができる人だと思う」(神奈川県・41歳)、「現在活躍中のトップ選手で、一般人では想像できないような苦労や努力があったと思う」(兵庫県・57歳)、「実績があるので言葉に説得力があるし、性格も温和そうだから」(鳥取県・50歳)、「有言実行と人生設計がすごく、実力があるから」(愛媛県・52歳)、「目指す目標があって、そこにたどり着くための具体的な道すじを考えてくれそう」(徳島県・41歳)と、199票を集め、断トツのトップに。コメントには大谷の努力をたたえる声が多く見られるが……。

「あそこまでいくからには大谷は相当な努力をしていると思われていますが、彼以上に頑張っている選手なんてごまんといる。もちろん努力をしていないとは言いませんが、彼はもう資質が違うからしょうがない」

 と語る小林さんは大谷選手についての著書があり、プロ入り以前から彼の歩みを取材してきた。

「日本人選手の99・999%は徹底的に教えられて育つけれど、大谷はもともとの素質に秀で、教えられた経験がほとんどない。だから人への教え方がよくわからないかもしれない。逆に“自由に自分で工夫してやればいいんだよ”と生徒の気持ちや自主性を大事にしてくれる可能性はある。そういう意味では担任としてはいいのかな」

 女性たちの願望が詰まった今回の妄想ランキング。さて、あなたの推し担任は何位に?

担任の先生になってほしい現役男性アスリートランキングTOP5
小林信也 作家・スポーツライター。著書に『大谷翔平「二刀流」の軌跡』(マガジンランド)など

<取材・文/小野寺悦子>