事件のあった『西友清瀬店』

 東京都清瀬市の西武池袋線清瀬駅北口前にある駅直結の大手スーパー『西友清瀬店』で事件は起こった。休日の買い物を楽しむ家族連れでにぎわう4月13日の午前10時40分ごろ、3階の暮らしのフロアの空気が一変した。

刃渡り約18cmの包丁で犯行

「入店の約5分後、男はキッチン用品コーナーで刃渡り約18cmの包丁を購入すると、同じ階の女子トイレで妻の右脇腹や右腕を刺したのです。会計を済ませて2〜3分後の犯行でした。通報を受けて警視庁東村山署の警察官が駆けつけると、女性が血を流して倒れており、搬送先の病院で死亡が確認されました。夫婦で買い物に来たとみられます」(全国紙社会部記者、以下同)

 夫は現場におり、凶器とみられる血のついた包丁も付近で見つかったという。

 殺人未遂の現行犯で逮捕され、容疑を殺人に切り替えられたのは住所・職業不詳の兼沢孝行容疑者(58)。亡くなったのは妻の益代さん(56)だった。

「以前から遺産相続に絡んだ夫婦間のトラブルがあったようです。孝行容疑者は“妻を脅すつもりで包丁を購入した。口論になりカッとなって刺した”などと話すと、黙秘に転じました」

 事件当時、スーパーの近くにいた自営業の男性は、店の周囲にパトカーが何台も駆けつける様子を見て、ただならぬ気配を察知したという。

「パトカーが4、5台と、警察車両も4、5台、それと救急車も。向こうの信号の先まで道沿いにびっしりでした。急病人が出た程度の雰囲気ではないので、飛び降り自殺か何かかと思ったんですが……」

犯行に及んだ理由

 夫婦間トラブルは自宅で起きるケースが目立つ。なぜ、その場で凶器を購入してまで外出先のスーパーで犯行に及んだのか。

 益代さんは事件当時、市内の公営集合住宅で暮らしていたという。

「もともと、その部屋は益代さんのお舅さんがひとり暮らししてました。お若く見えて健康的でしたが、数年前に体調を崩し、たびたびお世話に訪れていた益代さんが同居するようになりました。その義理の父親が2〜3年前に入院し、ほどなく亡くなったんです。同居中はさほど介護の必要はなかったはずですが、逮捕された旦那さんは様子を見に来ることはありませんでした。実父の世話は奥さんに任せっきりにしていたのではないでしょうか」(公営集合住宅の女性住人)

 夫婦は別居していたようだ。孝行容疑者の父親が亡くなって以降、益代さんがひとりで暮らすようになった。

「不思議なのは遺産相続でのトラブルの可能性が報じられていることです。義理のお父さんは堅実に働いていましたから多少の蓄えはあったかもしれませんが、夫婦の間でモメるほど巨額の財産を残したとはとても思えません」(公営集合住宅の男性住人)

 複数の住人によると、益代さんはふくよかなガッチリ体形で、落ち着いた服装で働きに出ていた。

 別の女性住人は言う。

「益代さんはイエス、ノーがはっきりしています。声に張りがあるので、人によっては威圧的に感じたり、カチンとくるかもしれません。事件後、益代さんの姿を見かけなくなり、亡くなったことを実感しています。夫婦ゲンカはよくあることですが、殺すほどのことだったのでしょうか」

 孝行容疑者の父親は草葉の陰で何を思っているだろう。