写真左から西村知美さん、大西結花さん、田中美奈子さん

「1000年に1人の逸材」に「国民の元カレ」、そんなおとなしいもんじゃない。昭和アイドルたちのキャッチフレーズはもっとぶっ飛んでいた! とことん大げさ、ビックリ、意味不明……'80年代、そんなキャッチフレーズを背負ってデビューした3人のリアルボイスをお届け!

パーツに保険をかけたのは田中美奈子が初だった?

 “1億円の瞳”“不思議チック少女”“1秒ごとのきらめき”……バブル期の人気アイドル、田中美奈子さん、大西結花さん、西村知美さんが集結! 現在、'80年代アイドルを中心に結成された合唱団「ネオ☆スターズ」に全力投球中の3人

 この日は、6月の大阪・関西万博公演に向けての田中さん宅での自主練後に取材を敢行しました。懐かしのキャッチフレーズについて今だから語れる、ぶっちゃけトークをどうぞ~!

─みなさん、印象的なキャッチフレーズでしたが、最初にご自身のキャッチフレーズを聞いたときの気持ちは?

田中私は“1億円の瞳”だったんですけど、たぶんパーツに保険をかけたのは私が初めてだったかも。そのあと、胸とか脚に(保険を)かける人が出てきた。で、私は“なんで瞳なんだろう?”と思っていたんです。もっと目の大きい人はいっぱいいるのになって、不思議な感じでした」

大西「私も脚にかけたと思っていました!」

田中たぶん世の中的に9割の人が脚だと思ってらっしゃるけど間違いです(笑)

西村私は“1秒ごとのきらめき…知美”でした。イメージカラーは水色で、親衛隊の方も水色のトレーナーと鉢巻きでしたね。最初に“キャッチフレーズはこれだよ”と渡されたとき、意味が全然わからなくて。1秒ごとって、なんかせわしないイメージですよね(笑)」

アイドル時代の田中美奈子さん  写真/本人提供

─名づけ親の方から話を聞いたりはしないんですか?

西村「まったくどなたかもわからず。当時は毎日、よくわからないまま課題を消化するだけで精いっぱいでした」

大西「私のキャッチフレーズは……この流れですごく言いたくないんですが(笑)。2人がとてもアイドルらしいから最初に言えばよかったー。“不思議チック少女”です

西村「えー、可愛らしいキャッチフレーズだよ」

田中「結花ちゃんは、目が特徴的。吸い込まれるような目だったからじゃない?」

大西正直、よくわからないですよね(笑)。レコード会社の方がつけたんじゃないかな。デビュー曲にかけて作られたものだと思うから

─ほかの方のキャッチフレーズって、覚えてます?

西村「同期の山瀬まみちゃんですね。よく周りから、それでイジられていた記憶があります」

─山瀬さん、“国民のおもちゃ新発売”でしたね。

西村インパクトあるよね。ご本人がよくネタにされているのが井森美幸さんの“まだ誰のものでもありません”

大西「よくバラエティーでイジられていて」

西村「今の方って自分でキャッチフレーズ言いますよね」

大西私たちの時代は自分で言わないし、例えばキャンペーンでデパートの屋上とかで歌うときに“キャッチフレーズは不思議チック少女、大西結花さんです”なんて紹介されることもない。使いどころがないというか(笑)

─今はSNSから自然発生的に生まれるキャッチフレーズも多い。橋本環奈さんの“1000年に1人の逸材”はファンが撮った写真から生まれました。

大西「確かに彼女にぴったり。すごくいいなと思う」

昭和アイドルのキャッチフレーズは当て字文化!

─当時はレコード会社名が入ったキャッチフレーズも目立ちました。松田聖子さんの“抱きしめたい!ミス・ソニー”や石川さゆりさんの“コロムビア・プリンセス”などがありましたね。

田中会社全体で推してくださってたんでしょうね

チェッカーズ

─天地真理さんは“あなたの心の隣にいるソニーの白雪姫”でした。

田中「そういうイメージ、ありますねえ!」

西村天地さんは、あの世代の中でもう別格だっていう話を聞いたことがあります

─事務所名もありました。男闘呼組が“ジャニーズ事務所のおちこぼれ”。

大西「ご一緒させていただいたけど知らなかったです!」

─当て字文化も。中森明菜さんは“美新人娘”を“ミルキーっこ”と読ませたり。

田中「そういうのが流行ったころかもしれないですね」

西村チェッカーズも『ジュリアに傷心(ハートブレイク)』を出していましたね

大西「チェッカーズのキャッチフレーズは?」

西村「ファンクラブに入ってたのに知らないなあ」

─大西さんと西村さんは筋金入りのファンですもんね。

西村「(スマホを操作して)AIが調べてくれました! '83年デビュー時のもので、“退屈退治”だそうです」

大西「解決してよかった(笑)」

西村「(一覧を見ながら)あ、テレサ・テンさん、“香港の赤いバラ”ですって」

大西「ぴったり!」

西村つちやかおりちゃん、ネオ☆スターズでご一緒してますけど“恋と涙の17歳”。デビュー曲のタイトルと同じですね。賀来千香子さんは“清楚なお嬢様”。まさに!

大西「そのまんまですね。大沢逸美さんの“ジェームス・ディーンみたいな女の子”は、すごく覚えてる」

田中「私も印象に残ってる」

西村「これもデビュー曲のタイトルだって。菊池桃子さんは“REAL1000%”」

田中「100じゃなくて1000!」

西村「これは事務所が同じだったオメガトライブの曲名『君は1000%』とかけてますね。あ、風間三姉妹(『スケバン刑事』の主人公三姉妹。大西が長女、中村由真が次女、浅香唯が三女を演じた)の浅香唯さん、ございましたよ。“フェニックスから来た少女”でしたね!

田中「彼女は宮崎出身だもんね。フェニックスは宮崎の木で有名」

大西「うんうん」

田中「え? 杉本彩さんが“世界一のぬいぐるみ”だって。ぬいぐるみって感じじゃないよね?」

西村「全然違いますよね」

田中「“世界一のマネキン”のほうが合う(笑)。モデルさんみたいなスタイルだもん」

大西「セクシーレディとか」

バブルなイメージも意外とハイヒールは履いていなかった

─キャッチフレーズにまつわる思い出は?

大西「私の場合は、そんなに使う場面もなかったから、特にないなあ」

西村「私も。でも美奈子さんのはすごくセンセーショナルだから何かあったのでは?」

アイドル時代の大西結花さん  写真/本人提供

田中“1億円の保険はどうしたらもらえるんですか”とか聞かれたりはしましたね

西村「月々いくら払ってるのかなって気になってた(笑)」

田中「保険料はすっごい聞かれた! 社長に聞いたら、スイスの保険会社で月32万~33万だって。“ものもらいで下りますか。下りなきゃ困ります~”って言ったら“下りないなあ”って(笑)」

西村「下りないんだ!」

田中「バブリーな時代だったよね。バブル後半だけど」

大西「きれいなおみ足にハイヒール、ワンレンボディコンで、バブルの象徴のようなイメージでした」

田中「でも私、あんまりハイヒール履いてないんだよ」

大西西村「ええっ!?」

田中ヒールを履くと歌えないからぺったんこの靴にしてくださいって。歌番組では絶対にヒールを履かなかった

─今、ご自身にキャッチフレーズをつけるとしたら?

役のイメージが強かった

西村「私は資格をいくつか持っているんですが、自分自身で全然役立てられていないんです。なので、もう“多芸は無芸”みたいな。芸能人なのに芸がなくてすみません!

アイドル時代の西村知美さん 写真/本人提供

田中「でも手話ができてすごい。合唱で前回もやったんですけど、今回も歌いながらみんなで手話をします」

大西「“指導・西村知美”です。無芸なんてことないですよ! 私は『スケバン刑事』で長女役だったので“結花姉って呼んでいい?”とか、由真が姉貴と呼ぶので“姉貴って呼んでいい?”って、よくファンの方から言われるんです。なので大場久美子さんの“1億人の妹”をもじって“1億人の姉”で(笑)。でも実は私、2人姉妹の次女で末っ子なんですけどね

田中「私はコメディエンヌになりたくて。樹木希林さんに憧れてたのね。だから“目指せ、晩年コメディエンヌ”で。ドラマ『もう誰も愛さない』で怖いイメージがついちゃったんだけど」

大西「役のイメージって、ついちゃうよね」

田中「その前年にコメディードラマをやったから、その路線でいけると思っていたら、翌年、全員が悪人のドラマで“その中のトップを走ってくれ”って言われて(笑)」

大西「あのころのドラマ、ドロドロが多かったよね」

田中そのあと石黒賢ちゃんと共演したとき、一切目を合わせてくれなかった、怖いと思われて(笑)。みんななかなか声をかけてくれなくて、寂しかったです。なので人生を逆転したい

大西「すごいわかる!」

田中「この中で私が一番お姉さんなので、もうやりたいことしかやりたくないですね。おっかない作品はもうやり尽くしました(笑)」

ネオ☆スターズで3人に会える!

フジテレビの『オールスター合唱バトル』がきっかけで生まれた合唱団。'80年代アイドルが中心となり、歌(エンタメ)と社会貢献の両輪で活動。6月8日(世界海洋デー)に大阪・関西万博、12月4日に東京・日航ホテル(台場)で公演。万博では『負けないで』『海の声』『イッツ・ア・スモールワールド』を歌唱予定。「事務所とか関係なく、自分たちがやりたくてやってます。楽しいですよ」(大西)、「完全にもう仲良しサークルです!(笑)」(田中)

取材・文/今井ひとみ