円安、物価高にも打つ手なし(?)の石破茂首相

 円安と物価高に加え、アメリカの「トランプ関税」措置を受け、与野党から国民の負担軽減策として、現金の給付や減税をめぐる論争が巻き起こっている。

「財源確保のために増税」ならマイナス

 実際にリーマン・ショック後の麻生政権時には、所得水準に関係なく1人当たり1万2000円(18歳以下、65歳以上は2万円)の定額給付金、コロナ禍の安倍政権時には全国民一律10万円の現金給付が行われた。今回、給付金が実現すれば、昨年の岸田政権時の所得税と住民税合わせて4万円の定額減税に続く政策となるが、7月に行われる参議院選挙前のバラマキでは、との批判も多い。

 一方、食料品を中心とした消費税減税を求める声が高まるなど議論がますます活発になりそうなこれらの政策、はたして国民にとって本当に効果はあるのだろうか? 株式会社マネネ代表で経済アナリストの森永康平さんに聞いた。

 まず「給付金」については、

「純粋にお金が配られるだけ、ということであれば国民にとってメリットがありますが、その財源確保のために増税をするなどの話になってくると、これは逆にマイナスですよね。また仮に一律10万円を給付したとしても、そのすべてが消費に回るわけではなく、おそらく貯蓄や投資にも回り、経済効果は総額から期待されるよりも低いのではと考えます。

 ですので、給付金より減税のほうが経済効果は高く、国民も納得しやすいのではと個人的には考えています」(森永さん、以下同)

「食料品のみ減税」では複雑化

 その場合、減税のやり方にもよるとのことだが、

「食料品のみ消費税減税などの案が報じられていますが、私はそれには反対です。減税をするのなら食料品などに限らず、一律に減税するのが望ましいと思います。

 例えば豚肉。食料品を税率5%にした場合、豚肉自体は5%ですが、豚を育てるのに必要な飼料などは食品ではないので消費税は10%のまま。そうなると仕入れ税額控除はどうなるのかという問題もありますし、日本国内で通常の消費税は10%、定期購読の新聞は軽減税率で8%、食品は5%と消費税の中にも複数の税率が出てきてしまい、インボイス制度にも関わってくることに。逆に一律の税率だと、今度はインボイス制度が不要という話にもなります」

海鮮丼の食べ方が汚いと指摘された石破茂首相(『TBSNEWSDIG』公式YouTubeチャンネルより)

 マイナポイントでの給付という案も浮上している。

「仮に減税が難しく、給付金ということであれば“現金給付”が妥当でしょう。過去に現金給付の実績があるので国民の口座情報はすでにありますし、マイナポイントを保有しない人には現金で給付する“ハイブリッド方式”を想定しているようですが、そうなると使用場所に制限のあるマイナポイントより、どこでも使える現金のほうが、価値が高くなりますよね。この政策の目的がマイナンバーカードの普及だとしたら、その観点からも逆効果だと考えます」

 給付金、減税などのほかに、何か効果的な対策はあるのだろうか。

「政府から出ている政策ですが、ガソリン補助金の延長措置や電気・ガス料金補助の再開などは、やらないよりはやったほうが良いと思います。

 ただ、補助金だと何にいくら使われているかなど、国民からしてみたら不透明に感じる部分もあり、事務手数料もかかる。やはり補助金よりも減税のほうが優先されるべきと思います

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