彼のきめこまやかな配慮や礼儀は、スターの中でもずば抜けています。来日して帰国すると、2日後には豪華な花が届く。それだけでなく、誕生日や新年のお祝いでも花を贈ってくれる。「トム・クルーズ」という名入りの熨斗(のし)がついたお歳暮が届いた日は驚きました。もちろん私だけじゃなく、それを多くの方々にも欠かさない気配りは素晴らしいのひと言です。
記者会見では私が座るイスを引いてくれるし、会場のホテル内を移動中、スタッフがエレベーターに乗り込むまでドアを開けて待っていてくれる。それも、全員が乗ったことを確認して最後に彼が乗るんだけど、私なんかそういうのに弱いから、もう感動(笑い)。
ハリウッドスターはみんな礼儀を心得ているけれど、そこまでやる人はいない。トムだけは別格なんですよね。出会ってから今に至るまで、彼はまったくと言っていいほど変わらない紳士。容姿だってほとんど変わらないんだから、素晴らしいわね。
今回の『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』では、またしても命がけのアクションを代役なしでやってのけますが、それが心底、本物だなと感じる出来事がありました。去年、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』の来日イベントのこと。
福岡・博多の駅ビル3階のバルコニーから地上の広場にいる7000人の群衆に手を振っていたときに、なんといきなりトムがバルコニーの手すりに飛び乗っちゃったんです! もう私は血の気が引いたわね。それなのに彼は平然と、頼りない金属パイプに乗ってファンサービス。ボディーガードもスタッフも真っ青、落ちたらどうしよう……と、ハラハラどころの騒ぎじゃないですよ。彼が下りてきたときに“どうしてそんな危険なことをするの!?”と注意してしまったら、トムはあっけらかんと“あそこに乗らなきゃ両脇にいるファンが見えないから。僕は大丈夫だと思ったから乗ったんだ”って。撮影だけでなく、ファンのためにも命を賭ける超人的なスターです。
『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』でも、同じようなエピソードがありました。私もドバイのブルジュ・ハリファへ行ったことがありますが、あのビルのてっぺんは細く鋭いアンテナ状。撮影が行われたホテルのフロアも十分高いのに、ましてや彼はその尖塔へ上ってサインをしてきたっていうんだから(笑い)。その写真を見せてくれたけど、なんという身体能力かしらね。そりゃあスタントマンなんて、必要ないわよねえ。
かつてのヒューマン作品での彼をまた見たい気持ちもあるけれど、今ではアクションスターとして唯一無二の存在になったトム。毎回、ファンが期待しているから、それに応えるのは大変でしょうね。また、彼も見る人に失望させちゃいけないと思うから、それ以上のことを考えてしまう。まったく、どこまでやるつもりなのかしら(笑い)。
《取材・文/生嶋マキ》