新卒で渡辺プロダクション(現・ワタナベエンターテインメント)に入社して以来、芸能界の裏方を渡り歩き、アグネス・チャンや杏里などの有名アーティストたちのマネージャーをつとめてきたベテランプロデューサー・森裕平。その先見の明により、Winkを発掘、育て、売り出したが、妻の死をきっかけに芸能界から引退した。多くのアーティストたちを世に送り出し、いわば芸能界を知り尽くす森が「売れるタレントの条件」、そして、いま彼が力を注いでいるアーティストについて語る。

−森さんがこれまで芸能界で見てきたなかで、売れるタレントの条件ってあるんですか?

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 大物アーティストたちと接してきたなかで痛感してきたことがあります。売れるアーティストの条件としてまず挙げられるのは、ルックスです。男女ともに肌が白いほうが好ましい。そして最も大事なのが“オーラ”です。抽象的な表現ですが、存在感が大きくないとダメだということですね。

 これまで多くのタレントさんを見てきましたが、人に紹介したときに「いい子だよね~」といった感想を言われたら、まず終わりですね。逆に、「あいつらどこから連れてきたの?」とか、あるいは「生意気だね~あの子、まだ若いのに」とでも言われようものなら、しめたものです。そしてそのためには、とにかく自己演出力が必要なんですよね。

 極端な話、ラーメンひとつ食べるにも、日ごろからどうやって自分を演出するかを考えていないとダメなんです。その一方で、「オレは普通と違うんだ」ということを自然に身につけているタレントさんも“オーラ”があるんじゃないかな。

−たとえば、いまを生きるタレントさんで “オーラ”を感じる人はいますか?

 そういう意味では、嵐は本当に偉大だと思います。大野くんの、口では具体的に説明できない魅力もそうですし、松潤なんかも演出力があると思いますしね。彼らはジャニーズ系とかアイドルとか、もはやそういう次元のグループじゃないですよね。こういう個性をそれぞれ持ち合わせた人たちがよく集まったものだと感心します。

 自己演出力に優れているアーティストとして、私の身近にいる方で真っ先に思い浮かぶのは、福山雅治さんですね。

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 才能はもちろんのこと、彼はとにかく人間性も素晴しいし、自らを俯瞰してディレクションできる力がある。自己演出力があるんです。たとえば、下ネタって一番難しいじゃないですか。女性が聞いていてうんざりするようなことを言ってしまったら失格なんですよ。だけど、福山さんは、下ネタでさえもプロモーションの一部としてうまく機能させている。それはおそらく公私関係なく常に自分自身を意識、俯瞰しながらプロデュースしているからこそ、なせることなんだと思います。

−リタイアしたはずの森さんですが、最近ではGANJINというユニットをマネジメントし始めたそうでうね。

 そうなんですよ。子どもが自立するころにはお金が尽きちゃってね(笑い)。私も年をとって疲れも出る年齢ですが、またコツコツやろうということで、いまは彼らのプロデュースに奔走しています。

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GANJINのメンバー、Vo. Ken、Vo. KEN5、Synth&Gt. Maro、Bass. Monmonの4人。最先端のEDM(エレクトロ・ダンス・ミュージック)を基盤とした洋楽テイスト溢れるサウンドを土台に、耳馴染みの良いキャッチーなメロディと、飾らずストレートかつ繊細な言葉で綴られた歌詞を乗せたエレクトロユニット。

 あいつらはルックス、オーラはもちろんのこと、人間性もいい。マネジメントをする上で大事なのは、人としてちゃんと付き合えるかということ。やはり人間ですから、信頼関係がなくては何事もはじまりません。

 ちょうど一昨年の7月にデビューしたユニットですが、付き合っていて私を奮い立たせてくれる相手であることだけは確信しています。いまも私がメンバー4人を乗せて全国各所を巡っている最中です。私を支えているのは、“なんとかして、こいつらに日の目を見せてやりたい”という気持ちだけです。