yasuda0130

 今やドラマに欠かせない存在となった安田顕。映画『俳優 亀岡拓次』では、全国ロードショーの映画としては初主演を飾った。

「はい、ありがとございます。(マネジャーに)“主演の話が来ているけど、どうします?”って聞かれて。その言葉を聞き終わる前に“やらせてください! お願いしますっ!”と。食いぎみに、条件反射で言っちゃいましたね(笑い)。なかなかないことですし、今後もあるかわかりませんから(笑い)」

 主演として演じたのは“脇役”。37歳独身の脇役ばかりの俳優で、泥棒、チンピラ、ホームレス……なんでもあり。仕事は途切れないものの、プライベートではひとり酒をあおるばかりの地味っぷり。

 そんな亀岡拓次ことカメタクがロケ先の居酒屋の女将に恋をした。さらに、世界的巨匠からオーディションの誘いまでも。カメタクの人生は一気に好転するのか!?

「主演にはプレッシャーもあると思うんですが、でも、僕は役柄として脇役。普段やっていることとさほど変わりませんので(笑い)、そういった部分ではすんなり入っていけました。主演の苦労? 現場はどこも苦労があるので、この作品に限ったことではないと思います。

 自分で言うのも恥ずかしいんですけど、完成作を見たとき、本当に面白かったんです。とても面白いものをみなさんに見ていただきたいという純粋な思いでいっぱいです」

「子どものときからプロレスが好きなんですけど…」

 『下町ロケット』で“佃品質”に情熱&誇りを抱く技術部長の好演は記憶に新しい。

 映画『龍三と七人の子分たち』ではドスのきいた新興ヤクザのボス、『みんな! エスパーだよ!』では、ちょいエロな超能力研究者、『問題のあるレストラン』では女装のゲイ……そのカメレオン俳優っぷりには、作品ごとに驚かされる。忙しくてたまらないのでは?

「恐縮です(笑い)。自分としては、特にペースが変わったわけではないんですが、そうやって注目していただけることがとてもありがたいです」

 休みの日は、カメタクのごとくお酒を飲んでは、ボーッとしていると笑う。俳優としては、何と言われることが一番うれしいかと尋ねると、こんな答えが。

「人に決めていただけるのが一番ですね。僕は、子どものときからプロレスが好きなんですけど、アントニオ猪木さんが“私を燃える闘魂と呼んでいただきたい”と言って、みなさんが呼ぶようになったわけじゃない。

 あの人の姿や姿勢を見て、ファンがいつしか“燃える闘魂”と呼んだのかなって思います。スタン・ハンセンが自分のことを“俺はブレーキの壊れたダンプカーだ”と言ったとは思えないですし(笑い)。早くみなさんに肩書をつけていただけるような人間になれたらいいなと思います」


<作品紹介>
映画『俳優 亀岡拓次』
亀岡拓次(安田顕)、37歳独身。職業は脇役、趣味はお酒。現場を渡り歩き、来た仕事は断らない。そんな“最強の脇役”の不器用で愛すべき恋と人生に笑って、ほっこり。奇想天外なエンターテイメント。テアトル新宿ほか全国ロードショー。

撮影/廣瀬靖士