最近、肌が衰えた気がする。疲れやすくなった。そんな変化を感じて、「年齢のせいかな?」と思うこと、ありますよね。
「老化するかしないか、不調に陥るか健康を保てるか、そのカギを握るのはホルモンです」
というのは、遺伝子やアンチエイジング医療の権威である医学博士の根来秀行先生。
ホルモンといわれて真っ先に思い浮かぶのが、美しさや女性らしい若さを保つのに欠かせない女性ホルモン。でも、ホルモンはこれ以外にもたくさんあります。
「例えば、新しい皮膚や骨をつくるために分泌する成長ホルモンや、血糖値をコントロールしてくれるインスリンなどなど、体内に分泌されているホルモンの数は100種類以上。それぞれが、私たちが意識しないところで、各器官を効率よく動かすために働いています。健康と若さを維持するには、こうしたホルモンがちゃんと分泌され、最大限に力を発揮できる状況を保つことが何より大切です」(根来先生、以下同)
そこで根来先生に、私たちが知っておくと役立つ主要なホルモンと、その働き、ホルモン力UPのヒントを教えていただきました。
「注意していただきたいのは、ホルモンが減ったら補えばいいのかというと、そう単純ではないということ。ここでは、わかりやすくひとつひとつのホルモンについて解説しますが、体内では複数のホルモンが連携し合ってバランスをとっています。そのため、あるホルモンだけを補充してしまうと、全体のバランスが崩れるおそれがあるのです」
まずは、そのホルモンの役割を知り、ホルモン力を低下させる原因を解消することが大事。さっそく、始めてみましょう!
■身体の修復を行う「成長ホルモン」
別名「ドクターホルモン」。成長ホルモンは全身の代謝を助け、内臓・機能の修復、回復を行ったり、皮膚や筋肉をつくったり、免疫力を強化したりします。年齢を重ねて感じる「疲れやすくなった」「なんとなく調子が悪い」という症状は、成長ホルモンの減少からくるものです。
↓↓↓ホルモン力UPのポイント↓↓↓
①適度な空腹感 ②適度なストレス ③適度な運動 が成長ホルモンを分泌させる3原則。間食は控え、お腹が鳴るまで食べない、趣味や仕事で目標をもち、熱中すること、運動習慣をもつことが効果的です。また、メラトニンと連携して働くので、メラトニンの分泌を促すことも忘れずに。
■眠りの質を高め、免疫力を上げる「メラトニン」
身体の再生工場「成長ホルモン」をサポートするのがメラトニン。メラトニンは睡眠中に分泌され、成長ホルモンの分泌を促進します。メラトニンには質のいい睡眠をもたらし、免疫力を強化する、活性酸素を除去する、コレステロール値を低下させるといった働きが。「睡眠不足が続いたら風邪をひいた」というときは、このメラトニンの分泌が減っている可能性が。
↓↓↓ホルモン力UPのポイント↓↓↓
メラトニンは光に敏感なホルモン。減らさないコツは、規則正しく太陽の光を浴びることです。朝、太陽の光を浴びると、体内時計がリセットされ、約15時間後にメラトニン分泌が始まります。できるだけ同じ時間に起床し、窓を開けて光を浴びることを習慣にして。
■美肌、骨代謝に関わる「エストロゲン」
「肌のハリがなくなってきた」など、加齢による変化の裏にあるのが、女性ホルモンのひとつ、エストロゲンの減少です。エストロゲンには、骨代謝を活発化して骨の老化を防いだり、動脈硬化を防いだりといった働きも。加齢による腰痛、ひざ痛にも、エストロゲンの減少が関わってきます。
↓↓↓ホルモン力UPのポイント↓↓↓
加齢によってエストロゲンは減ってきますが、閉経したあとでもエストロゲンは少量ながら産生されています。その源となるのが脂肪なので、質の高い脂肪を適度にとり、やせすぎに陥らないように注意してください。ストレスや睡眠不足など、エストロゲンが急激に減るような生活を避けるのも大事です。
■アンチエイジングの要!「DHEA」
DHEAは、エストロゲンと同じように性ホルモンのひとつ。そこから50種類ものホルモンがつくられる、いわば“ホルモンの親玉”で、身体の若返りを担っています。筋肉の維持、性ホルモンの安定供給、血管の維持・メンテナンス、運動機能の維持など、たくさんの役割を果たすホルモンです。
↓↓↓ホルモン力UPのポイント↓↓↓
DHEAを生み出すには、ある程度の運動が必要です。特に有効なのは、下半身を鍛える運動。全身の筋肉の約70%を占める下半身を動かす、ウオーキング、スクワットなどが効果的です。ただし、やりすぎるとストレスホルモンが出てDHEAを消費してしまうので、運動は、軽く息が切れる程度にして!
■食欲をコントロールする「レプチンとグレリン」
この2つは「食事系のホルモン」。レプチンは食欲を抑制するホルモン、グレリンは食欲増進のホルモンです。食欲が抑えられずについ食べすぎてしまう人は、レプチン分泌に問題がある可能性が。一方、食欲増進のグレリンには成長ホルモンを促す働きがあるので、グレリンを減らすのは危険で、お互いがバランスよく働くように保つことが肝心です。
↓↓↓ホルモン力UPのポイント↓↓↓
過食に走るとレプチンが増加し、空腹になるとグレリンが増加。この感覚を研ぎ澄ませるためには、できるだけひと口30回、よく噛んで食べ、満腹感をしっかり感じることが重要です。早食い、ドカ食いは厳禁。朝食を抜かず、3食を規則正しく食べましょう。
■ダイエットとストレスに関与「コルチゾール」
コルチゾールは「ストレスホルモン」のひとつ。それと同時に、睡眠から覚醒させる「覚醒ホルモン」や、脂肪の燃焼作用をもつ「ダイエットホルモン」といった顔ももつ多彩なホルモンです。寝不足が続くと体重が増えることがありますが、それはコルチゾールが円滑に働かないためです。
↓↓↓ホルモン力UPのポイント↓↓↓
コルチゾールは午前3時から明け方にかけての浅い睡眠時に分泌され、早朝にピークを迎えます。このリズムをできるだけ崩さないように、規則正しく寝て、朝起きたら活動的に過ごすことが大切。睡眠が足りないと、コルチゾールが出すぎてしまい、血糖値の上昇、免疫力の低下につながるので要注意です。
■コミュニケーションを円滑に「オキシトシン」
何事もネガティブに考えてしまうことってありますよね。そんな気持ちを上向きにしてくれるのが、「愛情ホルモン」「コミュニケーション・ホルモン」と呼ばれるオキシトシンです。オキシトシンが潤沢に出るような生活ができれば、ストレスによって生じるイライラも少なくなります。
↓↓↓ホルモン力UPのポイント↓↓↓
家族団らんの時間、仲間と楽しく過ごす時間を増やすことがいちばん。気のすすまない集まりやお誘いがあったら、優先順位を後回しにし、楽しい時間を過ごしてオキシトシンを分泌させてからにすると、ストレスを感じずにクリアできます。自分に負荷をかけすぎずに、上手に緩める習慣を身につけて!
■脳を活性化する「ドーパミン」
ドーパミン、アドレナリンは「快楽ホルモン」。楽しい体験、うれしい体験をしたとき、これらのホルモンが分泌されています。「いくつになっても、生き生きと楽しく毎日を過ごしたい」と願うならドーパミンを増やすことです。このホルモンは、うつ病やパーキンソン病と関係があることがわかっています。
↓↓↓ホルモン力UPのポイント↓↓↓
ドーパミンは行動を起こすモチベーション(動機)に関連して活動します。有効なのは“学習”です。学習する材料がないなら、「何かをやれば何かをもらえる」という自分へのご褒美を与え、生活にメリハリをつけるとよいでしょう。また、適度なウオーキングも、ドーパミン分泌を促します。
*イラスト/アライヨウコ