認知症の約半数を占めているアルツハイマー型を防げ!
2020年には325万人まで増加するといわれる認知症。アンチエイジングの権威として知られる、順天堂大学大学院の白澤卓二先生はこう話す。
「認知症はアルツハイマー型・脳血管性・レビー小体型の3タイプに分けられます。このうち約半数を占めているのがアルツハイマー型。つまり、これを制することができれば患者数は大幅に減っていくはずです」
アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞に『アミロイドβ』『タウタンパク』という異常なタンパク質がたまり、神経細胞に障害を起こすことで発症する。やがて脳が萎縮し、記憶障害などの認知機能や行動に異常が見られるようになり、精神症状も現れるという。
現在、認知症は一部を除いて"治らない病気"といわれている。脳腫瘍や、高齢者に多い正常圧水頭症などが原因の場合を除き、認知症を完治させる治療法はまだ見つかっていない。
そんな中、画期的な研究報告が昨年発表された。’02 年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏と国立長寿研究センターによる、血液検査でアルツハイマー型認知症がわかるというものだ。田中氏らは、血液中の血漿成分を特別な分析システムにかけ、アミロイドβがたまっている人とそうでない人では血液データに違いがあることを発見。
「アルツハイマー型認知症の早期発見につながるとして注目を集めています。ただ、実用化に至るまでには高いハードルがある。また仮に実用化できても、治療法が確立されていない現段階では、患者さんに負担をかけるだけです」
アルツハイマーに効く、最近話題の食品って!?
幸いなことに、最新研究によって、さまざまな効果がわかってきた。
「いま、いちばん進んでいる認知症の治療といえば食事療法。ある食品を食べると、薬よりも効果が現れたという報告があります」
その食品とは、いま話題のココナッツオイル。アメリカの医師が若年性アルツハイマー病の夫にココナッツオイルを食べさせたところ、劇的に症状が改善。これが世界じゅうに広まり、その効果が日本でも続々と報告されている。
「アルツハイマー型認知症にかかった脳は、グルコース(ブドウ糖)をエネルギーとして使うことができません。脳がガス欠状態なのです。そこで役立つのが、ココナッツオイル。これは体内でエネルギー物質であるケトン体に変わるため、ココナッツオイルを食べるとケトン体が脳のエネルギーとなり、認知症の症状が改善されるのです」
ココナッツオイルの有効成分である中鎖脂肪酸は現在、新薬として米国で開発中だ。しかし、白澤先生は治療法を解明するよりも予防こそが重要と強調。
「認知症のメカニズムについて30年近く研究を続けても、まだ治療法は解明されていません。しかし有効な予防法を行えば、患者数は確実に減少します」
ココナッツオイルは、アルツハイマー型認知症の予防にも高い効果をあげているという。加えて、もうひとつ有効な予防法が。
「アルツハイマー型認知症は第3の糖尿病といわれるくらい、インスリンと深い関係にあります。『久山町スタディ』という研究によると、2型糖尿病患者はそうでない人に比べ、認知症のリスクが2倍高くなることがわかっています。糖尿病の予防を徹底することで将来、認知症患者が半分に減らせるかもしれません」
実は、ここでも前述したケトン体がカギに。ケトン体はココナッツオイルの摂取だけでなく糖質制限をすることでも出現するからだ。
「ココナッツオイルに糖質制限を加えて認知症・糖尿病をともに予防することが、これからのスタンダードになっていくでしょう」